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特養で働くOTの役割とは?特養を経験した作業療法士が仕事内容を解説

2019/10/21
 
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たぐ
webライター・ブロガー。うつ病当事者。うつ病になった人に向け、会社で働く以外のフリーランスとしての働き方・生き方を情報発信。うつ病と付き合いながら、〝自分らしい〟人生の歩み方を模索中。
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作業療法士(以下、OT)は、特養でどのようにして働いているのか?特養のOTに関する情報は、ネットで検索してみてもなかなかイメージが湧かないですよね。

特養で働いているOTの人数は、リハビリの分野の中でも少ないです。僕は、OTの免許を取得して10年になります。でも、知り合いのOTで、特養で働いている人や特養に転職した人に会ったことがありません。

僕自身は約4ヶ月間、特養で働いていました。特養で働くまではクリニックやリハビリ病院で働いていたんですが、医療機関で働いていた知識や技術が活かせる側面もあれば、特養だからこそ必要と思うOTの役割を感じました。

そこで、特養で働くOTの役割について、紹介します。働いていた期間は短いですし、「これが絶対」と思っている訳ではありませんが、少しでも、特養で働くOTのイメージがつけばと思います。

特養とは?

そもそも、特養とはどのような介護施設なのか。まずは、特養について説明します。「特養、特養」というわりには、知らないことが多いですよね?僕も、実際に転職してみてから、特養について調べたり勉強したりしていきました。

特養とは、正式には、「特別養護老人ホーム」と言い、65歳以上の要介護の高齢者が生活する施設です。ということくらいは、僕も特養に就職する前から知っていて、問題は似たような施設の名称がたくさんあって混同するんです。特に、特養と老健が、混同しやすいでしょう。

たぐ
特養… 老健… 老人保健施設… 老人福祉施設…。つまり、特養って何なの?

特養と老健の違いについて、簡単に、図にまとめてみました。

特養=老人福祉施設と考えてください。

老健(介護老人保健説)は、特養とは違い自宅復帰を目指す施設であり、利用できる期間も決まっています。また老健は、「リハビリの専門職が必ずいる」ように義務づけられていますが、特養は、必ずしもリハビリの専門職がいる必要がありません。

あれ?じゃあ、特養のリハビリは、誰が行っているの?

特養のリハビリは、誰が行っているの?個別機能訓練加算とは?

特養には、個別機能訓練加算という加算があります。個別機能訓練加算とは、機能訓練指導員により、ご利用者さんごとに個別的な機能訓練計画を立案している場合、ご利用者さん1人につき1日12単位の介護報酬を請求できるという加算です。

機能訓練指導員には、PT、ST、看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、そしてOTのいずれかの有資格者がなることができます。

たぐ
  つまり、OTは、機能訓練指導員として特養で働き、ご利用者さんの個別機能訓練計画を立案することが、主な役割。これさえこなすと、あとは、自由に働けましたよ。

特養のOTとして行っていた主な役割

実際に、特養のOTとしての役割を挙げると、以下のような仕事に分けられます。

特養のOTの役割

① 個別機能訓練計画書の作成、カンファレンスへの参加

② 個別リハビリ

③ 集団リハビリ

④ 看護師・介護士への介護指導

⑤ 福祉用具のレンタル・購入の評価、相談

⑥ イベントへの参加

⑦ その他

① 個別機能訓練計画書の作成、カンファレンスへの参加

えっ…いきなり書類の話?

と思われたかもしれませんが、特養では、機能訓練指導員が作成する個別機能訓練計画書が、かなり重要な書類なんです。

たぐ
この書類がないと、ご利用者さん1名に対して、1日12単位(1単位=約10~11.05円、地域による)つくはずの加算が請求できなくなるからです。施設の運営から考えると、1ヶ月間加算がとれないだけでも約30万円の減収になるんですよね。

個別機能訓練計画書はご利用者さんの入所時、入所後1ヶ月、その後は3ヶ月おきに書類を作成していきます。

計画書に書く内容は現在のADL状況や身体機能上の問題、今後の施設生活での目標を書いていきます。病院で書いていた「リハビリテーション実施計画書」とは違い、ご本人やご家族が読んでもしっかりと内容が理解できるように、専門用語を使わないところが特徴的でしたね。

例えば「左片麻痺」という表現ではなく、「左の手足に動かしにくさがあります。」とか、「トイレ動作軽介助」ではなく「ズボンを上げる時にお手伝いが必要です。」という表現を使っていました。

個別機能訓練計画書を作成する時期には、必ずご家族、ケアマネジャー、看護師、介護士、管理栄養士、機能訓練指導員が集まってカンファレンスが行われます。

そこでリハビリの視点から、施設生活で機能や動作能力が低下しないような介護の工夫や楽しみが持てるような余暇活動の様子について、ご家族に説明をするというイメージです。

② 個別リハビリ

特養のリハビリは、「集団」のイメージが強いですが、僕は必要に応じて、何人かのご利用者さんに対し個別リハビリを行っていました。

個別リハビリを行うご利用者さんには移乗や歩行、トイレ動作などのADL訓練、拘縮予防のためのROM訓練を中心に行っていました。

特養は、ご利用者さん90人に対して機能訓練指導員が1人の比率で働いています。当然、1人で90人のご利用者さんに個別リハビリを行うことができません。また、病院のように、誰かからリハビリの指示がある訳でもありません。

だから、ご利用者さんやご家族の要望を聞きながら自分で評価をしてみて、機能・動作的に伸びしろがあり、介助量の軽減が期待できる人、拘縮が進行しやすい人を中心に個別リハビリを行っていました。

実際に個別リハビリを継続してみて、寝たきりに近い生活をしていたご利用者さんが、介護士と一緒にデイルームまで歩いて移動できるようになるなど、ADLレベルでの変化がある人もいますよ。

ADLのレベルがあがると、介護士と一緒に「やったね!」って共感できることが、特養でも、個別リハビリをやってみて良かったように思います。

たぐ
個別リハビリには注意が必要で、集中して、同じご利用者さんのリハビリを行っていると、「なんで私にはやってくれないの?」というクレームが、他のご利用者さんから、結構くるんです(※僕は、このクレームで、心が折れました)

③ 集団リハビリ

特養で行っていた集団リハビリには、2つの方法がありました。1つは4~5人の小集団リハビリ、もう1つは10~15人程度の中集団リハビリです。

1) 小集団リハビリ

小集団リハビリでは、認知症の方を中心に、アクティビティを行っていました。個人的には、特養で1番OTらしい部分を感じられたリハビリだったと思っています。

特養ではリハビリの時間が特に決められていないので、自分でご利用者さんに声をかけて、4~5人の小集団をデイルームで作ります。イメージは下の図のような感じです。

ご利用者さんの参加は、任意です。特養のリハビリは「治療」ではなく、「レクリエーション」のような扱いなので、無理矢理参加させてしまうと「高齢者虐待」になってしまうんです。

人との関わりが好きそうなご利用者さんや僕がデイルームで何か作品を作っているところを興味深く見ているご利用者さんを見つけては、集団に巻き込んでいくといった形です。

この小集団を使って、特養で行われるイベントの準備をしたり、特養という小さなコミュニティでご利用者さん同士の繋がりを作ったりしていく中で、ご利用者さんのキャラクターや能力の評価をしていく過程が、特養のOTっぽく感じて、僕は1番おもしろみを感じられましたね。

例えば、下の写真は、特養で月に1度行われる喫茶イベントで、ご利用者さんやご家族が座るテーブルに、朝顔の飾り付けを作ったものです。この時は、小集団リハビリの補助として、管理栄養士にも参加してもらいました。

2)中集団リハビリ

中集団リハビリでは、集団体操を行っていました。ほとんどのご利用者が車いすユーザーだったので、車いす上で転落の危険がないように、週に1回、上肢や下肢、体幹・頸部を動かし運動を行っていました。棒体操が行いやすかったですね。集団体操を行っていたイメージは、以下の図のようです。

ただ正直に言うと、頻度が週に1回だったのでどれほどの効果があるのか、疑問を持ちながら行っていました。ご利用者さんとしては週に1回、「体操のお兄さんが、体操を教えてくれる」という感覚で喜ばれる人が多かったようですが。

リハビリの専門職としては、OTが自分で集団体操を行うよりも、OTが方法を指導して、介護スタッフなどが週2~3回行った方が効果的だし、介護スタッフへもリハビリの考えを伝達できて、効果的だったのかもしれないと、今となっては思いますね。

④ 看護師・介護士への介護指導

看護師や介護士への介護指導では、移乗・歩行・ポジショニングで助言を求められることが多いです。「○○さん、最近、前よりも歩けないんですが、見てくれますか?」、「▲▲さん、体が大きいので、私でもできる移乗の方法を教えてください」、「褥瘡予防のポジショニングを介護士に教えてもらえませんか?」など。

特養には、ご利用者さんの身体を運動学的に理解できる職種が機能訓練指導員しかいません。だから、他職種からの身体介助に関連したアドバイスについての需要は、機能訓練指導員にとても多く寄せられます。

僕は、特養に入る前から姿勢をみたり、基本動作の介助方法を指導したりすることが好きだったので、介助方法で助けを求められると嬉しく良い意味で忙しかったです。

私は、運動機能や動作を見ることは、苦手だし、まして介助方法を指導するなんてできない…

たぐ
大丈夫です。そんなに難しく考える必要はないんです。

例えば歩行をする時には、片側の下肢に体重をのせるように誘導すると足が出しやすい、移乗をする時には相手と身体を近づけてコンパクトにすると良いなど、基本的な介助方法を知っていれば、十分有益なアドバイスになります。

現場の看護師や介護士は、「運動や身体の専門家に、〝これでいいよ!〟と言ってもらえると安心できる」と言っていました。看護師も、介護士も、リハビリ専門職がいない中で、自分たちで迷いながら介助方法を行っています。

特養に、OTが1人いることで、他職種からは頼れる人ができるでしょうし、ご利用者さんにとっても、有益な介助が行えていけると思うんです。

⑤ 福祉用具のレンタル・購入の評価、相談

特養に入所している時の福祉用具は、基本的にご利用者さんが介護保険を使ってレンタルか、購入をして使います。病院のように、福祉用具(車いすやベッド類を除く)の在庫がないからです。

特に相談が多い福祉用具が、車いすクッションの購入です。ご家族からは、「車いすに何か座布団のような物を敷いた方が、良いのでしょうか?」というのは、よくある質問です。

特養のご利用者さんが何か福祉用具をレンタル・購入する時は、ケアマネジャーに相談し、施設がよく利用している福祉用具利用者からデモをしてみて、レンタル・購入を決定する流れになります。

幸い「全く使い物にならなかった」とクレームをもらったことはありませんでしたが、病院と違い福祉用具が合うか、合わないかの責任をOTが負うことになると思うので、ちょっと責任を感じやすい部分ですね。

ただ病院に比べ、ご利用者さんの身体を評価したり、福祉用具を選ぶためにカタログやインターネットで調査したりする時間が長くとれたので、ご利用者さんやご家族に、商品のメリット・デメリットを十分に説明できるところが特養のいいところです。

ちなみに、福祉用具には嫌でも詳しくなりますよ。笑

⑥ イベントへの参加

今は、どこの特養でもイベントを多く取り入れているんですかね?もし、特養に就職を考えているのなら、僕は、イベントのない特養にはOTとして就職することをおすすめしません。

冒頭で説明したように、特養はご利用者さんにとって生活の場です。言い換えると、ご利用者さんは寝起きする、食べる、人と関わる、余暇を過ごすなどの日常生活が全て特養の建物の中で完結します。

僕は、特養で行われるイベントはご利用者さんの社会参加の機会として、重要な部分を占めていると思います。イベントという普段と違う出来事を待ち望んだり、そのために準備をしたりして、生活の楽しみや活動する機会が生まれると考えるからです。

特養にも、病院と同じように「レクリエーション委員会」のようなイベントを主催する委員会があるので、イベントの主催にはOTが関与しないかもしれません。

ただ、特養のOTは、時間に融通を利かせることができるので、イベントを手伝ったり、ご利用者さんと一緒にイベントに参加したりしやすいです。

たぐ
僕は、喫茶イベントで、飲み物やお茶菓子を配る時に、スーツに、黒いエプロンをつけて、あの有名コーヒーチェーン店風な仮装をして、参加しましたよ。

特養のリハビリに機能的な内容しか求めないなら、別にOTが機能訓練指導員として働く必要がないと思うんですよね。

OTとして大事にする社会参加や楽しみが特養のイベントには含まれており、イベント自体やイベントに向けての準備の中で、ご利用者さんにあった活動を提供できるからOTがいる意味があるんです。

特養で働くOTは、何人くらいいるの?

厚生労働省の調査に基づくと、2014年度時点の特養の事業所数は7249箇所でした。それに対し日本作業療法士協会の調査によると、2014年度の日本作業療法士協会の会員数の49841人中、特養で働くOTは、604人でした。

つまり、全国の特養の8%ではOTが勤務しています。また、日本作業療法士協会の会員のうち1.2%が特養で働いています。

特養で働いているOTって少ない?

たぐ
僕も一緒に働いていたOT(1人)にしか、特養で働くOTに会ったことがありません。

おわりに

特養で働くOTはそもそも人数が少ないですし、特養で働いているOTの情報が検索しても見つからないので内情や働くイメージがつきにくいです。そこで、僕が、OTとして特養で働いた時に感じた経験を紹介しました。

特養で働いた印象としては、

● 小・中集団のリハビリが好き

● 時間に縛られずに働きたい

● 他職種との連携が大事と考えている

● 運動機能面も、ちょっとだけ見られる

● 機能よりも、社会参加がでしょ!と考えている

以上のようなOTに、特養は向いていると思います。

特養の機能訓練指導員は、職場の定着率が良いのか、求人が出まわりにくいそうです(※僕が転職で利用した転職支援サイトの担当者からの情報)。

そのため、特養のOTに興味があるようでしたら、普段から気になった事業所の求人がないかチェックしておくと良いですよ。

もし、訪問や介護施設の分野に興味があるようでしたら、転職支援サイトはマイナビコメディカルがおすすめです。マイナビは、地域リハビリの分野に転職にも力を入れているので、求人数も多いです。

マイナビコメディカルについては、以下の記事にまとめてあるのでよかったら参考にしてみてください。

関連記事:マイナビコメディカルで、作業療法士が転職するメリットとは?

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