うつ病人の生き方・働き方改革

片麻痺のトイレ動作訓練 手すりを使ったズボンの上げ下げの訓練について解説

2019/02/22
 
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たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
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片麻痺の患者さんを担当した時には、トイレ動作訓練が必要になります。でも、トイレ動作訓練をはじめるにも、どのように訓練をしていけばいいか悩みますよね。

 

 

 

最終的なトイレ動作の形は、患者さんが行いやすい方法で獲得していくのが良いのですが、トイレ動作の方法には、ある程度決まっている基本の形があります。中等度から重度の片麻痺患者さんでは、下肢の力だけで立位を保つことが難しいです。そのため、特に患者さんが自分でズボンの上げ下げをする時には、手すりを上手く使ったトイレ動作の獲得が必要になるでしょう。

 

 

 

そこで、片麻痺の患者さんとトイレ動作訓練をする時に、手すりを使ったズボンの上げ下げの訓練方法について説明します。担当する患者さんのトイレ動作を考えていく時の参考にしてみてください。


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片麻痺患者さんのトイレ動作獲得に必要な9つの行程

片麻痺患者さんのトイレ動作獲得を考えるには、少なくとも9つの行程の評価・訓練が必要です。まずは、トイレ動作獲得に必要な行程を見ていきましょう。

 

 

トイレ動作を自立するための9つの行程
① 車いすをこぎ、トイレに出入りする
② 車いすから立ち上がる
③ 立位を保つ
④ 体(臀部:お尻)の向きを変える
⑤ ズボンを下げる
⑥ 便座に座る
⑦ 尿意や便意をコントロールして、排泄する
⑧ 後始末:陰部・臀部を拭く
⑨ 排泄物を流す為のボタン操作する

 

 

① 車いすをこぎ、トイレに出入りする

入院している患者さんがトイレ動作を獲得するには、自分で車いすをこいでドアの開け閉めをしたり、便座に近づいたりできなければなりません。車いすをこぎ、トイレの出入りができるか確認するには、次の4つのポイントを評価してみてください。

 

● トイレの中で車いすを回転できる

● 立ち上がりやすい位置で、車いすを止める

● 車いすのブレーキを止める

● 車いすのフットサポート(足台)をあげる

たぐ
患者さんがフットサポートを忘れやすい時は、フットサポートを外してしまいましょう。注意を向ける対象が少ない方が、トイレ動作の獲得につながります。

 

 

 

また車いすをこぎ方は、上肢でも下肢でもこぎやすい方を使うと良いです。上肢や下肢が麻痺していても動かせるのであれば、麻痺側は積極的に使った方が訓練になります

たぐ
ただし、麻痺側の感覚が鈍くなっていたり、危険に気づかなかったりする時には、手指や足をケガする可能性が高いので、何回か車いすの使い方の確認が必要です。

 

 

 

② 車いすから立ち上がる

車いすから立ち上がる時には、患者さんがどのように車いすのバックサポート(背もたれ)から体幹を起こすか評価をしましょう。理想は、患者さんが上肢や下肢の力を使わずに、体幹の力だけで立ち上がれることです。上肢や下肢を使ってはいけないわけではありませんが、体幹の力だけで上体を起こせる患者さんの方が、立った時のバランスをとりやすくなりますよ

 

たぐ
僕の場合は高齢の患者さん、脳卒中を発症して3ヶ月が経った患者さん、重度の片麻痺患者さん以外は、できるだけ体幹で上体を起こすよう訓練しています。車いすからどのように上体を起こすかは、理学療法士・作業療法士・看護師・介護士など、トイレ動作訓練に関わる人でやり方を統一するようにしましょう。

 

 

 

それと、車いすから立ち上がる時には、車いすを止める位置が重要です。車いすを止める位置によっては、立ち上がり動作が行いにくくなってしまいますので、下の図のような位置に車いすを止めてみることをおすすめします。

 

 

 

 

③ 立位を保つ

立位を保つ時には、患者さんは麻痺側に傾きすぎずに、健側の上肢や下肢でバランスをとる必要があります。とりあえず健側で立つことができないと、ズボンや下着の上げ下げが難しいです。

 

 

 

片麻痺患者さんが、どのくらいの位置まで麻痺側に傾いても転倒せずに立位を保てるか、確認するようにしましょう。可能であれば、トイレで立つ動作を行う前に、リハビリ室の平行棒や持ちやすい縦手すりなどがある環境で、健側や麻痺側にどのくらい姿勢を傾けることができるか、確認しておけると良いですね。

たぐ
片麻痺患者さんにとって、立つことは恐怖に思えるようです。トイレ動作訓練をはじめたばかりの患者さんは、健側の下肢を突っ張るなどして、麻痺側の方向に転倒しやすいので注意しましょう。

 

 

④ 体(臀部:お尻の向きを変える)

片麻痺患者さんが、トイレでからだの向きを変える方法は色々あります。理想的な方法だけで考えた場合は、次のようなランキングになりました。

 

【1】 片側の下肢を前に出して、足を交互に踏みかえて回転する

【2】 健側の下肢を軸にして回転する

【3】 健側の下肢で「ケンケン」するように、跳ねながら回転する

 

からだの向きを変えることだけ考えれば、方法なんて何でも良いんです。ただし、脳卒中を発症して3ヶ月くらいまでの患者さんは、麻痺の回復を考えて、少しでも麻痺側の下肢で体重を支えられるのであれば、【1】の方法で訓練を繰り返して、麻痺の回復を促しながらトイレ動作訓練をしていきたいです。

たぐ
【2】や【3】は、【1】ができる可能性が低い時に、選択していくようにしましょう。

 

 

⑤ ズボンを下げる

ズボンの上げ下げは、下の方で細かく説明しているので、ここでは省きます。

 

 

⑥ 便座に座る

片麻痺患者さんの場合、便座に座ろうとする時には、麻痺側に姿勢が傾きすぎないよう注意が必要です。健側の上肢や下肢の使い方に慣れていない患者さんでは、麻痺側の下肢に体重を乗せすぎてしまう場合があります麻痺側で支えられないくらい体重を乗せると簡単に転倒してしまうので動作の評価が必要です

 

 

 

また、背の高い患者さんは、座る時に膝を曲げる角度が大きくなるので、やはり便座に座り損ねないよう注意が必要です。僕の経験上では、170㎝位の身長がある患者さんにとっては、病院の便座は低いです。

 

 

⑦ 尿意や便意をコントロールして、排泄する

片麻痺患者さんでは、尿意を感じもトイレに「間に合わない」という問題がよく起こります。「神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)」といって、脳卒中の症状による排尿障害が起こりやすいからです。

 

 

 

また、トイレ動作訓練と違って、実際に尿意や便意を感じた時というのは、誰でも心理的に焦っています。トイレ動作の獲得を考える時には、尿意を感じている中でトイレ動作を行えるかを評価することもポイントです。

 

 

⑧ 後始末:陰部・臀部を拭く

陰部や臀部を拭く時には、上肢をリーチしながら、便座の上で座位バランスがとれるかどうかを評価します。患者さんを見ていると陰部はあまり難しくないのですが、臀部を拭く時に後方や下方にバランスを崩しやすい人が多いです。どのくらいの範囲に、バランスを保って手を伸ばせるかがトイレ動作の獲得には必要になります。

 

 

 

⑨ 排泄物を流す為のボタンを操作する

最近の病院は、水を流す時にボタン式のトイレになっているので、ボタンを押す動作自体は難しくないと思います。ただ、最近のトイレは、水を流す以外にもたくさんボタンがあるので、そこが問題です。

 

 

 

水を流すスイッチ、ウォシュレット、ナースコールなど、それぞれのボタンを押し間違えないか、確認が必要です。特にもともとウォシュレットを使う習慣がある患者さんは、ボタンを押し間違えてウォシュレットの水で衣類が汚れるケースもよく経験します。

 

 

 

 

以上がトイレ動作を獲得する為に必要な9つの行程です。まとめると…

 

トイレ動作を自立するための9つの行程
① 車いすをこぎ、トイレに出入りする
② 車いすから立ち上がる
③ 立位を保つ
④ 体(臀部:お尻)の向きを変える
⑤ ズボンを下げる
⑥ 便座に座る
⑦ 尿意や便意をコントロールして、排泄する
⑧ 後始末:陰部・臀部を拭く
⑨ 排泄物を流す為のボタン操作する

 

 

次は、トイレ動作訓練で、手すりに寄りかかったズボンの上げ下げ方法について、訓練を段階付けながら見ていきます。


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手すりを使ったズボンの上げ下げをする訓練の段階づけ

片麻痺患者さんが、手すりを使ってズボンの上げ下げを訓練する時には、以下のような段階づけができます。

 

 

手すりに寄りかかってズボンの上げ下げをする訓練の段階づけ

① 健側で手すりにつかまり、肩で手すりに寄りかかる

② 肩で手すりに寄りかかりながら、手すりの下の方をつかむ

③ 健側の手を手すりから離して、肩だけで手すりに寄りかかって立つ

④ 肩で手すりに寄りかかりながら、膝を曲げる

⑤ 膝を曲げた状態で、健側でズボンを下げる

 

たぐ
片麻痺になったことで、両下肢でとれなくなったからだのバランスを、どのように手すりを使ってとっていくかがズボンの上げ下げを訓練していくポイントです。

 

 

 

では、①番から段階を追って、ズボンの上げ下げの方法について説明します。

 

 

① 健側で手すりに掴まり、肩で手すりに寄りかかる

まずトイレ動作のズボンの上げ下げでは、患者さんは、自分の体重を健側の方向へ乗せられるようになる必要があります。

 

 

 

片麻痺の状態では、立っている時にどのあたりに体重を乗せて良いものか、慣れるまでわかりません。そのため、健側に体重を乗せることがわからないうちは、患者さんはどうにか転倒しないように怖がって全身に力をいれがちです。そこでトイレ動作訓練を始めた時には、まず手すりにつかまって健側の下肢で立てる状態を目指してみてください。

 

 

 

② 肩で手すりに寄りかかりながら、手すりの下の方を掴む

手すりにつかまって健側の下肢で立っていられるようになったら、次は縦手すりの下の方をつかめることを目標にします。手すりを持ちかえたり、手すりの下の方を持ったりできることは、これからズボンの上げ下げをするための前段階です。

 

 

 

手すりを強く握りしめている患者さんでは、手すりから手を離して、ズボンに向かって手を伸ばすことができません。

 

 

 

わずかでも手すりを握っている手の力を抜けない場合には、健側の下肢の方向へ体重を移したり、健側の下肢だけで立つ姿勢を保ったりする訓練をして、握力に頼らない立ち方をとれるようになる必要があります

 

 

 

③ 健側の手を手すりから離して、肩だけで手すりに寄りかかって立つ

手すりから手を離して、肩で手すり寄りかかる時には、手を離した瞬間に、下肢や体幹が曲がって姿勢を崩さないように注意して、いつでも支える介助ができる準備が必要です。

 

 

 

手すりから手を離すことができた後は、いきなりズボンに手を伸ばすのではなくて、健側の下肢や体幹を伸ばしてみて、再度肩で手すりに寄りかかれるかを確認するようにしましょう。いきなりズボンを下げる動作に移ると、下げる動作に注意が向いて手すりから肩が離れて姿勢を崩しやすいからです。

 

 

 

④ 肩で手すりに寄りかかりながら、膝を曲げる

ズボンを上げ下げする時には、多くの人は膝を軽く曲げないと手がズボンに届きません。ただ、健側の下肢で力いっぱい立つ姿勢を保っている場合が多いので、力を抜いて膝を曲げることが難しい患者さんも多いです。

 

 

 

肩で手すりに寄りかかりながら、何度も膝を曲げ伸ばしする練習をしましょう。一番避けたいことは、「かくっ」と膝の力が抜けて、からだ全体のバランスと崩すことです。

 

 

 

⑤ 膝を曲げた状態で、健側でズボンを下げる

最後は、健側の手でズボンを下げていきます。ズボンを下げる順番は、健側、体の中央、麻痺側の順番が行いやすいですよ。健側からズボンを下げはじめ、どの程度まで体の中央、麻痺側に手を伸ばしていけるか、探りながら手を伸ばせると良いです。

 

 

 

この段階は健側に寄りかかってはいますが、麻痺側にも体重が少しずつ乗っていきます。患者さんと、どの程度までなら麻痺側に体重を乗せられるかを確認しながら訓練してみてください。

 

ズボンの上げ下げを手すりに寄りかかって行うかどうかの判断

ズボンの上げ下げを手すりに寄りかかって行うかどうかは、慎重な判断が必要です。というのも、片麻痺患者さんでは、麻痺が回復段階にあるにも関わらず手すりに寄りかかった方法を行うと、麻痺側を使わない動きを学習するからです。

 

 

 

そのため、手すりに寄りかかった方法でズボンの上げ下げをするかどうかは、患者さん・理学療法士・作業療法士・看護師・介護士で話し合いながら決めていくべきです。僕の場合は、高齢の患者さん、脳卒中発症後3ヶ月が経った患者さん、重度の片麻痺患者さんでは、手すりに寄りかかったトイレ動作の訓練を行っています。

 

 

 

手すりに寄りかかるということは、麻痺側を使わなくなるということです。患者さんの予後的メリットを考えて、トイレ動作の方法を考えるようにしていきましょう

 

まとめ

トイレ動作と言っても、その方法は色々です。ですが、片麻痺患者さんの場合には基本となる形があるので、紹介した方法を参考にしながら担当する患者さんが行いやすい方法を探していけると良いと思います。

 

 

 

また手すりに寄りかかる方法は一見すると便利な方法ではありますが、「麻痺側の使用頻度が減る」というデメリットを持っているんです。トイレ動作訓練を行っていく時には、他職種と患者さんの状態やメリット・デメリットを話し合いながら、進めていくようにしましょう

 

関連記事:トイレ動作を作業療法で訓練する時に考えておく6つのこと

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