うつ病をきっかけに新たな生き方を模索する人のためのブログ

片麻痺のトイレ動作│作業療法士がズボンの上げ下げ訓練を紹介

2020/01/16
 
この記事を書いている人 - WRITER -
たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
詳しいプロフィールはこちら

片麻痺の患者さんを担当すると、トイレ動作の獲得が必要になります。しかし、トイレ動作の支援に慣れていないと、訓練方法について悩むことも多いはず。

 

もちろん、「片麻痺のトイレ動作」と一口に言っても、人によっておこないやすい方法は変わってきますが、ある程度決まった形があります。特に、中等度~重度の片麻痺患者さんでは、多くの作業療法士は、手すりを使ったトイレ動作の獲得を目指していくでしょう。

 

そこで、片麻痺の患者さんが、手すりを使ってトイレ動作を獲得していく方法について紹介します。

トイレ動作を獲得するために必要な行程

片麻痺の患者さんがトイレ動作を獲得するには、どのような行程が必要になるのでしょうか?まずは、トイレ動作を獲得するために必要となる9つの行程を見ていきましょう。

 

車いすで、トイレの出入りをする

トイレ動作というと、スボンの上げ下げや後始末をイメージしますが、「トイレ動作の自立」を考えた時には、患者さんはトイレの出入りを自分の力でおこなえなければなりません

 

車いすを利用している患者さんの場合には、次の4つのポイントが、トイレの出入りをできるために必要です。

 

・トイレのドアを開閉できる

・トイレのなかで、車いすを回転できる

・立ち上がりやすい位置で、車いすを止めることができる

・車いすのブレーキを操作できる

・車いすのフットサポート(足台)をあげることができる

※ワンポイント

フットサポートをあげ忘れる患者さんでは、車いすが足こぎができるかどうかを確認します。足こきができるようであれば、フットサポートは外してしまいしょう。 

 

車いすから立ち上がる

トイレのなかに入った後は、車いすから立ち上がります。患者さんは、立ち上がる動作をする時に次の動きをする必要があります。

 

・車いすのバックサポート(背もたれ)から、体幹を前傾できる

・健手で手すりをつかむことができる

・下肢に体重を乗せながら、お尻を浮かすことができる

※ワンポイント

患立ち上がりやすい環境にするためにも、車いすを便座に近づけすぎないように注意しましょう。前方の壁や手すりが体幹の前傾をさまたげると、下肢に体重を乗せられなくなるので、立ち上がりづらくなります。

 

立位を保持する

どのような形であっても、トイレ動作の自立には立位を保持できなければなりません。もし立位保持をすることができなければ、手すりから手を離してズボンの上げ下げをおこなうことはできないでしょう。

 

片麻痺の患者さんでは、立位保持をした時に、どのくらい麻痺側の下肢に体重をかけられるか知っておく必要があります。麻痺の回復や動作をおこないやすくするためには、麻痺側の下肢に体重を乗せたほうが良いですが、体重を乗せた時に姿勢が崩れる場合には、転倒してしまいます。

 

ですから、トイレで立位保持をする前には、できるだけ麻痺側の下肢にどのくらい体重を乗せることができるのか、事前に評価をしておきましょう

 

おすすめの方法は、① リハビリ室の平行棒や縦手すりを使って立位保持をおこなう ② 理学療法士から情報収集する方法です。どちらの評価もおこなっておけると、より安全にトイレで立位保持の評価がおこなえます。

※ワンポイント

トイレ動作の訓練をおこなった経験が少ない患者さんでは、動作をおこなう恐怖心から、健側の下肢を突っ張って麻痺側方向に姿勢が崩れる方も多いので、麻痺側に転倒しないよう常に注意しておきましょう。

 

からだの向きを変える

トイレで排泄をするには、便座の方向へお尻が向くように、からだの向きを変える必要があります。片麻痺の患者さんがからだの向きを変えるには、次の3つの方法があります。

 

・片側の下肢を前に出して、足を交互に出して回転する

・健側の下肢を「ケンケン」するように使い、跳ねながら回転する

・健側の下肢を軸にして回転する

 

人によって、どの方法がおこないやすいかは変わってきますが、中等度~重度麻痺の患者さんでは、「健側の下肢を軸にして回転する」方法がもっともおこないやすいです。

※ワンポイント

立位保持、からだの向きを変える方法は、理学療法士や看護師・介護士と良く話し合いましょう。立位での下肢の使い方は、動作の自立とともに、麻痺の回復に関わってきます。それぞれの職種が、共通した方法でトイレ動作を支援するほど、動作の自立や麻痺の回復を促していきやすいです。
 

 

ズボンを下げる

便座の方向にお尻を向けた後には、ズボンを下げます。ズボンを下げる時には、患者さんは中腰の姿勢を維持しながら、下衣を膝部分までおろす必要があります。

※ワンポイント

ズボンを下げている時に、立位が不安定になり姿勢を崩しそうな場合には、一度便座に座って仕切り直してみたほうが動作が安定し、安全です。

 

便座にすわる

片麻痺の患者さんでは、便座にすわる時には、麻痺側の下肢に体重をかけすぎないよう注意が必要です。立位保持ができる患者さんでも、便座に座ろうとしながら麻痺側に転倒してしまうこともあるので、麻痺側への体重のかけ方には注意しましょう。

 

また、病院の便座は、背の高い男性にとっては低くく座りづらいです。身長が170cmくらいある患者さんでは、ドスンと座って、足腰を痛めないようにしたいです。

 

尿意や便意をコントロールして、排泄する

片麻痺の患者さんでは、尿意を感じても我慢できずに失禁することも多いです。いわゆる、「トイレに間に合わない」状態は、トイレ動作の自立を目指す上では問題です。

 

どうして尿失禁しやすくなるかというと、脳卒中では、「神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)」という排尿障害が起こりやすくなるからです。そのため、尿意を我慢しながら、トイレまで行くことができるかも評価が必要になります。

 

陰部やお尻を拭く

トイレで排泄することができた後は、後始末として、陰部やお尻を拭く作業をおこないます。後始末のポイントは、便座の上で座位のバランスをとりながら、陰部やお尻に上肢をリーチできることです。

 

できれば、トイレで排泄をする前に、プラットフォームやベッドなどの上に座った状態で、陰部やお尻に上肢をリーチしながら座位を保てるか、評価しておくと良いでしょう。

 

押しボタンまたはレバーを操作する

最後は、水を流すために、押しボタン式のスイッチやレバーを操作することです。これは、他の項目に比べて認知能力が必要になります。というのも最近の病院には、トイレのなかに色々なスイッチや用具、貼り紙などがあるからです。

 

よくありがちなのは、水を流すボタンとウォシュレット、ナースコールを押し間違えることです。正しい物の操作ができるかどうか、認知能力を含めて評価しましょう。

 

以上がトイレ動作を獲得するために必要な行程です。このうち、作業療法の訓練の対象となりやすいのは、「立位保持しながら、ズボンの上げ下げをする動作」です。

 

ここからは、ズボンの上げ下げ動作について、段階づけや訓練方法について紹介していきましょう。

 

訓練の段階づけ

片麻痺の患者さんが、「手すりを使ってズボンの上げ下げを獲得」するには、次のような段階づけができます。

 

健手で手すりにつかまり、健側の肩で手すりに寄りかかる

はじめに、健側の手で手すりをつかみながら、健側の肩で手すりに寄りかかって立位保持をします。

 

「健側に寄りかかるだけ」と聞けば簡単に思えるかもしれませんが、実は片麻痺の患者さんにとって健側に寄りかかる動作は、想像以上に難しいです。なぜなら、患者さんは、片側半身の運動機能や感覚が鈍くなっているので、はじめのうちはどのようにバランスをとりながら立位保持をすれば良いかわからないからです。

 

患者さんによっては、全身に力が入ってしまい、健側の下肢に体重を乗せられない方もいるかもしれません。

 

そこで、まずは、トイレや縦手すりがある環境を使い、患者さんが健側の下肢に体重をかける感覚がわかるように訓練が必要です。

 

健側の肩で手すりの寄りかかりながら、手すりの下方をつかむ

手すりをつかみながら健側下肢に体重をかけることができるようになったら、次は、健手を手すりの下のほうにつかみなおすことを目指します。

 

ズボンを下げるには、手すりから健手を離す必要がありますが、そのためにも、前段階として手すりの下のほうへ健手を移動させられなければなりません

 

この段階では、引き続き、健側の下肢に体重をのせるように練習しながら、つかんでいる健手を徐々に下げていくように訓練できると良いでしょう。

 

健手を手すりから離し、健側の肩だけで手すりに寄りかかる

健手で手すりの下の方をつかめるようになったら、次は健手を手すりから離して、健側の下肢と肩だけで立位保持ができるように訓練します。

 

手すりを離した瞬間は、膝から崩れ落ちるように転倒する患者さんもいるので、作業療法士は、いつでも隣で姿勢を支えるように介助位置に注意が必要です。

 

健側の肩で手すりに寄りかかりながら、健側の膝を曲げる

ズボンを上げ下げする動作に移る前には、健側の膝を曲げる訓練をしておきましょう。というのも、膝を曲げることができないと健手がズボンに届きませんし、健側の下肢で力一杯に立位保持している患者さんでは、膝を曲げることができないからです。

 

そこで、転倒しない程度の力加減で膝まわりの力が抜けるように、膝を屈曲させたり、伸展させたりする動きになれていきましょう

 

健側の膝を曲げたまま、健手でズボンを下げる

「健手を手すりから離せる」「健側の肩で寄りかかりながら立位保持ができる」「健側の膝を曲げ伸ばしできる」ようになったら、ズボンの上げ下げ訓練にうつります。

 

ズボンを上げ下げする順番は、① 健側⇒② からだの中央⇒③ 麻痺側がおこないやすいです。

 

この段階までできるようになった患者さんは、麻痺側の下肢にも、少しだけ体重を乗せられるようになっている方も多いです。ズボンの上げ下げをする訓練をしながら、どのくらいまで麻痺側に体重をかけても転倒しないか確認し、できるだけ麻痺側の下肢も使うようにしていきましょう。

 

手すりに寄りかかってトイレ動作を獲得しても良いのか?

ここまで、片麻痺の患者さんの手すりを使ったトイレ動作の訓練について紹介しましたが、手すりに寄りかかって訓練するかどうかは、慎重な判断が必要です。

 

片麻痺の患者さんと一口に言っても、まだまだ麻痺の回復が著しく見られるようなら、手すりを使った代償的な動作よりも、両下肢でしっかり立位保持ができるうような訓練が積極的に必要かもしれません。

 

どのような方法でトイレ動作を獲得していくか?これは作業療法士だけで判断できることではないので、患者さん、ご家族、理学療法士、看護師、介護士などと話し合いながら、方法を検討していきたいものです。

この記事を書いている人 - WRITER -
たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
詳しいプロフィールはこちら

Copyright© 僕の人生にうつがきた , 2018 All Rights Reserved.