「だから日本人は“うつ”になる」をレビュー!海外で臨床経験がある医師が訴える日本人の国民性とは
他人からの評価に翻弄される「日本人」
これは、筆者である程 衛(のり まもる)医師から見た日本人の印象です。
筆者の程 衛医師は、中国やアメリカ、日本で約1万6,000人以上のうつ病患者の治療に関わってきた内科医です。
3ヵ国で働いた経験のある医師からすると、日本人は、職場や家庭など、いつでも他人の評価を気にしすぎた生活をしているので、そのストレスからうつ病になりやすいのだそう。
また、他人の評価を気にしやすいからこそ、からだを壊しても家族や社会のためにがんばることをやめられずに、うつ病の回復にも時間がかかりやすい特徴があるようです。
本書を読んだ時に、そういった日本人の考え方がうつ病の回復を妨げていることを知れて、僕は、とても参考になりました。
というのも、他人の評価を気にせず生きられれば、誰かとコミュニケーションをとったり、仕事をおこなったりする時にもストレスが少なく、うつ病を抱えながら生活しやすいと思えたからです。
本書は、他人の評価を気にしすぎるうつ病の方の参考にぴったりだと思ったので、読んでみた感想を紹介します。
「だから日本人は“うつ”になる」とは?
「だから日本人は“うつ”になる」には、日本人の特徴を踏まえたうつ病の療養の仕方や治療方法が紹介されています。
筆者は、中国やアメリカ、日本でうつ病の治療を経験してきた程 衛(ほど まもる)医師です。
程 医師は、3ヵ国でうつ病の治療をする中で、それぞれの国の特徴的な国民性に気づいたのだそう。
・「アメリカ人」は、自分のことを自分で客観的に評価できる
・「中国人」は、他人の評価よりも自分の考えを尊重する
・「日本人」は、他人からの評価に翻弄されている
簡単に言うと、日本人は、自分で自分の評価ができないことから他人の考えに流されやすいようです。
ここ数年で、日本のうつ病患者が増えているきっかけのひとつにも、他人の評価を気にしすぎたり、他人の考えを尊重しすぎたりなどして、対人関係によるストレスが大きくなっていることが関わっているのかもしれません。
「だから日本人は“うつ”になる」では、そういった日本人がもともと持っている気質に触れながら、うつ病を治療していくために変えていくべき考え方を紹介しています。
本書の見どころは、うつ病になったり、うつ病を長引かせやすかったりする日本人的な考え方に気づけることです。
当たり前のことですが、日本で生活していると、どこにいても周りは日本人ばかり。
対人関係のストレスを減らしたくても、家族や友達、同僚や医師など、他人の評価を気にしてがんばっている人たちがいる環境で生活していたら、自分も同じように努力しなければいけないような考え方にもなるものです。
だからこそ、うつ病で思ったようにも動けないにも関わらず、無理してがんばったり、働いたりすることをやめられないわけですよね。
一般的なうつ病の治療でも、服薬だけではなく、自分の考え方を変えていくことが重要と言われています。
ストレスが溜まりやすい考え方は、気分を落ち込ませたり、不安な気持ちにさせたりもしやすいですから、回復や再発予防のためにも、自分の考え方を変えることが必要になるのでしょう。
もちろん、自分の考え方だけが原因で、うつ病になったり、うつ病を再発したりするわけではありません。
ですが、他人の評価を気にしすぎてストレスを溜めないためには、日本人的ではない新しい考え方に触れてみるのも必要なのではないでしょうか?
医師の考え方が理解できる
「だから日本人は“うつ”になる」の後半では、主にうつ病が回復する過程や服薬治療について紹介されています。
特に良かったところは、ストレスを溜めたからだがうつ病になっていく過程であったり、抗うつ薬が効いていく仕組みを理解できたりしたことです。
うつ病という病気は、からだに異常があるにも関わらず、からだにどういった変化が起きているのかイメージしにくいところが困りもの。
自分の置かれている状況がイメージしにくいから、不安な気持ちになることも多いですよね。
実は、本書を手に取った時の僕もちょうど体調が悪くなってきた時期で、うつ病を発症する前のように働くことができない状況に嫌気がさし、憂うつ感でいっぱいでした。
せっかく体調が良くなっていた矢先にうつ状態へと逆戻りすると、今までの療養生活が無駄だったようにも思え、不安な気持ちにもなりました。
しかし、本書を通してうつ病が回復する過程を知れたことで、それまで感じていた不安感が、療養や治療を続けていくための安心感に変わったのです。
うつ病の治療は、「 A という症状に対して B という薬を出す」という単純なものではありません。
治療と一口に言っても、医師によって、色々な考え方があるでしょう。
ただ、素人からすると、専門的な治療の違いはわかりにくいものです。
肝心なことは、どういった回復段階にあって、どのような治療をおこなっているのか、自分の状況をイメージしたり、医師の考え方を理解できたりすることではないでしょうか。
人によっては、通院している精神科の主治医から、治療の方針について十分な説明を受けられていない現状もあると聞きます。
主治医から十分な説明を受けられず、うつ病の症状が変わらないもどかしさを感じているような場合には、ひとりの医師の考え方として、本書がとても参考になるでしょう。
動きすぎる人におすすめ!
また本書を読むことで、あらためて「休養」の重要性について理解することができました。
うつ病の治療の基本は、十分な「睡眠」や「休養」と言われますが、からだが動けるようになってくると、ついつい家事や仕事などをがんばりすぎて、気づくと調子を崩しているということも多いですよね。
でも、からだが動けるようになったからこそ、エネルギーの使いすぎには注意が必要です。
というのも、程 衛(のり まもる)医師によると、うつ病は次のような過程で発症する場合が多いようです。
うつ病になったあとでも、休息をとらずに無理をすれば、発症した時と同じようなうつ状態に悩まされることもあるでしょう。
エネルギーを消耗しているかどうかの判断では、自分でも難しいですが、少なくとも僕の場合は、うつ状態になる前を振り返ってみると、無理をして動き過ぎてしまっている時が多いです。
動けるようになると、当事者としては「もう大丈夫」と思ってしまうことも多いですよね。
「だから日本人は“うつ”になる」では、「休養」についても筋道を立てて説明してくれているので、家事をしたり、働いたりする中で、活動と休息のバランスをとる必要性が理解しやすく、動きすぎてうつ状態をくり返しやすい方におすすめです。
ページ数は、全部で208ページになります。ひとつの目安ですが、僕の場合は、4~5時間ほどで読みことができました。
普段から、本やインターネットニュース、ブログなど、活字を読む習慣がある方なら無理なく読める文量です。
うつ病の療養をする中で、自分の考え方を変える一冊になると思うので、ぜひ一度読んでみてください。