為末大著「逃げる自由」をレビュー!トップアスリートに学ぶストレスとの付き合い方とは?
不器用な人ほど、仕事やプライベートで生きづらさを感じやすいもの。
世渡り上手な人が羨ましく見えますが、プライドも高いあるから、自分の弱さを出すのも簡単ではないでしょう。
楽に生きるには、自分の生き方を変える必要があるのかもしれません。
僕も、ストレスを受け流すのが苦手で、つらい思いをすることが多かったです。
他人に弱さを見せたり、物事から逃げたりするのが下手で、自分で抱え込んだストレスに押しつぶされることもよくありました。
「逃げる自由」を読んだきっかけは、ストレスを上手に受け流す方法を知って、楽に生きるための考え方を身につけたかったからです。
この本では、特に人間関係のストレスを受け流す方法が解説され、毎日を生きやすくなる考え方について教えてくれる本でした。
僕のように、人間関係でストレスを抱えやすい方には参考になると思ったので、本の紹介と読んでみた感想を書いていきます。
「逃げる自由」とは?
この本の著者は、為末 大(ためすえ だい)さんです。
為末さんは、2001年・2005年の世界陸上「男子400メートルハードル」の銅メダリスト。
言わずと知れたトップアスリートです。
現在は、(株)侍を経営するほか、スポーツ、教育、研究などに関する活動を幅広くおこなっています。
「逃げる自由」は、為末さんが一般の方から相談を受けた質問について回答しながら、人生を生きやすくなるための為末さん自身の考え方を紹介した本です。
相談内容としては、生きづらさや人間関係のストレスに悩むものばかり。
例えば
「頑張りすぎず自分らしく生きる」ってどういう意味でしょう
他人の期待に応えようと思うあまり疲れ果ててしまいます
などがあり、為末さんは、誰もが抱えやすい質問に、アスリートとしての経験やスポーツ心理学などの観点から自身の考えを伝えてくれています。
本のタイトルにある「逃げる自由」とは、現実逃避を勧めるものではありません。
「逃げる」とは、「物事に対する解釈を変えられるようになる」ことです。
「逃げる自由」を読むと、自分の考え方を変えながらストレスを上手に受け流せるようになり、人生を楽に生きられる考え方ができるようになるでしょう。
自分に必要なことだけ頑張る
「頑張らなくてもいいはずのことを頑張っている」というのはつまり、自分にとって重要なこととそうでないことの餞別ができていないということです。
為末さんは、30代になったことをきっかけに、アスリートとしての自分の練習方法や努力のポイントを変えたんだそうです。
理由は、20代の頃とは疲労のたまり方やケガのしやすさなどが変わり、以前と同じような頑張りができなくなったから。
こういった自分の変化によって、今までできていたことができなくなってしまう経験は、アスリートに限らず誰にでもあるのではないでしょうか?
年齢を重ねたり、価値観が変わったり、ライフスタイルが変わったり、病気をしたりなど。
生きていれば、自分の状況や環境は変わっていくものです。為末さんは、今までと自分の状況や環境が変わった時には、「頑張るポイントを絞る」ことが重要だと言います。
たしかに、今の自分には合わない頑張り方をしてしまっていることがあるかもしれません。
一度でも「上手くいった経験」があると、いつまでもその方法で固執してしまっていることもあります。
ただ、自分の状況や環境が変わっているなら、上手くいっていた頃と同じ頑張り方をしていても上手くはいかないはず。
楽に生きていくには、自分には合わなくなった古い考え方を捨てて、今の自分の生き方にアップデートしていく必要があるのでしょう。
自分にできることをできる分だけやればいい
世の中は不条理で不公平で、生まれてすぐ死んでしまう子もいれば、庭から石油が出て大金持ちになる人もいる。善い行いをしながら病気になる人も、悪い行いをしながら健康に生きる人もいる。
そんなものだよな、さてそのうえで何をしようか。どう生きていこうか。
あるがままを受けいれたあとの行動には恨みつらみがなく、ひらすらに淡々とした世界が広がっているように思う。
僕は、この言葉を見た時に、拍子抜けしたように気持ちが楽になりました。
というのも、僕は何かについて他人と比較することがあって、上手くいっている人を見ると妬む傾向が強かったからです。
僕は、いわゆる「まじめ」なタイプの人間で、ギャンブルも酒もたばこもやりません。
ネットでカミングアウトをするのは少し抵抗がありますが、浮気・不倫・大人の男性が通うお店などにも、今までの人生では縁がないのです。
そういった自分の生真面目さからか、お金や嗜好品、異性関係にルーズな人を見ると、不快な気持ちになることもよくあったんです。
悲しい発想ですが、自分に関係がなくてもルーズな人が許せませんでした。
「不条理、不公平。世の中とはそんなもんだ。で、どうする?」
為末さんの言葉は、自分の偏った価値観により、他人を見た時に怒りを覚えてしまう僕にとっては直球で。
自分の小ささを実感するとともに、不平不満を言うよりも、自分にできることに集中する必要性に気づかされました。
失っても、大事なものはなくならない
どん底を経験した人が自信にあふれて見えるのは、復活したからではなく、すべて失っても自分は大丈夫という感覚を持っているからだろう。
さらに言えば、本当に大事なものは決してなくならないという確信のようなものがあるようにも思う。
失うことが怖いと、新しいことに挑戦したり自分の現状を変えたりすることができません。
「いまあるものを失ってしまったらどうしよう…」という気持ちは、言い換えてみたら恐怖に支配されている状況と言えるでしょう。
恐怖に支配されていると、自分の気持ちを押し殺してやりたくもない仕事をおこなったり、嫌いな相手でもご機嫌をとろうと媚びへつらったりするものです。
僕はうつ病になって仕事や地位、人間関係など、多くのものを失いました。
一度多くのものを失ってみると、気づいたことが2つあります。
・たいていのことは、どうにかなること
・日常の当たり前の中にも幸せがたくさんあること
「人生に開き直る」とでも言いましょうか?為末さんが言うように、多くのものを失ってみると、自分にとって大事なものだけが残ります。
もちろん失った直後の気持ちは、とてもしんどいです。
仕事、地位、恋人、友人など。失うことの恐怖心に縛られ、それらに依存し続けて生きていられなければ、毎日が生きづらいし、何をしても気持ちが満たされないでしょう。
自分の人生にとって何が必要で、何を大事にしたいか。
自分が楽に生きていくためには、物事の解釈を変えることも重要です。
自分に与えられた「逃げる自由」を上手く使って、人生を楽に生きていきたいものです。