「心に折り合いをつけてうまいことやる習慣」をレビュー!89歳の現役精神科医のゆるい生き方とは?
まじめに考えすぎて、人生に疲れてしまうことってありますよね。
「もっと気楽に考えることができれば…」
一生懸命な自分に疲れて、自分を変えたいと思うこともあるでしょう。
実は僕自身も頭が硬く、何事も生真面目に考えすぎるところがあったので、仕事や人間関係でストレスを抱えやすいタイプでした。
ストレスを上手に受け流せたらどんなに楽か、もちろん普段からよく考えたものです。
先日、「心に折り合いをつけて うまいことやる習慣」というタイトルに惹かれ、89歳の現役精神科医が書かれた本を読みました。
この本は、約70年にわたって人の心を支えてきた女性医師が、自身の経験から、人生をゆる~く淡々と生きる考え方について持論を語った本です。
人生に疲れた人の「悟りの書」とでも言いましょうか?
実際に読んでみると肩の重荷が少なくなり、気持ちがとても軽くなりました。
この本で紹介されていた人生を「うまいことやる」ための考え方がとても参考になったので、読んでみた感想を紹介します。
89歳の現役精神科医が執筆
著者は、89歳の現役精神科医である中村 恒子(なかむら つねこ)医師。
ご本人によると148㎝、40㎏足らずの小柄な体型らしく、本の表紙のイラストのイメージもあって、僕は身勝手ながら「可愛らしいおばあちゃん先生なのかな?」と親しみを感じています。
この本では、精神科医としての約70年の経験をもとに、毎日が楽に生きられる考え方を紹介しています。
中村医師の特徴は、患者との対話に多くの時間をかけてきたところです。
そのためか、本書は先生の学問的な知識よりも、人間味に触れられる本と言えるでしょう。
ストレスの少ない生き方や考え方については、多くの精神科医が著書を執筆されていますが、他の医師が書かれた本との大きな違いは、とにかくゆる~いこと。
例えば、
「こうあらねばならない」と思っていることのほとんどは、「そんなことないんちゃう?」と軽~く考えてみてください。
といった具合に、3つの時代を生きてきたおばあちゃん先生から、コツコツ、淡々と生きるゆる~い考え方を教えてもらえます。
たいていのことは「これで上々」
毎日がつらいなあと思うんであれば、何かを足していくのではなく、「これで上々やろ」と、納得していく道もあるんやないでしょうか。
自分の人生に色々なことを求めすぎて、かえって自分を不幸にしてしまうということも多いです。
物欲も成長意欲も、人間の欲求はひたすら湧いてきます。
ですが、その欲求を満たそうとがんばり続けると、自分の限界を越えてしまうということもあるでしょう。
「これで上々やろ」
自分の人生に満足感や充実感を感じるには、ある程度の段階になったら、自分の欲求を抑えていくことも必要なのかもしれません。
自分が成長するために「挑戦」することと、自分の欲求を満たすことに「執着」し続けることには、大きな違いがありそうです。
人間関係に執着しない
そもそも、人間関係は「水物」。
ほんのちょっとしたことでひっついたり離れたりするもんです。人間は己の利のあるほうへすぐ流れるし、時間や距離が離れて会わなくなると、縁もどんどん薄くなる。それが人間関係というものです。
僕は、自分が楽しかった頃の人間関係を思い出しては、寂しさや孤独を感じて、虚しくなる時があります。
今は自宅で仕事をしているのですが、時々、会社で働いていた頃の慕ってくる後輩や頼ってくれる同僚たちのことを思い出して、「あの頃は良かったな」って寂しくなることがあるんですよね。
自分のことを認めてくれていた会社の人間関係は心地良かったので、働く環境が変わった今でも、その頃の人間関係を求めているところがあるのかもしれません。
そして、やっかいなことに、昔の後輩や同僚が自分の知らない環境で新しい家族や友人、仲間など、新たな人間関係をつくっている様子を見ても、素直に喜べないところもあるんです。
というのも、後輩や同僚に自分以外の頼りにできる人ができるほど、自分はどんどん頼りにされない存在になっていくので、距離が離れていくことが寂しいのです。
ただ、中村医師はこうも言っています。
情っていうのは、一見いいもののように見えますけど、それは見方を変えると他人さんへの執着であって、こちらの身勝手さの証でもあるんですわ。
どうやら、「相手のためを思って」優しくしたり助けたりすることは、相手の関心を自分に向けたいだけということもあるようです。
中村医師の言葉を聞いて、僕の場合はまさにこれだと思いました。
つまり、会社では後輩や同僚のことを思ってアドバイスをしたり、仕事のサポートをしたりしてきましたが、それは自分が心地良く感じる人間関係に執着していただけだったのです。
だから、自分が頼りにされなくなったことがもどかしく感じて、後輩や同僚が新たな人間関係を作れても、素直に喜べないでいたのでしょう。
「変わっていくものに、いつまでも執着しない」
この折り合いのつけ方が、淡々と生きていく秘訣なのかもしれません。
人は、身勝手な生きもの
冷静になって考えたときに、「え?なんでや?」と思ったんであれば、それは真に受ける必要はありません。
「なんか意地悪したくなる事情があったんやろうなあ」「イライラして八つ当たりしてはっただけなんやろ」「なんや気の毒な人やなあ」くらいで解釈しておきましょう。
実際、人が人を注意したり、怒ったりするときなんていうのは、だいたい身勝手なんです。
これは、いい考え方だと思いました。
どうも僕には、他人の発した言葉の意図を深く考えすぎてしまうところがあるようです。
「気にさわったかな?」
「嫌われたかな?」
「バカだと思われたかな?」
といった具合に、他人の批判や指摘、あるいは何食わぬ一言を熟考して、落ち込んだり不安になったりすることがよくあります。
でも、たしかに他人が発する言葉って、振り返った時に「なんでや?!」と思えることのほうが多いんですよね。
その証拠に、時間が経つと相手が全く逆のことを言っていたり、自分以外の人には言わなかったりなどする様子を見ては、理不尽さを感じることも多いです。
自分が理不尽に思えた他人の言葉には、大した意味などないのでしょう。
理不尽な言葉に振り回されないためには、他人の言葉を深読みしない技術も必要なのかもしれません。
「他人の注意や怒りは、だいたい身勝手」
これを覚えておく、人間関係を怖がらず、うまいことやれるのではないでしょうか。
今を大事に、淡々と生きる
このほかにも、中村医師は30個以上の人生をうまいことやれる考え方について紹介してくれています。
精神科医の著書ですが、「心に折り合いをつけてうまいことやる習慣」には、脳科学や心理学的な解説はなく、いわゆる意識高い系のハウツーも出てきません。
ですから、そういったことを知りたい方には不向きな本です。
この本は、毎日をコツコツ、淡々と生きながら人生の「今」を大事にできるようになるための本です。
・人生に疲れた
・ホッと一息つきたい
・物事を楽に考えたい
そういった気持ちで悩んでいるのなら、一度「おばあちゃん先生」のゆる~い考え方を聞いてみてはいかがでしょうか。