うつ病人の生き方・働き方改革

ペグボードをつまみ動作のリハビリに使う理由と進め方

2019/09/17
 
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たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
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「つまんでいるだけで、上手くなるのかな?」

 

 

 

作業療法士の経験が浅いと、ペグボードを使ったつまみ動作の訓練をしながら、リハビリの進め方に悩みますよね。

 

 

 

僕は、リハビリ病院の作業療法士として、約8年ほど、片麻痺の患者さんを中心に、リハビリを行っていました。片麻痺の患者さんに、指先の動きの訓練だけしていても、つまみ動作が上手くいかないことをたくさん経験してきました。片麻痺の患者さんが、つまみ動作が上手くできるようになるためには、段階的なリハビリが必要だったんです。

 

 

 

物をつまむ動作には、指先だけではなくて、手関節、前腕、肘、肩が関わってきます。もっと、経験を積んでいくと、体幹や下肢など、全身が関わっていることに、気づけるようになります。将来のスキルアップした状態は置いておくとして、現時点では、患者さんの機能や能力に合わせて、つまみ動作のリハビリについて、段階的に考えていく必要があります。

 

 

つまみ動作の訓練には、ペグボードが使いやすいです。色々な大きさや形があり、どこの病院にも置いてある代表的な物品。患者さんは、ペグボードで色々なつまみ方ができるようになると、麻痺した側の指先を使って、日常のちょっとした場面でも、つまむ動作ができるようになり、生活がしやすくなるんです。


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運動・感覚麻痺が手や上肢に出現すると、つまみ加減がわからなくなる

 

ペグをつまむ.jpg

 

そもそも、なぜ、片麻痺の患者さんは、つまみ動作が難しくなるのでしょうか?理由は、脳卒中になり、運動・感覚麻痺の症状が、手や上肢に出現すると、以下のようなことが起こるからです。

 

● 物をつまめるように、手の角度をつけられない

● 物に合わせて、力加減を調節できない

● 物を持っている感覚がわからない

● 物の重さがわからない

 

簡単に言うと、運動や感覚麻痺の影響で、ちょうど良い加減で物をつまみにくくなるんです。

 

 

 

日常生活のレベルで言えば、例えば、食事では、テーブルの上にある味噌汁のお椀を掴もうとする時、拇指(親指)に力が入りすぎて、お椀ごと倒してしまうことがあります。着ているシャツのボタンをとめられなかったり、薬の錠剤をつまみ損なうことも、よく見られる片麻痺の患者さんの日常生活上の問題です。

 

 

 

肩の筋力、肘の曲げ伸ばし具合、前腕や手関節の角度の調整、手指の力の調節など、上肢のどこかしらの動きが鈍ると、指先のつまみ動作が行いにくくなります。

 

つまみ動作を行いやすくするにはどうすればいい?

運動・感覚麻痺が、手や上肢に出現したことにより、つまみ動作が行いにくくなった患者さんが、つまみ動作を上手くなる為には、リハビリが必要です。リハビリは、指先でのつまみ動作を「もう一度、学習していく」イメージです。

 

 

 

 

つまみ動作のリハビリを行う為には、人間がどのように、物をつまんでいるのか、基本的なつまみ方を知る必要があります。作業療法士が、物のつまみ方を知っていないと、訓練で介助をしたり、行いたいつまみ動作への誘導ができないからです。

 

 

 

代表的なつまみ動作には、以下の4つの方法があります。

 

側腹つまみ.jpg
側腹(そくふく)つまみ
指腹つまみ.jpg
指腹(しふく)つまみ
指尖つまみ.jpg
指尖(しせん)つまみ
3指つまみ.jpg
3指(さんし)つまみ

どのつまみ方であっても、つまみ動作ができると、患者さんの生活はずいぶんと便利になります。先ほど挙げた3つの動作。①味噌汁を飲む②シャツのボタンをとめる③錠剤をつまむなどの動作は、やろうと思えば健側の上肢だけを使って、行うことができます。

 

 

 

ただ、麻痺した側の手指が補助的に使えるようになると、動作が正確に行いやすくなったり、動作のスピードがあがります。患者さんからすると、動作が正確にできると、無駄にエネルギーを使わずに済みますし、スピードがあがることで、自分がやりたいことに費やせる時間が作れますよね。こういうのをQOLの向上って言うんでしょうね。

 

つまみ動作のリハビリに、ペグボードを6つのメリット

 

 

以下に、つまみ動作のリハビリに、ペグボードを使うメリットを挙げました。

 

ペグボードを使うメリット
① 色々な大きさがある
② 適度に硬さと重さがある
③ 落としても壊れない
④ 始めと終わりがわかりやすい
⑤ ペグボードを斜めにすると、立体的な訓練ができる
⑥ リハビリ室に、必ず置かれている

 

 

① 色々な大きさがある

ペグボードは、大きさの違うペグを使い分けることによって、色々なつまみ動作のリハビリができます。

 

大ペグ:側腹つまみや3指つまみが行いやすい

中ペグ:指腹つまみが行いやすい

小ペグ:指腹つまみ、指尖つまみ向け

 

人が物をつまむ場合、つまむ物を見た時に、自然と指や手の形を物に合わせようとする反応がでます。例えば、大ペグを目の前に出したら、指の先端でつまもうとする人は、少ないですよね?ペグボードを使うメリットは、大きさが違う種類が揃っていることによって、ペグの大きさに合わせて、患者さん自身で、ペグのつまみ方を変えていきやすいことです。

 

② 適度な硬さと重さがある

つまむ物に、ある程度の硬さや重さがあった方が、物をつまんでいる感覚がわかりやすいです。手指から、物を触っている・持っている感覚が得られやすいからです。

 

 

指先が動かしにくいと、運動面にばかり注目しがちですが、つまみ動作のリハビリでは、患者さんが指にどのような感覚を感じているかが重要です。指先で物をつまんでいる感覚を感じられるからこそ、指の感覚を手がかりに、患者さんは力加減や指・手の角度を変えることができるんです。

 

 

例えば、ティッシュペーパーのような柔らかく、軽い物であると、指の感覚が低下している患者さんには、何を持っているのかがわかりにくいです。何を持っているかがわかりにくいということは、どの程度の力を入れれば良いか、指をどういう形にすると良いのかが、判断がつかないんです。

 

 

指先の感覚がわかりにくいと、結果的に、指に過剰に力が入ったり、逆に力が抜けなかったりして、つまみ動作が行いにくくなります。だから、つまみ動作の訓練には、適度な硬さや重さが必要なんです。

 

③ 落としても壊れない

落としても壊れないというイメージがあると、精神的に安心ですよね?つまみ動作のリハビリのように、細かい物を使う場合、落として壊れてしまう不安から、心理的に無駄な力が入りすぎるというのはよくある話しです。

 

 

つまみ損ねた時に、落としても壊れない安心感は、患者さんをいたずらに緊張させずにすむので、狙った動きが引き出されやすい。

 

 

そもそも、患者さんは、作業療法士を「先生」だと考えている場合が多いので、先生の前で失敗しないようにと、作業療法士がいるだけで、患者さんは緊張しやすく、力の入りやすい環境にあると言えます。

 

 

「落としても壊れる物じゃないんでね。」と、作業療法士は、積極的に、失敗を許容する姿勢を見せるべきです。

 

④ 始めと終わりがわかりやすい

ペグボードは、穴の数とペグの数が決まっているので、訓練の開始と終了がわかりやすいのも特徴です。10本、20本と。達成する目標がわかりやすいほど、人間は迷いなく動くことができます。これは、リハビリも一緒。

 

 

それと、達成感というと大げさかもしれませんが、ペグを全て入れ終えた時には、「ここまでやれた」という証拠が残るのも、視覚的にフィードバックできるペグボードを使うメリットです。

 

⑤ ペグボードを斜めにすると、立体的な訓練ができる

台やプラットフォームの枕などを使うと、ペグボードを斜めにして使うことができ、立体的な訓練が行いやすいところも、つまみ動作の訓練にペグボードを使うメリットです。

 

 

訓練の初めは、平らな面でペグを刺していた訓練も、つまみ動作の能力があがっていくにつれて、斜面に入れてみたり、応用的なつまみ方のリハビリを行っていきたいです。また、ペグボードを斜めにすることは、肩や肘を挙げた状態でのつまみ、より角度をつけた手関節の動きなどの訓練に活用できますよ。

 

⑥ リハビリ室に、必ず置かれている

リハビリ病院の場合、「必ず置いてある物」って、結構重要です。理由は、担当者がいない日でも、同じような訓練の内容が提供できますし、急性期の病院でペグボードを経験している患者さんは、その頃との回復の違いを感じたりしています。アナログですが、身近で導入しやすい道具は、色々な分野で働く、どんな作業療法士にとっても扱いやすい便利品なんですよね。

 

つまみ動作の段階づけ

 

ペグボードを使ったつまみ動作.jpg

 

僕は、つまみ動作のリハビリをする場合、①手指のつまみ方 ②手関節・前腕の角度に注目しています。

 

① 手指のつまみ方

つまみ動作の段階づけは、側腹つまみ ⇒ 3指つまみ ⇒ 指腹つまみ ⇒ 指尖つまみの順番で行っていきます。このようにつまみ動作を段階づけた理由は、拇指の対立する運動に注目したためです。側腹つまみから指尖つまみに向けて、拇指を対立した状態に動かしたり、対立の状態を保ち続ける必要があるので、よりつまみ動作が難しくなります。

 

② 手関節・前腕の角度

指でのつまみ方に加えて、手関節と前腕の角度が、つまみ動作の難易度に関わってきます。手関節や前腕の角度が違うだけで、筋肉の長さや筋肉の向きが変わりますし、関節を別々に動かすような分離した運動が必要だからです。

 

手関節では、屈曲位 ⇒ 中間位 ⇒ 伸展位

前腕では、回内位 ⇒ 中間位 ⇒ 回外位

一概には言えませんが、一般的に、⇒の方向に向かって、つまみ動作が難しくなっていきます。以上の①手指のつまみ方②手関節・前腕の角度によって、つまみ動作を段階づけると、以下の表のようになりました。

 

つまみの段階づけ.jpg

 

上の表を参考にすると、手関節が屈曲位、前腕が回内位での側腹つまみが最も行いやすいです。逆に、手関節が伸展位、前腕が回外位での指尖つまみが最も難しくなります。日常生活で言えば、洋服の袖口を引っ張ることが行いやすいつまみ動作で、物干しのバスタオルに洗濯ばさみをつけたり、刺繍で針を布に縫い付けるようなつまみ動作が、難易度が高いと思われます。

 

ペグボードを使ったつまみ動作のリハビリ

つまみ動作の段階づけをもとに、ペグボードを使ったつまみ動作のリハビリでは、手関節を屈曲位、前腕を回内位での側腹つまみから始めます。

 

 

 

作業療法士は、患者さんの横に座って、前腕を支える介助を行ったり、患者さんの拇指と示指を両手で手添えしながら、患者さん自身が自力で側腹つまみの動きが出しやすいような環境を作ることが重要です。

 

 

 

作業療法士の介助だけでは、つまみ動作が出にくい場合は、手のストレッチをしたり、動きの出にくい関節を部分的に運動してから、再度、ペグボードのつまみ動作に、チャレンジすると動きがでやすいです。

 

 

 

手関節が屈曲位、前腕が回内位でのつまみ動作ができてくるにつれて、手関節や前腕の角度をかえてみたり、つまみ方を3指にかえていきながら、徐々に段階を上げていけると良いですね。手関節や前腕の角度のつけやすさは、患者さんによって個人差がでやすいところです。どこの筋肉の動きが回復しやすいかは、患者さんによって違いますから。

 

 

 

だから、つまみ動作の段階づけを参考にしながら、患者さんの回復に合わせて、バラエティに富んだつまみ動作の獲得を図っていければと考えます。

 

まとめ

ペグボードを使ったつまみ動作のリハビリについて書きました。片麻痺の症状で、運動や感覚の麻痺を生じると、つまみ動作が難しくなり、その回復には、つまみの段階を意識した指や手のリハビリが必要になります。

 

 

 

ペグボードを使って、つまみ動作のリハビリを作業療法士が行う際には、患者さんがペグをつまむ動きが出しやすいような環境作りが重要です。

 

 

 

そもそものつまみ動作の難易度を考えていないと、つまみ動作の獲得には、なかなか至らないと思うので、この記事で挙げた段階づけやリハビリの方法が、少しでもつまみ動作訓練の手がかりになっていただければと思います。

 

 

 

患者さんのつまみ動作が上手くなってきたら、作業活動の中で、つまむリハビリを進めていけると良いですね。

関連記事:つまみ動作のリハビリにちぎり絵を使った作業療法の実践例

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