うつ病人の生き方・働き方改革

作業療法のアクティビティに、刺し子を使ってみてはいかが?

2019/09/17
 
この記事を書いている人 - WRITER -
たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
詳しいプロフィールはこちら

患者さんと、作業療法のアクティビティとして、刺し子を使った作業活動を紹介します。

 

 

 

作業療法のアクティビティの幅は広いですが、患者さん自身が、好きな事を好きなだけやれる時間は、いつだって大切ですよね?

 

 

 

この記事では、作業療法におけるアクティビティって何?という事から、患者さんに作業療法として行った刺し子について書きます。


スポンサーリンク

作業療法におけるアクティビティとは?

作業療法におけるアクティビティという言葉の使い方は、2通りあると考えます。

 

広い意味:人が行う目的のある活動の全て
狭い意味:作業活動、道具を用いた治療的活動

 

※髙橋先生は、「作業療法においてアクティビティは、人が営む全てを含むといっても過言ではない」と、述べています。※また、宮口諸先生らは、治療的に道具を用いる事をアクティビティと捉えて、作業療法の治療展開を紹介しています。

参考:中枢神経系疾患に対する作業療法

 

 

臨床では、狭い意味でアクティビティという言葉を使う作業療法士が多い印象です。例えば、『あの患者さんには、○○のようなアクティビティがいいんじゃないかな?』といったように、アクティビティという言葉・概念を使っていますかね。この記事でも、作業療法で行った刺し子を紹介する都合上、狭い意味で、アクティビティという言葉を使わせていただいています。

 

作業療法にアクティビティを取り入れて、何が良いのか?

作業療法にアクティビティを取り入れて何が良いのか?というのは、つまり作業療法の何が良いのかだと思いますが、個人的な見解と文献をもとにした、作業療法にアクティビティを取り入れるメリットをまとめました。

 

 

作業療法でアクティビティを取り入れるメリット
① 何も考えないで、活動に没頭する時間が作りやすい
② 作品・成果として、視覚的に形に残る
③ 自分の好きなように課題を進められる
④ 自分で課題を辞める権限も持っている
⑤ 生産的な欲求を満たせる
⑥ 楽しい

 

 

① 何も考えないで、活動に没頭する時間が作りやすい

アクティビティで用いる活動は、特に単純で単調な活動であるほど、普段感じている嫌な考えから逃れられる時間が作りやすいと思います。よく『あんまり考え込まないで』と言ってしまうことがあると思いますが、何もしていない時の方が、色々と悲観的な考えや感情が浮かんできやすいものです。

作業療法で扱うアクティビティには、そういう悲観的な考えや感情を浮かばせずに、何も考えていないリラックス状態を作れると思うんです。

 

② 作品・成果として視覚的に形に残る
心理的に落ち込んでいる、または落ち込みやすい患者さんほど、自己効力感(自己肯定感)が低いですよね?まあ、僕自身もうつ病持ちで、そのタイプなんですが…。

 

アクティビティを行うと、作品が形として残ります。今日は、どこまでできた、明日はどのあたりまでできそうか?患者さんが、自分自身でできた事の確認と明日やる事の楽しみを持ちやすいと思うんですよね。それは、決して『やらされている』という義務感ではなく、作業療法士と一緒に、作品作りの過程や完成予測を共有する楽しさを味わうようだと良いと思うんです。

 

③ 自分の好きなように課題を進められる
自分の好きなように課題を進めやすいのも、アクティビティと特徴です。筋肉のように、どういう風に動かせないと、筋力向上という変化を起こせないという訳ではないですよね?

 

むしろ、予想もしていなかったようなハプニングがあった方が、笑いも起きるし、その時に、どういう対処をしていこうか、患者さん自身が問題を解決する機会になると思います。

 

④ 自分で課題を辞める権限も持っている
これは、僕が作業療法でアクティビティをする上で、一番重要視している点です。要するに、何事も『逃げ道』がないとって事です。
嫌になったら辞めればいい、そういう逃げ道があった方が、不安感や焦燥感からは、解放されやすいと思います。

 

でも意外と人間って、自分で作り始めた者にはこだわりが強いから、どんな作品でも、途中で辞める患者さんは、少ない印象がありますね。

 

⑤ 生産的な欲求を満たせる

人間という生き物は、基本的に、何かを生み出そうとする性質があるそうです。わかりやすい例えを吉川先生の言葉を以下に引用します。

 

“人間は、生まれながらにして、「より多くを得る」方向に行動する性質を持っています。ある子どもにお菓子を渡すと片手で受け取り、2つ目の菓子を渡すと、もう片方の手で受け取り、3つ目の菓子を渡すと、しばらく考えてから一方の手の菓子を口にくわえ、その手で3つ目の菓子を受け取りました。
積み木を積み上げる子どもは、もっと高く積み上げようとしますし、砂場で山を作っている子どもは、もっと高い山を作ろうとします。
絵を描く人も、楽器を演奏する人も、より多くの、より高いレベルの作品に挑戦していきます。
スポーツをする人は、より速く、より強く、より上手にできるように努力を続けます。
そして、生み出される成果が増えると、その作業をもっと行っていこうという意欲が湧いてくるのです。”

引用:「作業」って何だろう 第2版 作業科学入門

 

同じ事を身近なところで言えば、今このブログを読んでいるあなたも、もっと作業療法を深めたいと思っているから、検索してきてくれたんですよね?

 

以上のように、アクティビティという生産的行為は、人間がそもそも持っている欲求を満たしてくれて、それ自体が、患者さんの良い精神衛生い繋がっていくんだと思います。

 

⑥ 楽しい
作業療法にアクティビティを取り入れるメリットの最後は、やっぱり楽しいからです。

 

楽しいと思える事には、体が勝手に動くんです。
楽しい事には、夢中になれるんです。

 

夢中になれる事は、自分でできるまで試行錯誤するんです。したいんです。自分で試行錯誤するから、上達も早いんです。だから、作業療法では、患者さん自身が楽しいと感じる事や趣味を大事にしますし、それらを手がかりにしたアクティビティを作業療法に取り入れていけると、患者さんにも良い影響が出やすいと思うんですね。

 

作業療法のアクティビティで、刺し子を導入した理由と経緯

ここからが今回の本題です。僕が担当していた患者さんの入院中の状況は、ざっとあげると以下のような状態でした。

 

 

アクティビティに刺し子を導入した患者さんの状況
・入院中に、やる事がない
・終日、何もできなくなったと自己否定をする
・悲観的な考えに浸り、笑顔がない。よく泣いていた
・気分が落ち着かず、気持ちが塞ぎ込むという訴えが多い
・夜、眠れない
・上肢や下肢は動く、歩行器で歩行ができる
・趣味で縫い物をしていた
・うつ病で、入院前もカウンセリングに通っていた

 

 

何もする事がないからこそ、余計に自分の悪いところばかりに目が行き、悲観的な考えばかりが浮かんできて、気分が落ち着かず、気持ちが塞ぎ込んでいくという悪循環でした。入院前も、カウンセリングに通っていていたとの事。昔から、趣味で縫い物をしており、縫い物ができる程度の機能は残存していました。

 

作業療法のアクティビティで、刺し子を導入した目的

そこで、患者さん自身が、自分の悪い状況にばかり注目したり、自己否定に浸り、悲観的な考えばかりにひたってしまう時間を取り去る為に、刺し子を使った作業活動を導入しました。何も考えず、作業に没頭できる気晴らしの時間を作る事にしたんです。

 

 

バランスが悪かった関係で、歩行器での移動に少し介助が必要だったんですが、手足は動くし、目も見える。刺し子の作業を行うには、針を操作できる手指の巧緻性と、縫い物ができる程度の視力が十分にあったんです。唯一なかった物が刺繍関係の在庫です。そこで、ご家族に相談すると、刺し子のスターターキットなる物を用意してくれました。

 

刺し子を使った訓練とメリット

今回使用した刺し子は、オリムパス社の刺し子スターターキット コースター(角七宝・十字つなぎ)。調べた限りでは、刺し子の中でも、比較的簡単なものになると思われます。スターターキットには、刺し子糸(赤・青各1本)、刺し子布(1枚)、刺し子針(1本)、刺し方説明書(1部)が入っていました。刺し方説明書には、刺し子の縫い方と生地を縫っていく順序が書かれています。

 

【スターターキット&陶芸機材SP】★オリムパス 刺し子キット コースター 角七宝・十字つなぎ/264 [スターターキット/刺し子キット]

価格:491円
(2017/9/28 07:51時点)
感想(2件)


刺し子をやってみると、こんな事がわかりました。

 

刺し子を使ってみてわかった事
① 文章を読み、説明書の内容を理解する
② 先の展開を考えながら、縫う順序を選んでいく
③ 会話をしながら作業する、複数の課題の遂行能力
④ 助言を求める等の問題解決能力
⑤ 後片付けを含めた物品の管理

 

作成期間は、約1週間。毎日20分程度、作業療法の時間で行います。作業している最中は、真剣そのもの。周囲を人が通ったり、物音がしても気にならない位、作業だけに没頭できる20分間を作る事ができました。

 

 

『見られている』という雰囲気を作りたくなかったので、そばにいる僕は、裁縫セットをきれいにしていたり、説明書を読んだり。求められた助言には答え、時々、患者さんの娘時代の話をする等。できるだけ必要な時にだけ現れる陰になるよう徹していました。

 

 

 

日々の連続性がある課題になると思うので、患者さんも翌日に楽しみができたり、訓練終了時間になっても、続きをやりたがったり。やっぱり好きなのかな。やりたかったんですよね。

 

 

 

ちなみに、仕上げは生地を濡らしてアイロンをかけるので、縫うだけでなく、アイロンの作業まで見れてしまうのは、作業療法士にはとても魅力的に思いました。

 

まとめ

リハビリ病院に入院中の患者さんに、気晴らしを目的に、作業療法で刺し子を行いました。この記事では、刺し子を導入した経緯や作業活動としてのメリットを書きました。

 

 

 

刺し子を行うと、生活に必要な理解力や計画性、問題解決能力などを評価する事ができます。記事で挙げた患者さんは、昔から刺繍が好きだったので、何も考えずに作業に没頭できる時間は、精神的な不安から解放される気晴らしの時間になりました。

 

 

 

作業療法士には、患者さんが好きな作業に没頭できる雰囲気を作る事、必要な時にだけ、助けを求められやすい環境づくりが重要だと思いました。

この記事を書いている人 - WRITER -
たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
詳しいプロフィールはこちら

Copyright© 僕の人生に うつ がきた , 2017 All Rights Reserved.