【書評】「日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ」就労支援のプロ考案の働き方とは
職場のマネージャーとして、障がい者をはじめて雇用することになれば、さまざまな考えごとがつきもの。
いままで福祉の仕事をしたり、障がい者と一緒に生活したりしたことがなければ、どのように接したら良いのか、わからないのも当然かもしれません。
実は、僕も障がい者と一緒に仕事をしたいと考えているのですが、自分の人生ではじめての経験であるため、どのように接しながら仕事をすれば良いのか見当もつかなかったんです。
それで、“わからないなら経験者に聞いてみよう!”と思い、先日、「日本一元気な現場に学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ」という本を読みました。
この本には、現場で障がい者と一緒に働いている筆者の経験が紹介されており、仕事をする上で必要なマインドや配慮など、マネージャーが考えておくべきことが数多く解説されていました。
特に、障がい者を雇用する上でのマインドは、マネージャーなら誰もが知っておきたいもの。
マネージャーとして、他のスタッフと同じように、障がいを持ったスタッフにも仕事を通して成長してもらいたいと考えているなら、「日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ」はとても参考になるでしょう。
日本一元気な現場「カムラック」とは?
「日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ」のタイトルである“日本一元気な現場”とは、福岡県にある「(株)カムラック」のこと。
「カムラック」の会社の役割は、就労継続支援A型事業所として、一般企業での就労が難しい障がい者と雇用契約を結び、障がい者の就労を支援することです。
実は、障がい者の就労と一口に言ってもさまざまな働き方があるのです。
障がい者にはどのような働き方があるのか知っておくと、一般企業における障がい者雇用についての理解もしやすいと思うので、本の内容を紹介する前に障がい者の働き方をまとめました。
一般企業 | 一般企業での就労(障がい者雇用を含む) |
就労継続支援A型事業所 (雇用型) |
障がい者が事業所と雇用契約を結び、仕事をしながら一般就労への移行を目指す施設。 |
就労継続支援B型事業所 (非雇用型) |
雇用契約を結ぶことが困難な障がい者を対象に、仕事をしながら就労継続支援A型や一般就労を目指す施設。 |
就労移行支援事業所 | 一般就労に向けたトレーニング、相談などをする施設 |
障がい者の雇用と一口に言っても、さまざまな働き方があります。
そして、この「日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ」は、就労支援A型事業「(株)カムラック」の代表を務める賀村 研(かむら けん)さんが執筆しました。
積極的障がい者雇用のススメとは?
「日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ」には、著者の賀村さんが、障がい者の就労支援を通して積み上げた障がい者雇用のノウハウが詰まっています。
例えば、コチラ。
就労支援では、まず徹底的に働く上で必要なビジネスマインドを伝えていきます。「誰かがしてくれる」ではなく、「自分がしなければいけない」という責任感を持つこと。常に、お客様視点に立って仕事をすること。それこそが重要なのだと、仕事の意味を理解していくのです。
引用 賀村 研(2016):日本一元気な現場から学ぶ積極的障がい者雇用のススメ.masterpeacegood.book編集部
賀村さんは就労支援の中で、障がい者だからと言って特別視するのではなく、ひとりのビジネスマンとして職場に迎えいれることができるようなマインドを重視しています。
「積極的障がい者雇用のススメ」の主な目的は、障がい者の働き方を尊重できるような一般企業のマネージャーを増やしていくこと。
ですから、自分の部署で障がい者を雇用することになったんだけれど、どのような対応や配慮をしていいかわからない。
そんなマネージャーの不安や悩みを解決してくれる一冊です。
「無知」がスタッフの仕事や成長する機会を失わせる
実は、僕も「日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ」を読むまで、障がい者のことを支援する対象としか見ていませんでした。
そのため、自分が障がい者と一緒に仕事をしようと考えた時には、「どういったサポートが必要か?」「適切な配慮ができるか?」ばかりに注意を払っていたんです。
でも、この本を読むことで、健常者と同じように、障がい者も仕事のやりがいや仕事を通した成長を望んでいることに気づかされました。
恥ずかしい話ですが、いままでは障がいに対する配慮が必要だと認識しているだ一方で、ひとりのビジネスマンとして接しようとする意識に欠けていたのです。
また、こういった健常者によって無意識におこなわれる差別が、障がい者の仕事や成長の機会を奪っているとも思いました。
もちろん、障がいがあるからこそ必要になる配慮も多いでしょう。人によっては、対人的なストレスを強く感じる人もいますし、精神的に疲れやすい人もいます。
車いすを利用しているスタッフがいれば社内のレイアウトを考える必要がありますし、通勤時間や手段も変わってくるでしょう。
だからと言って、能力があるにも関わらず、障がい者というだけで仕事の難易度や成果を低く見積もられたら、誰だってやる気がなくなるでしょうし、本人の成長にもつながらないはず。
障がいに配慮しながらも、職場の戦力として一緒に働けるようになり、仕事と成長の機会を作れるようになることが「積極的障がい者雇用のススメ」なのだと思います。
まずは、マネージャーが障がい者を特別視する考えを捨て、誰もが活躍できる職場づくりを目指す必要があるのではないでしょうか。