うつ病人の生き方・働き方改革

リハビリでの心理的サポートにおける作業療法士の関わり方

2019/02/05
 
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たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
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患者さんのリハビリを行っていると、作業療法士として無力さを感じることがありますよね。

 

 

 

患者さんの機能的な回復には、リハビリの限界がありますし、患者さん自身が、心から理想としている能力や生活は、なかなか実現できないことが臨床では多いです。

 

 

 

思ったようにリハビリが進んでいないと、患者さんは落ち込んだり、自分の人生になげやりになったりしますよね。患者さんが、現状を受け容れられずに思い悩んだ時こそ、作業療法士の心理的サポートが、リハビリの中で必要です。

 

 

 

時には、患者さんの悩みのはけ口になったり、傾聴しながら悩みに共感したりする過程の中で、患者さん自身が、退院後の自分のからだや生活とどう向き合っていくかを考える機会をつくることが、作業療法士ができる心理的サポートだと思います。

 

 

 

「心理的サポート」と言葉で言うのは簡単です。実際に、僕も「これやったら歩けるようになるの?」、「歩けるようにならないならやっても意味ないじゃん!」など、患者さんの思いの丈をぶつけられ、リハビリ専門職としての不甲斐なさを何度も感じました。

 

 

 

そこで、リハビリの中で、どのようにして、患者さんに対する心理的なサポートを行っていくべきかについて、自分の作業療法士の経験を踏まえて、書いていきます。


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そもそも、なぜリハビリで、心理的なサポートが必要なのか?

 

北地らの研究によると、脳卒中を発症して回復期病院に入院した23名中、約半数の12名に、何らかの心理・精神的症状(抑うつ症状やアパシー(興味・意欲の障害))が見られた。

北地ら(2014) 脳卒中後の回復期病棟入院時の身体機能面, 心理・精神的側面,社会的側面, およびQuality of Lifeの関係 1.抑うつ症状とアパシー,29(6),pp.995ー1000,理学療法科学.

 

明らかな心理・精神的な症状を示している患者さんはもちろんですが、大きな病気をして、ある日突然、体が思うように動かなくなれば、自分の置かれた状況を簡単に受け容れることは難しいですよね。

 

 

 

患者さんによっては、

● 思っていたよりも、リハビリの結果が出ていない

●思い描いていた人生と現実とのギャップが大きい

など、自分の思っていた理想と現実のギャップが大きいほど、気持ちが不安定になりやすく、作業療法士による心理的なサポートが必要になるものです。

 

 

 

発症当時は、まだ自分に起こった状況が理解できていない患者さんも、入院1ヶ月ほどが経過し、徐々に状況がわかってくると、「あれ?本当に手足が動くようになるの?」と不安に感じ、心理・精神的に不安定になる傾向があるように見えます。

 

リハビリでの心理的サポートにおける作業療法士の関わり方

リハビリの中で、患者さんと関わり、作業療法士だから行える心理的サポートでは、僕は以下の4つを重要視しています。

 

① 傾聴する

② 激励する

③ 賞賛する

④ まとめる

 

作業療法のメリットは、アクティビティのような作業を通して患者さんと会話ができたり、トイレやお風呂など、退院後に生活する場面を想定した実際的なADL練習をしたりが、行いやすいところですよね。

 

 

 

アクティビティを行い、気持ちが穏やかになれば本音を語りやすいですし、実際的なADL練習をすると、患者さんも、自分が退院していくイメージがつきやすいです。

 

 

 

作業療法士は、① 傾聴する、② 激励する、③ 賞賛する、④ まとめるのスキルを使いながら、患者さんの状態に合わせて、心理的なサポートを行っていけると良いと思うんですよね。

 

心理的サポート①  傾聴する

 

※傾聴とは? 「真剣に聴くこと」 引用:大辞林第三版

 

リハビリの傾聴の役割は、患者さん自身が

気持ちを打ち明けられる

受け入れられている安心感を作る

ことです。

 

作業療法士は、他の職種に比べると、患者さんと1対1で話をする時間がとりやすいですよね。患者さんも、作業療法の時間であれば、人前だとなかなか話せない胸のうちを打ち明けられることも多いです。

 

 

 

もちろん、作業療法士の知らないところで、看護師や介護士と、真剣な話し合いが行われることもありますが、リハビリのように、40分や1時間、毎回傾聴する時間をとれないでしょう。

 

 

 

作業療法士は、無理に話を引き出すのではなく、まずは、患者さんが思っていることを吐き出してストレスを発散したり、思っていることを言葉する機会を作って、患者さん自身が自分で考えていることを整理したりすることに、力を注ぐべきです。他人に話したからこそ、「スッキリした」、「なんか落ち着いたわ」ということは、よくありますし、患者さんが、本当に悩んでいることにも気づけることもあります。

 

 

例えば、「隣のベッドの患者のいびきがうるさくて眠れない」と言っている患者さんも、よくよく傾聴してみると、リハビリが進んでいないように感じるストレスや不安が背景にあったりもするもんです。

 

 

 

気持ちを傾聴していくことで、不安や悩みの本質を見つけて、それらを改善していく為の心理的サポートのスタートですよ。

 

心理的サポート② 激励する

 

※激励とは? 「はげまして、奮い立たせること」 引用:goo辞書

 

僕は、リハビリでは、諦めないこと、やりかけるきっかけをつくることが重要と考えています。

 

 

「どうせ、リハビリやったって歩けるようにはならない!」なんて、リハビリを投げ出している患者さんの姿を見たら、『きっと良くなりますよ!』なんて、安易なことは言えませんよね?

 

 

 

そこで、僕は、患者さんが現状を投げ出すような言動をした時には、2つの方法を行っています。

 

 

1.声かけ:「諦めたら良くはならない」

実習の頃から散々言われてきているように、作業療法士の立場では、患者さんの予後に関わることは言えません。だからこそ僕は、患者さんがリハビリを投げだそうとした時には、「必ず元通りになるとは、はっきり言えない。でも、諦めたら何も変わらないことはたしかだよ」と、声かけするようにしています。

 

 

そんな大胆なこと、簡単に言えるもんか?と思われたかもしれません。僕自身も、患者さんにリハビリを投げ出すような発言をされた時には、「そうか…」と、何も返答せずに、その場にいるしかなかったことが何度もありました。

 

 

少し話がそれますが、僕自身は、うつ病を患って、働いたり、家事をしたりなど、社会的な活動が一切行えない時期があったんです。その時に、精神科医の指示で服薬と療養生活を送っていたんですが、家事の参加や仕事復帰など、最終的な社会参加の形は、自分で決めなければいけない必要性に気づいたんです。

 

 

 

つまり、身体障害を抱える患者さんにも同じことが言えて、作業療法という手段で、患者さんをサポートすることができても、最終的に、どういう人生を過ごしていきたいかについては、患者さん本人以外には決められないんですよね。

 

 

 

だから、作業療法士としては、「諦めるな!」と諭す言葉よりも、「私は、ここまでできる。あなたは、どうしていきたい?」という気持ちで、言葉を投げかけることが重要だと考えます。

※もちろん、患者さんのキャラクターは選んでくださいね!信頼関係がとれていて、自分のリハビリに付いてきてくれている感じがする患者さんに限りますよ。

 

 

2.やりかけられるきっかけ作り

自分に置き換えてみるとよくわかりますが、心理的に落ち込んでいたり、気持ちがネガティブになっている時は、何か行動することが億劫に感じられますよね。そして、何も行動しないからこそ、患者さんは、余計に落ち込んだ原因探したり、ネガティブな気分にひたったりしながら、その悪循環に陥りがちです。

 

 

 

心理的に落ち込んだり、ネガティブな気分になっている時の悪循環を改善するには、「何か行動を起こす」ことが重要です。行動を起こすことによって、気分を変えることができるからです。ちなみに、自分がうつ病になって感じますけれど、「行動によって気分が変わっていく」という考え方は、精神科領域では盛んに話されていますよ。

 

樫村らは、認知行動療法を紹介する中で、うつ病の患者が行動が不活性化することで、何も行動できない自分を嘆き、さらに抑うつ的になることを指摘しており、その抑うつの改善には、意識的に行動できる活動を治療に用いる必要性について述べている。

樫村ら(2016) 認知行動療法の紹介,12(2),pp.57ー58,日医大医会誌.

 

自分たちの身近な例で考えると、例えば、洗濯物をたたむことがめんどくさく感じた時がありません?でも、1枚の下着をたたみ始め、洗濯物たたみにとりかかったら、気づけば全ての作業が終わっていたような経験があるはず。

 

 

 

洗濯物をたたみ終えた後には、「思ったよりも、面倒ではなかった」、「大して大変ではなかった」と思いますよね。つまり、何か行動をやりかけられたからきっかけ(1枚でも洗濯物をたたむなど)があったこそ、億劫に感じられる気持ちが少なくなり、結果的に作業を終えることができたんです。

 

 

 

作業療法における患者さんも同じで、何も行動しなければ、心理的な落ち込みやネガティブな気分でいっぱいになります。だからこそ、気分を変容させる作業をする「きっかけ」が必要なんですね。

参考:図解 やさしくわかる認知行動療法

 

心理的サポート③ 賞賛する

作業療法士は、患者さんの機能や生活に何かしらの変化が起き、患者さん自身がその変化に気づいた時、その変化を賞賛します。

 

 

「良かったね!」

「頑張ったからね!」

 

 

患者さんに変化が起きた時には、どのような言葉かけでも構いませんが、何が良かったのか?どう頑張れたのか?を作業療法士が言葉にすると良いです。偉そうな言い方ですが、専門家の賞賛が、今後の患者さんにとっての心理的な支柱の1つになるんです。

療法士の賞賛による心理的サポート.jpg

自分にとって快(喜び、嬉しい)の刺激があると、それを再現したくなる生き物が人間です。難しい言い方をすると、「運動学習理論」です。難しい言葉はどうでもいいんですが、運動学習理論では、このような作業療法士によるフィードバックを(内在的)フィードバックと言います。

 

※(内在的)フィードバック:(内在的)フィードバックは、学習者が課題を実施した際の自らの運動スキルをどのように感じたかによって、報酬にもなり、エラーにもなるという性質を有する。その微妙な管理は、セラピストが設定する課題とフィードバックに依存している。

引用:運動学習理論に基づくリハビリテーションの実践第2版in DVD

 

心理的サポート④ まとめる

心理的なサポートとは、ニュアンスが少し違うかも知れませんが、今まで行ってきたリハビリの内容をまとめることは、患者さんが客観的に自分の成果を知るためには重要な作業です。

 

 

 

患者さんは毎日自分の体や生活と付き合っているので、どのような変化があったのかについて、療法士や看護師、家族の方が気づきやすかったりするんですよね。

 

 

どこまでできるようになったか?

何ができたのか?

これからどうしていきたいのか

 

 

できた、している、やりたいを患者さんと共有し、今後の向かっていく方向性を示し、将来を見通すことは、心理的安定を保つためには、大切ですよ。

 

まとめ

リハビリの中で、作業療法士による心理的サポートについて書きました。

 

心理的サポートには、

 

① 傾聴する

② 激励する

③ 賞賛する

④ まとめる

 

の4つのがありました。

 

 

体が動けば心も動きますし、心が動けば体も動きます。身体障害領域のリハビリでも、心理的サポートは重要で、作業療法士の関わり方で、患者さんが自分のからだや生活への向き合い方も変わってくるものです。

 

 

 

参考にできそうな部分がありましたら、自分の作業療法に取り入れてみてくださいね。

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