「当事者が選ぶうつ病の人におすすめの本」病気の理解から社会復帰に役立つ10冊
うつ病になったら、どうすれば良いのか?
精神科の診察は短いですし、主治医から説明を受けてもわからないことが多いものです。
僕は自分自身もうつ病になり、3年間の療養を経て仕事復帰をしましたが、病気の理解や社会復帰をするのに色々な本がとても役立ちました。
ここでは、うつ病の当事者におすすめの本を紹介します。
目次
うつ病の症状や治療法を知りたい
患者のための最新医学 うつ病
この本は「患者のための最新医学シリーズ」のひとつで、うつ病の症状や回復の仕方・治療方法などについて理解が深まる良書です。
著者は東邦大学名誉教授の坪井康次(つぼい こうじ)医師で、専門的な内容を一般的な言葉を用いながら解説しています。
例えば、うつ病になると「精神運動抑制」という意欲が減退する症状が出ることによって行動力や決断力が低下するなど。
当事者からすると、やる気が湧かなかったり、頭が働きにくかったりする原因を知ることができ、自分のからだの状況を正しく理解できるので療養に専念しやすくなります。
また、説明にはイラストや表をふんだんに使われているため、読書が苦手な方も読みやすいです。
うつ病について正確な知識を身につけながら療養したい方は、一読することをおすすめします。
うつ病 こんな症状があったら要注意 /高橋書店/坪井康次 | ||||
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希死念慮に悩んでいる
となりの希死念慮さん
「となりの希死念慮さん」は死にたい気持ちを素直に受け入れ、希死念慮との上手い付き合い方を紹介した本です。
著者は、自分自身もうつ病を経験した“ひろのはこ”さん。
ほかにも「完治の幻想を捨てきれない病」「私とクルシイ」などの電子書籍を出版しており、オリジナルのゆるキャラを使って情景を描きながら、病気の不安や悩みを乗り越えるヒントを伝えています。
「となりの希死念慮さん」はAmazonのkindleで読むことができ、全ページフルカラーに加えてイラストが多いのでさくさく読み進められます。
Amazonの公式ページでは試し読みができるので、内容が気になる方はチェックしてみると良いでしょう。
死にたい気持ちになる自分がダメな人間に思え、自己否定的な思考に悩む方におすすめの一冊です。
ゆっくり休めない、療養に集中できない
頑張らなければ、病気は治る
こちらは、うつ病と診断されたけれども療養に専念できないという“がんばり屋さん”におすすめの本です。
著者は精神科医の樺沢 紫苑(かばさわ しおん)医師。
樺沢医師は心理学や脳科学の知見を踏まえて数多くの書籍を執筆されており、フェイスブックやYouTubeでも情報発信しています。
「頑張らなければ、病気は治る」は病気の回復を焦ったり、病気になった自分を受けいれられなかったりする方に向けて、“病気は頑張らないほうが治る”根拠を脳科学の視点から解説しているのが特徴です。
例えば、病気を早く治そう!と熱心になるほどストレスホルモンが分泌され、からだのなかでは様々な害が引き起こされます。
そのため、病気を治すにはゆっくりと時間をかけようとする心構えが大切と言います。
うつ病で療養生活が長くなり、気持ちの焦りからかえって病気の回復や仕事復帰が上手くいかない方は、落ち着いた気分で毎日を過ごすことができるようになるので、ぜひ一読してみてください。
頑張らなければ、病気は治る /あさ出版/樺沢紫苑 | ||||
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心のざわざわ・イライラを消すがんばりすぎない休み方
「がんばりすぎない休み方」は、日常にマインドフルネスを取り入れ、からだのコンディションを整えながら生活するための実践書です。
著者は、一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事の荻野淳也(おぎの じゅんや)さんです。
マインドフルネスとは、“今この瞬間”に意識を向けて状態のこと。「がんばりすぎない休み方」では、過去の出来事を悩んだり、将来のことを不安に思ったりする時間を減らして、“今この瞬間”に集中するためのアイディアが64コ紹介されています。
アイディアは、普段の呼吸から街中の歩き方まで、今日から取り入れやすい具体的なものばかりです。
いつも頭のなかを色々な考えがよぎっており、ついつい体に力が入ってしまいがちな人。
このような“まじめで何事にも一生懸命な人”が、疲れやストレスを上手にコントロールしながら生活できるようになる一冊です。
心のざわざわ・イライラを消すがんばりすぎない休み方 すき間時間で始めるマインドフルネス /文響社/荻野淳也 | ||||
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考え方を変えたい
いやな気分よ、さようなら【※活字が好きな人向け】
「いやな気分よ、さようなら」は認知行動療法について書かれた本で、マイナス思考に陥った状況から自力で気持ちを立て直すための考え方や方法を紹介した一冊です。
著者は、スタンフォード大学(アメリカ)の准名誉教授であり、認知行動療法のパイオニアとしても知られる精神科医のデビッド・D・バーンズ医師です。
例えば、他人から仕事のやり方を批判されると自分がダメな人間に思えてしまったり、100%の結果が出せないものは全て失敗に思えてしまったりといったように、誰でもネガティブな感情に陥る時には歪んだ思考をしているものです。
「いやな気分よ、さようなら」を読むと、このようなネガティブ感情に陥る時の思考パターンに気づくができ、落ち込んだり不安な気持ちになったりした時に歪んだ考え方を自分で修正できるようになります。
この本は、バーンズ医師が担当患者の自主トレーニング用に作られたということもあり、ほかの認知行動療法の本に比べると圧倒的にボリュームが多いです。
その分、認知行動療法の考え方や方法をしっかり学ぶことができ、うつ病の人にとっては、憂うつ感や不安感から立ち直りやすくなるための「バイブル」になるでしょう。
いやな気分よ、さようなら 自分で学ぶ「抑うつ」克服法 コンパクト版/星和書店/デ-ヴィド・D.バ-ンズ | ||||
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マンガでやさしくわかる認知行動療法【※マンガが好きな人向け】
こちらの本は、認知行動療法の考え方や方法をマンガで紹介しています。
著者は、東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター長で心理療法家の玉井 仁さんです。
近年、うつ病の治療方法として認知行動療法が注目されていますが、治療を受けられる専門機関は限られていますし、自分で学ぶには難解な書籍が多いです。
「マンガでやさしくわかる認知行動療法」は、認知行動療法の考え方や方法を初心者向けに優しく解説しています。
全237ページのうち約100ページがマンガで構成されており、落ち込んだり不安な気持ちになったりした時の思考の問題点や対処法がわかりやすく解説されています。
「うつ病をきっかけに自分の考え方を見直す必要を感じるのだけれど、難しい本には抵抗がある…」という方にぴったりの一冊です。
マンガでやさしくわかる認知行動療法 /日本能率協会マネジメントセンタ-/玉井仁 | ||||
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生き方を見直したい
敏感にもほどがある
『「敏感」にもほどがある』は、HSP(敏感気質)の人の日常生活を描いた本で、著者は自身もHSPである高橋 敦さんです。
HSPとは生まれつき刺激に敏感な気質を持った人のこと。
高橋さんは、本書のなかでHSPの方が遭遇しやすい問題やトラブルを紹介しながら、HSPの特性を解説しています。
HSPは、人目が気になったり他人に気遣いをしすぎたりするのも特徴です。
もちろん、うつ病の人が必ずしもHSPというわけではありませんが、なかには感受性が高いためにストレスを感じやすいタイプの人もいるかもしれません。
もしもHSPであった場合には、この本を読むことで自分の気質に合った職場を選んだり、人付き合いをしたりして、いまの生きづらさを解消しやすくなるでしょう。
「敏感」にもほどがある /きこ書房/高橋敦 | ||||
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内向型を強みにする
人と一緒にいるよりも一人の時間が好き、行動する前に熟考するタイプ、自分のペースを乱されるのが苦手など。
「内向型を強みにする」は、自分のなかの世界を大切にする「内向型人間」の特徴や生き方のヒントを紹介した本です。
著者は、アメリカで活動する心理療法士であり、内向型研究の第一人者でもあるマーティ・O・レイニーさんです。
マーティさんによると、世の中の大半は外向型人間であり、少数派の内向型人間はさまざまな場面で生きづらさを感じると言います。
例えば、大人数の飲み会に参加させられたり、自己主張できないことを非難されたりといったように、少数派の内向型人間は外向型に合わせる努力を強いられる場面も多いです。
「内向型を強みにする」は、外向型社会のなかで内向型人間がどのようにすれば生きやすくなるかを解説しています。
“まわりの人のペースに合わせて生きることがストレスで仕方がない”という人は、もしかするとまわりの多くの外向型とは違う内向型人間かも。
ありのままの自分で生きたいと考えるなら、こちらの本は必見です。
内向型を強みにする おとなしい人が活躍するためのガイド /パンロ-リング/マ-ティ・オルセン・レイニ- | ||||
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シュフ。~ボクは男らしい専業「主夫」になる~
うつ病で仕事ができなくなり、“働けない自分には価値がない”“仕事だけに価値を置く人生観を変えたい”と思うようになった方には、『「シュフ。」~ボクは男らしい「主夫」になる~』がおすすめです。
こちらの本の著者は、漫画家やライターとして活動するムーチョ(宮内 崇敏:みやうち たかとし)さんです。
この本は、ムーチョさんが仕事で体調を崩し、約4年にわたって専業主夫として生活された時の様子や生き方を紹介する本です。
当然ですが、仕事をして収入を得なければ生活していくことはできません。
しかしながら、「自分が家族を支えなければならない」「就職するなら正社員として働くべき」といった自分のなかの偏った価値観によって苦しんでいる方も多いのではないでしょうか?
『「シュフ。」~ボクは男らしい「主夫」になる~』は、自分の持つ価値観が数ある生き方のひとつにすぎないと気づかせてくれる一冊です。
仕事や収入ばかりにこだわりすぎてかえって空回りしやすい方は、自分の人生で大切にしたい本当の価値あるものに気づけるかもしれません。
まとめ
以上、うつ病の人が病気を理解したり社会復帰を目指したりする時に役立つおすすめの本を紹介しました。
もちろん、一冊の本を読んだからと言って抱えている問題が全て解決する訳ではありませんが、新たな知見を身につけることができると人間的に成長しやすいものです。
うつ病の療養生活を、これからの人生に向けた学びの機会にしてみてはいかがでしょうか。