うつ病で病気退職をした僕が、ライターに転身して生活できるようになるまで

うつ病で休職や離職した方のなかには、仕事復帰する自信が持てない人もいるでしょう。
自分が働くイメージが持てないと、復職をしたり新しい仕事をはじめたりするのも難しいものです。実は、僕自身も、うつ病で会社を病気退職してから働く自信が持てずに長く療養をしていました。
現在は、フリーランスのwebライターとして働きながら、うつ病で悩む方に向けて「療養生活の経験」や「仕事復帰に役立つこと」などを情報発信しています。
ここでは、僕がうつ病で病気退職をしてからwebライターとして仕事復帰した過程と、現在おこなっている活動内容について紹介します。
目次
うつ病を発症し、病気退職をする
うつ病を発症し、診断を受けるまで
僕は、23歳で関東の医療系大学を卒業してから作業療法士の仕事をしていました。
「作業療法士」の名前になじみがない人も多いかと思いますが、この仕事は、病気やケガで日常生活が困難になった方と一緒に、リハビリをおこないながら生活をサポートする専門職です。僕は、病院や介護施設を転々としながら、病気や障がいでからだが不自由な患者さんや利用者さんを対象にリハビリを提供していました。
もともと、人と関わりながら働くことが好きだったので、世間話をしながら日常動作の練習をしたり、生活環境を整えたりする支援ができる作業療法士の日々はそれなりに充実していたんですよね。しかしながら、僕はあるエピソードをきっかけにうつ病を発症して、働いていた職場を病気退職することになりました。
そのエピソードとは、自分がリハビリを担当していた患者さんに次のようなクレームを受け続けたこと。
・あんたのリハビリのやり方は、私と他の患者を差別している
・あんたの接し方は、人をバカにしているようにしか見えない!
・ちゃんとまじめにリハビリしてくれないか?
・適当にやるなら、もういい。私に関わるのは今後やめてくれ!
エピソードの詳細は割愛しますが、とにかくこういった言葉の数々で精神的なダメージを受けたことで、憂うつや不安感に襲われるようになり、ついにはベッドから起き上がることができない日々が続くようになりました。
そこで、妻にすすめられて精神科クリニックを受診したところうつ病の診断を受けたんです。
診断を受けて、病気退職するまで
うつ病の診断を受けてからも、遅刻や欠勤を繰り返しながら何度か職場に出勤したのですが、そんな生活も長くは続かず…。というのも、職場へ行くたびに憂うつや不安感が強くなったり、仕事に集中できなくなったり、死にたい気持ちが湧いてきたりして、自分の気持ちが徐々に追い詰められていったからです。
そこで、主治医や家族・職場と相談して休職をすることになったんです。
ところが、休職をしても大して体調は回復しませんでした。休職をしてからだを休めることはできても、仕事のことが頭から離れなかったので、心のほうは休まっていなかったのかもしれませんね。うつ病では「休息が大切」とよく言われますが、休職をすれば完治するという単純な病気ではなかったようです。
それで、僕の場合は、3ヵ月の休職期間では心身が働ける状態まで回復しなかったことから、職場を病気退職することになりました。
自宅療養しながら、webライターの仕事をはじめる
職場を病気退職した後は、自宅のなかでテレビやYoutubeを見たり、簡単な家事をおこなったりしながら自宅療養をしていました。
収入や生活のことを考えると退職後すぐにでも働きたかったのですが、意欲や集中力の低下、不安感、倦怠感などの症状が安定しなかったので、僕の場合は仕事を再開することがなかなかできなかったんです。
webライターの仕事を知ったのは、そんな頃でした。
webライターとは、クライアントから依頼を受けた内容にもとづいて、ホームページやブログに掲載する記事を執筆する仕事のこと。
インターネットを使った仕事になじみがない方のなかには、webライターの仕事に難しそうなイメージがある人もいるかもしれませんが、僕は以前から個人ブログを運営していたので、文章を書く仕事が取り組みやすく感じられました。また、うつ病で体調が安定しづらかった僕には、人間関係のストレスが少ない自宅でできる仕事はとても魅力的に映ったんです。
このような経緯から、僕はwebライターという今までとは違った働き方で仕事を再開することにしたんです。
webライターの仕事をはじめて収入が得られるようになるまで
webライターをはじめたとは言っても、はじめは仕事の受注方法も知らない状態からスタートしたので、まともな収入が得られるようになるまでは約1年半ほどかかりました。
クラウドソーシングサービスを利用しはじめる
最初は、クラウドソーシングサービスを利用して、ホームページやブログを運営するクライアントから仕事を受注しました。
「クラウドソーシングサービス」とは、個人と企業(クライアント)間でおこなわれる仕事の受注・発注を仲介してくれるサービスです。サラリーマンとは違ってしっかりとした雇用契約を結ぶ必要がない分、個人でも仕事がはじめやすく、webライター・エンジニア・イラストレーターなどさまざまな職種の方に利用されています。
僕も、このクラウドソーシングサービスを利用して、ホームページやブログに掲載する記事の執筆依頼を受注していきました。
webライターに転身しても、すぐには稼げない
しかしながら、webライターの仕事ではなかなか生活できるだけの収入を稼ぐことができませんでした。それというのも、次の3つの理由があったからです。
① 仕事を発注してくれるクライアントが少ない
② うつ病の症状により体調の変動が大きい
③ 働く自信がない
特に②・③は、仕事復帰の大きな妨げとなりました。なぜなら、体調が変動しやすかったり働く自信が持てなかったりすると、クライアントが見つかってもまとまった仕事を受注することができなかったからです。
一度にたくさんの仕事を受注しても、頭のなかには体調が崩れてしまう心配が常にありましたし、そもそも、自分が仕事量をこなせないと思っていたので、仕事も収入も増やすことができないでいました。
うつ病で体調が安定しない時期は、働きたい気持ちがあっても思ったように心身を動かすことができなかったことも多く、精神的にずいぶんと追いつめられていたように感じます。
ですから、体調の安定しない時期は、ほとんど専業主夫のような生活をしながら、1日に2~3時間だけwebライターの仕事をするといった生活をしていました。
病気退職をして約1年半後、まともに働けるようになる
webライターの仕事をはじめ、1日に8時間前後の仕事ができるようになったのは、職場を病気退職してから約1年半後のことです。
この約1年半の間は日によってやる気が出なかったり、疲れやすかったり、集中力が続かなかったりしたので、簡単な家事や仕事をくり返して生活リズムを整えながら、徐々に本格的な仕事をする生活に慣れていきました。
仕事復帰するまでの期間は僕にとっても非常に長く、まともに働けない日々がとてももどかしく感じられたものです。それにも関わらず仕事復帰することができたのは、支えてくれた家族や友人、医師の存在や「回復をあきらめない気持ち」があったからかもしれません。
人によって「精神的な支えになる存在」は違ってくるのでしょうが、何か信じられるものがあると目標に向かって突き進んでいけるのは、うつ病の治療も同じなのでしょう。
ありがたいことに仕事復帰した現在では、さまざまなクライアントさまからご依頼をいただくことができ、webライターとして複数のホームページで連載させてもらえるようになりました。
【寄稿メディア】
・医療介護・リハビリ・療法士のお役立ち情報【マイナビコメディカル】「セラピストプラス」さま
ほか
このように、まとまった仕事ができ、まともに収入が得られるようになったことは本当に嬉しく感じています。しかしながら、僕のなかには仕事復帰できた喜び以上に次のような「新たな思い」が芽生えてきたんです。
うつ病で悩む方の社会復帰をサポートしたい
僕は、うつ病になり、長い療養期間のなかで多くの悩みを抱えてきたので、自分の経験を活かしながら、同じような状況にある方の社会復帰のサポートをしたいと考えるようになりました。
特に、僕がもっとも悩んだことは、うつ病になってからの具体的な社会復帰の方法やきっかけが見つけにくかったことです。
・長い療養期間で、仕事をする感覚を忘れてしまった
・仕事をしている自分のイメージができない
・仕事がしたくても働く自信がない
・在宅で仕事復帰したくても、働く練習をする場所や機会がない
など
もちろん、仕事をすることが「社会復帰」のすべてではありませんが、このようなうつ病当事者を取り巻く状況により仕事復帰できずに悩まれている方も多いのではないでしょうか?
こうした事情を踏まえて、現在僕はうつ病で療養中の方に向けて、自分の経験や社会復帰に役立つ情報を発信したり、仕事の機会を提供したりする活動をしています。
実は、このプロフィールページのイラストも、うつ病で自宅療養されている方に仕事を発注して作成してもらいました。今後は、こういった“仕事ができる機会”を増やしながら、うつ病当事者の方が社会復帰をイメージしたり、働く自信をつけたりするきっかけをたくさん作っていきたいと考えています。
活動の様子は、このブログやツイッターで発信しているので興味があったら覗いてみていただければ幸いです。
ここまでプロフィールを読んでいただき、ありがとうございました。今後とも、よろしくお願いいたします。
ブログ運営者:たぐ(@tagweblog)
イラスト:おがまき(@ogasiwa_maki)