「べき思考」をやわらげるには?まじめでがんばり屋が生きやすくなるための考え方

価値観が多様化している現代社会では、まじめにがんばっているだけでは、認められないこともありますよね。いまの世の中、まじめでがんばり屋の人ほど、生きづらさを感じやすいものです。
不まじめな人やモラルのない人を見ては、「こうあるべき」と怒りを感じることも多いはず。あるいは、「こうあるべき」と決めつけては、自分の言動に縛られてしまうこともあるでしょう。
「こうあるべき」という考え方は、心理学では「べき思考」と言います。強すぎる「べき思考」は、ストレスの原因にも。毎日を生きやすくするためには、無意識におこなっている「べき思考」をやわらげられることが大切です。
ここでは「べき思考」になる原因を説明しながら、生きやすくなるための考え方について紹介します。
目次
「べき思考」になる原因
“考え方は、人それぞれ”と言うように、人によって、考え方にはクセがあります。
「べき思考」は、誰もが持っている考え方のクセのひとつであり、物事を自分の価値観におさめようとする時に見られやすい思考方法です。
例えば、待ち合わせの時間に友人が5分遅刻した場合、「時間は必ず守るべき」という価値観を持っている人は、遅刻した友人にイライラします。しかし、「待ち合わせに遅刻することもある」という価値観を持った人では、5分程度の遅刻が気にならない場合もあるのです。
このように、物事を自分の価値観におさめようとする時には、「べき思考」が見られます。
「べき思考」の2つのデメリット
「こうあるべき」と、誰でも自分の価値観に物事をおさめようとする時がありますが、「べき思考」には次のような2つのデメリットがあります。
自分に向かうと自己嫌悪する
「べき思考」が自分に向けうと、自分で自分を責めたくなります。例えば、次のようなできごとが起きた時には、「べき思考」によって、自己嫌悪に陥りやすいです。
できごと | べき思考 | 自己嫌悪 |
仕事の報告を上司にし忘れた | 社会人なんだから、報連相はできるべきだ | 報連相ができない自分は、社会人失格だ |
提出した書類に間違いがあって、訂正を求められた | しっかりものの自分は、何でも間違わずにおこなえるべきだ | 間違いをおかすなんて、自分はできの悪いやつだ |
友達の相談を聞くことができなかった | 友達の話は、聞いてあげるべきだ | 相談を聞かなかったから、友達に嫌われてしまったかも |
このように何かミスがあったり、できなかったことがあったりした時に、「べき思考」で物事を見ると、自分を責める考えが浮かんできて、自己嫌悪に陥ります。
他人に向けると怒りが湧いてくる
一方で、「べき思考」を他人の行動に向けている時には、怒りが湧いてきます。
できごと | べき思考 | 怒り |
業務時間中に、同僚が私語をしていた | 業務中は、黙って自分の仕事をするべきだ | 仕事中に、私語をする同僚が許せない |
待ち合わせの時間に、友達が遅刻した | 約束の時間は守るべきだ | 待ち合わせの時間に遅刻するなんて、いいかげんな人だ |
知らない人が、並んでいる列に割り込んできた | 順番は守るべきだ | 順番を守らないなんて、日本人として終わっている |
自分の価値観と他人の行動が合わない時には、誰でも「こうあるべき」と考えがちです。でも、実際には、自分と同じ価値観の他人はめったにいないので、「べき思考」が習慣になっている人は、怒ったり、イライラしたりしやすいでしょう。
「べき思考」は、やわらげることが大切
「べき思考」のデメリットを知ると、「べき思考」が悪いもののように思えたかもしれません。
しかしながら、「べき思考」は単なる人の考え方のクセであって、実は「こうあるべき」と考えること自体に良いも悪いもありません。
臨床心理士として、カウンセリングや執筆活動などもしている玉井 仁さんも、著書「マンガでやさしくわかる認知行動療法」のなかで、考え方のクセを調節する必要性について述べています。
クセは単なるクセであり、問題と捉える必要はありません。ただ、そのクセを明らかにすることによって、そのクセの強さを適度に緩められるようになるのです。
つまり、「べき思考」をしているからといって、それ自体は問題ではないのです。本当の問題は、ストレスや生きづらさにつながらないように、「べき思考」を自分でやわらげられるようになることです。
「べき思考」をやわらげるには?
では、「べき思考」をやわらげるには、どうすれば良いのでしょうか?ここからは、ストレスや生きづらさを減らすための具体的な考え方を見ていきましょう。
「こうあるべき」を疑ってみる
「べき思考」をやわらげるには、物事を自分の価値観におさめようとしていることに気づく必要があります。そのためには、自分の考えを疑ってみることも大切です
自分の常識が、他人にとっての非常識であるということはよくあります。
・家族であれば、隠しごとをしないべき
・恋人なら、いつでも一緒にいるべき
・仲良く何でも話し合えるのが、親友であるべき
・職場で一緒に働く同僚なら、協力しあうべき
このような価値観は、育ってきた環境や人生経験などによって異なります。
誰もが自分と同じような価値観を持つと考えていると、違った価値観の人を見た時に、イライラしたり、怒りが湧いてきたりするものです。言い換えると、違った価値観の人の行動を受け入れるには、自分の考え方がひとつの価値観でしかないことに気づくことが大切です。
客観的に自分の考えを見てみる
「こうあるべき」という考えに気づけた後には、客観的に自分の考えを見てみると、物事を違った視点から見ることができます。新たな自分の価値観、知らなかった相手の価値観を発見できると、物事をやわらかく考えることができるでしょう。
客観的に自分の考えを見てみるもっとも良い方法は、「○○であるべき」を「私は○○と考えている」に言い換えることです。このように表現を言い替えることで、自分の考えを「絶対的な正しい答え」から「ひとつの価値観」に切り替えることができるのです。
例えば、次のように、表現を言い換えてみましょう。
「ラインに既読がついたのだから、あの子は、すぐに返信をするべきだ」
▸私は、ラインに既読をつけたら、すぐに返信したいと考えている
「SNSに写真が投稿されていたから、友達として“いいね”を押すべきだ」
▸私は、友達だからといって、必ずしも“いいね”を押さなくてもいいと考えている
以上のように、表現を言い換えるだけでも物事を違った視点で見ることができ、嫌な気持ちにもなりづらいです。
どんな物事にも応用しやすい方法なので、「こうあるべき」と考えが浮かんだ時には、試しにやってみてはいかがでしょうか?
人や物事から距離をとってみる
そうは言っても、「べき思考」をやわらげにくい時も多いものです。「こうあるべき」という考えのもとが近くにあると、その刺激が、さらに「べき思考」を増幅させていきます。
そこで、「べき思考」をやわらげるには、刺激になっている人や物事から距離をとってみることもおすすめです。時間的・物理的に距離をとると、冷静に物事を考えやすくなるので、違った見方ができることもよくあります。
特に、感情が高ぶって落ち込んだり、怒ったりしやすくなる人は、早合点して、思いもよらない結論をだしがちです。
感情の高ぶりがおさまるまで、いったん人や物事から距離を置いてみると、自己嫌悪に陥ったり、怒ったりせずに冷静な考え方ができるでしょう。
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