うつ病人の生き方・働き方改革

手のアーチ?物の把持と操作を上達させるROM訓練の方法とは?

2019/02/06
 
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たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
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自分の手を見てみると、独特の丸みがありますよね。手には、4つのアーチがあります。

 

 

 

人間の手には、アーチがあり、丸みをあることで、指先で物をつまみやすくなったり、細かい物の操作が行いやすくなるのです。

 

 

 

実習生の頃、目の前にいる先輩の見よう見まねをして、ROM訓練を上達したいと思った時。手や手指に関しては、手のアーチを意識して、アーチを作っていくように訓練することが重要です。

 

 

 

手のアーチができると、手で物を掴んだり、指でつまんだりしやすくなる。患者さんは、日常生活でも、手を機能的に使えるようになる。つまり、手のアーチができると、リハビリ室で行っている訓練が、単なるROM訓練ではなく、患者さんが手を使うたびに、手が使いやすくなる「生活リハビリ」に変わっていくのです。

 

 

 

とは言っても、手のアーチ?って簡単に言われても、最初から、上手くアーチの特性を捉えながら、ROM訓練することは、難しいですよね?

 

 

 

そこで、この記事では、手のアーチを意識したROM訓練の方法を紹介します。


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手のアーチとアーチがある意味

人間の手には、4つのアーチがあり、それぞれのアーチが手の丸みを作っています。下の写真は、手のアーチをそれぞれ、黄色で示しました。ちなみに、僕の左手です。

 

 

 

麻痺や筋力低下がない健常な手の場合、手のアーチがあることで、示指から小指が、拇指のつけ根(正確には、舟状骨(しゅうじょうこつ)という骨の方向)を向いています

 

手のアーチ.jpg

 

 

手のアーチ
① 縦方向のアーチ :写真の青い線
② 横方向のアーチ1  :写真の赤い線
③ 横方向のアーチ2  :写真の黄色い線
④ 斜め方向のアーチ:写真には載ってません。

 

① 縦方向のアーチ

縦方向のアーチは、手根骨と各指の中手骨、指骨で形成されています。機能的には、示指(第2指)と中指(第3指)の縦アーチが重要です。

 

② 横方向のアーチ1

横方向の一つ目のアーチは、第1~5の中手骨と大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨で形成され、横手根アーチとも呼ばれます。固定性があり、可動性に乏しいのが特徴です。

 

③ 横方向のアーチ2

横方向の二つ目のアーチは、第2~5中手骨頭で形成され、横中手アーチとも呼ばれます。横方向のアーチ1(横手根アーチ)よりも可動性があるのが特徴です。

 

④ 斜め方向のアーチ

斜め方向のアーチは、拇指と他の4指で形成され、把握動作で最も重要なアーチになります。

 

 

手を使った把持やつまみ動作の訓練、アクティビティをする時などにも、これら4つの手のアーチがなくて、物を掴み損なって課題を失敗する患者さんが多いです。

 

“人間の手は、5本の指がつまみ動作を行った場合、それぞれの先端が適度なリラックスのもとに触り合えることに驚かされる。それは、どのような活動時でも保障されているという事である。肩や肘がどのような格好をしていても崩れる事はない。前腕が回内しようと、回外しようとも指先の腹部は触れあう事ができる。縦・横・斜めのアーチがあるからこそ、可能なのである。”

引用:中枢神経系疾患に対する作業療法

 

まとめると、人間の手は、手のアーチがあるからこそ、物に合わせて手の形を変えることができ、持ったり、つまんだり、操作することができるということです。

 

手のアーチがないと、どのような状態になるか?

物を掴んだり、つまんだりする時に、手のアーチの存在が重要だと理解できてきたところで、手のアーチがないと、どのような手の作りになるのかを下の写真で再現してみました。

 

 

 

というのも、中枢神経疾患(脳や脊髄の損傷)でも、末梢神経疾患(脊髄から先の神経の損傷)でも、同じような形で、手のアーチがなくなっている患者さんを担当することが多いです。アーチのない手をイメージできた方が、健常な手との違いが理解しやすく、訓練の時に、患者さんの手の異常に気づきやすく、患者さんの手に触りやすいです。

 

 

 

下の写真は、向かって左側が「猿手(さるて)」、右側が「鷲手(わして)」のイメージです。(ちなみに、僕の左手です)

 

手のアーチがない.jpg

 

猿手

正中神経の麻痺で、円回内筋以下が麻痺した時に起こり、母指球の萎縮が著しく見られます

鷲手

尺骨神経の麻痺で起こります。手の内在筋(骨間筋や虫様筋)が働いていない状態です。

 

 

僕は、片麻痺の患者さんの作業療法を中心に行ってきましたが、片麻痺の患者さんでも、猿手や鷲手に似たような手の形をした患者さんの訓練を行うことは多いです。猿手や鷲手は、末梢神経疾患で起こることですが、片麻痺の患者さんや高齢者では、筋力低下を起こせば、アーチが崩れて、同じような手の形になります。

 

 

 

つまり、手で物を掴んだり、指で物をつまみにくくなるんです。

 

手のアーチと舟状骨(しゅうじょうこつ)の位置

患者さんの手を見る時は、最初に、手指がどの方向を向いているかを確認してみてください。下の写真は、先ほど見た健常な手の形と指との位置関係を示した写真です。もう一度見てください。

 

手のアーチ.jpg

 

この写真(健常な手)を見ると、第2~5指(示指~小指)の先端が、全て拇指のつけ根(舟状骨)の方向を向いているのがわかりますか?黒い実線は、それぞれの指の先端が、舟状骨に向いていることを表しています。

 

 

 

通常、手を握ると、それぞれの指は、手のひらと接触するように、舟状骨の方向へ屈曲してます。中指は屈曲、他の指は屈曲し、回旋しながら舟状骨に、指の先端が近づいてきます。

 

 

 

この手を握る時の指の動きは、手のアーチがなくなると、それぞれの指の先端が、舟状骨以外の方向を向いてしまいます。そうすると、物を掴んだり、つまもうとする時に、その動作が困難になったり、無駄な力が入ってしまい、上手く掴む・つまむ動きができなくなるのです。

 

 

 

手の握り始めに、指がどの方向を向いているか、そして、指がどの方向に向かって動いているかにも注目してみてください。

 

手のアーチを活かしたROM訓練では、まず骨の位置を確認する

手のROM訓練では、筋肉よりも先に、骨の位置を確認してください。手には、筋肉がたくさんありますし、ROM訓練をしようとして、筋肉から動かそうとしても、骨の位置が確認できないと、硬くなったり、動きが悪い筋肉を動かすことはできません。

 

 

 

だから、最初は大雑把にでいいので、骨の位置を確認してみましょう!自分の手を見て、手の中にある手根骨(しゅこんこつ)という8つの骨と中手骨(ちゅうしゅこつ)と呼ばれる5つの骨を触ってみてください。

 

 

 

骨の位置のイメージは以下の写真のようです。写真を見ながら、自分の右手で左手を触ってみるとわかりやすいですよ。

 

手根骨と中手骨.jpg

 

手の骨の位置がなんとなくイメージできましたか?そして、手には、アーチがついていることに気づけましたか?手の骨とアーチのイメージがついたら、患者さんの手のROM訓練時に、できるだけ手のアーチを形作るイメージで、患者さんの手を動かしてみてください。

 

 

 

下の写真には、手のROM訓練をする時に、作業療法士が触るべき推奨ポイントを示しました。白い部分(両端)と黒い部分(中央)に、注目してください。

 

手のROM.jpg

 

手のアーチを作りながらROM訓練する時は、患者さんの手を作業療法士の両手で手背から包むように触っていきます。作業療法士の手で、白い部分(拇指と小指の中手骨)に丸みをつけるように曲げたり、黒い部分(2~4指の中手骨)に作業療法士の指先をあてがって、手のアーチを強調するようにして、動かしていくと、上手く手のアーチが作りやすいです。

 

 

 

手のアーチが部分的にでも作れてくると、患者さんの手指の動きが出やすくなったり、患者さんの手に柔らかみがでたような感じが触ってわかります。手のアーチが作れて、手指の動きが出せた後は、リハビリ室でのROM訓練で終わらずに、掴む・つまむなど、日常生活でも患者さん自身で手の動きが出しやすくなり、手の形も動きも、長続きしやすくなりますよ。

 

まとめ

手のアーチや構造を簡単に復習しながら、手のROM訓練について書きました。

 

 

 

手のアーチがあると、物を掴んだり、つまみやすくなります。また、無駄に力が入りにくくなるので、筋肉が余計にこわばりにくくなり、拘縮や張りを予防しやすくなります。まずは自分の手で、丸みを確認することと、骨の配置を大雑把に把握してみてください。

 

 

 

手のROM訓練に使える骨や筋肉の働きについて、知識と実践的な技術力を深めたいなら、以下の書籍がおすすめです。手のアーチについて解説はされていませんが、この記事で紹介したような人間の体の動きについて、理解を深めることができます。

 

運動療法のための機能解剖学的触診技術 上肢 改訂第2版/メジカルビュ-社/林典雄
by カエレバ

アクティビティを行うにしても、ADLで手を使うにしても、手の構造や動きの理解は重要です。手の構造や動きが理解できないと、患者さんが行いにくくなっている作業に、使いやすい手を作りあげることができないからです。学生時代の解剖学と運動学の本しか参考にするものがないとしたら、1冊持っておくと、手や上肢の臨床に役立ちますよ。

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