「辛くても頑張る」ができない時もある!苦しい時間を乗り越えやすくする対処法とは?
辛くても頑張らなければ…とはいうもの。
どうしても頑張る気持ちになれない時もありますよね。
頭のなかでは「頑張らなきゃ」「耐えなきゃ」「我慢しなきゃ」と思っていても、気持ちがついてこない。
そうかといって、目の前の問題を放り出すわけにはいかないし。
にっちもさっちもいかなくなってしまった時は、どうすれば良いのでしょうか?
ここでは、「辛くても頑張る」ができなくなる原因を説明するとともに、苦しい時間を乗り越えやすくする対処法について、お伝えします。
目次
「辛くても頑張る」ができない原因
「辛くても頑張る」ができない原因は、心のエネルギーがなくなっているからです。
実は、身体エネルギーと同じように、心にもエネルギーがあると言われています。
臨床心理学者であり、京都大学の(故)河合隼雄名誉教授は、著書「イメージの心理学」のなかで、心のエネルギーの存在を次のように説明しています。
人間にとって、身体的なエネルギーのみではなく、心的エネルギーの存在を考えると、多くの現象が理解できる。同じように椅子に一時間坐っていても、「心を使って」いるときは疲労の度合いが強い。身体的には何も支障がなくとも、何もする気がしないときは、心的エネルギーが低下していると考えられる。
(引用 河合隼雄(1991):イメージの心理学.青土社)
物事を頑張ろうとする時に、その意欲ややる気の源となるのが心のエネルギーです。
そのため、心のエネルギーが残っていれば、つらいことや困難なことがあっても、何とか乗り越えられます。
逆に、心のエネルギーが少なくなったり、なくなったりすると、物事を乗り越えるための意欲ややる気が湧かなくなってしまうのです。
苦しい時間を乗り越えやすくするには?
「辛くても頑張る」ができないのは心のエネルギーがなくなっているから、とわかったところで、目の前の問題を放り出すわけにもいきませんよね。
じっとしているうちに問題が解決すれば助かりますが、そう簡単にはいかないケースもあります。
そうして場合、苦しい時間を乗り越えるには、どうすれば良いのか?
ここからは、「辛くても頑張る」ができない時の対処法を紹介します。
時間制限を設ける
1週間だけ、1日だけ、半日だけといったように。
時間制限を設けて、自分を追い込む状況を作ると、そこを目標に、もう少しだけ問題解決に取り組んでみる気持ちになれます。
精神科医で、作家としても活動する樺沢紫苑医師によれば、人の体は、ピンチに陥ると、危機を回避するために「ノルアドレナリン」や「アドレナリン」というホルモンを分泌すると言います。
・ノルアドレナリンは、「闘争と逃走のホルモン」とも呼ばれています。闘うか、逃げるか。そうした選択と行動が必要とされる危機的な状況で分泌されるのです。ノルアドレナリンの分泌は、あまりに長期的に及ぶと「うつ病」になります。
・アドレナリンはピンチや危機を乗り越えるために重要な物質である反面、アドレナリンが分泌されすぎると心臓がバクバクして極度な緊張に陥ったり、冷静さを失ったりと、よくないことも起こってきます。
(引用 樺沢 紫苑(2016):脳を最適化すれば能力は2倍になる.文響社)
つまり、時間制限を設けることで、あえて自分をピンチに追い込めば、意識的に危機を回避するためのホルモンが分泌できるのです。
ただし、「ノルアドレナリン」や「アドレナリン」は、体を一時的に闘争状態にするホルモンであるため、長く出し続けていると、心身にさまざまな不調をもたらします。
言い換えれば、人の体は、ずっと頑張り続けられるようには作られていない、ということです。
ですから、どうしても頑張らなければいけない時は、時間制限内だけ問題解決に取り組むようにして、できるだけ早く心身を休めるようにしましょう。
目標を下げる
辛くても頑張る気持ちになる人は、中途半端ではやる意味がないとか、他人に迷惑をかけてはいけないといった気持ちになりやすく、物事を何でもきっちりこなそうとするところがあります。
しかしながら、そうした完璧思考により問題解決を先延ばしにすることで、課題を遂行するハードルが高くなってしまうことも。
例えば、仕事の書類を上司に提出するとしましょう。
この時、完璧思考の人は、「上司に批判を受けないように完璧な内容に仕上げよう」と考えがちです。
もちろん、いつも自分が納得のいく内容の書類を作成できれば良いのですが…、それができなかったとなると、書類の提出自体を躊躇したくなったり、出勤する気持ちが失せたりするものです。
このような場合は、「まずは重要なポイントだけ書き出す」とか、「とりあえず提出できる最低限の形に書類を作成する」など、課題の目標設定を下げてみると、行動を起こしやすくなります。
やるまではできるか不安だったけれど、やりはじめたら思っていたよりもすんなりできたというのは、よくあることです。
また、適度な難易度の目標はモチベーションを高めますが、難しすぎる目標はモチベーションを下げます。
重要なのは、自分が手をつける気持ちになれるまで、どれだけ目標を下げられるかということです。
きっちりやらなければならないという完璧思考により苦しんだ時には、目の前にある課題の目標設定を、できる限り下げましょう。
メリットがあるか考える
「人生に無駄なことはない」と、よく言われますよね。
たしかに、問題の渦中にいる時は辛く感じられても、あとから振り返ってみたら「あの経験があったから今がある」と思えることもあるでしょう。
しかしながら、実際には、あとから振り返っても全く自分の糧にならないことだってあるものです。
抱えている問題を、辛くても頑張ることでメリットがあるならまだしも。
そうでないのなら、問題を投げ出すというのも、解決策のひとつです。
辛い気持ちを我慢して、いつまでも頑張ろうとすれば、心身の調子を崩してしまうこともあります。
厚生労働省の調査によれば、年々、こころの病気を発症する患者数が増えています。
(参考 厚生労働省|平成30年版 厚生労働白書 本文掲載図表1-2-9 こころの病気の患者数の状況)
心身の調子を崩せば、目の前の問題を解決できないだけではなく、日常生活そのものを楽しめなくなってしまいます。
そうした現状を踏まえると、自分にメリットのない問題を投げ出すというのは、「人生を楽しく生きるため」の戦略と言えるのではないでしょうか。
「辛くても頑張る」ができない時は、戦略を変える
「辛くても頑張る」ができない時は、心のエネルギーが不足しており、意欲が湧きにくいです。
気持ちを奮起させるだけでは、頑張れるようにはなりません。
このような場合は、時間制限を設けたり目標を下げたりと、戦略を変えることが必要です。
また、我慢しながら頑張ることにメリットがないなら、自分のからだのために問題解決を放り出すのもひとつの生き方です。
自分が次の行動に移しやすい戦略を選んで、できるだけ早く苦しい時間を切り抜けるようにしましょう。