うつ病の治療を続けながら仕事復帰する時に注意した8つのこと
うつ病を発症して休職をしたのは良かったものの、本当に働いていけるのか?仕事復帰を考えると自信がなくなったり、不安な気持ちになったりしますよね。
僕の場合は、約1年間療養していたのですが、仕事復帰する時には何もかもが手探りの状態でした。それというのも、仕事復帰については主治医からもぐらい的なアドバイスをもらうことができなかったからです。
もしかしたら、当時の僕と同じように、あなたも仕事復帰に向けてどのような心構えをすれば良いか悩むことがあるかもしれません。
そこで、経験者の立場から、うつ病の治療を続けながら仕事復帰する時に注意したことを紹介します。
目次
仕事復帰する時に注意した8つのこと
人によっては、仕事復帰する時に注意することは違うでしょう。「うつ病」と一口に言っても病気の症状はさまざまですし働き方や労働環境も異なります。
僕の場合は、フリーランスのwebライターとして仕事復帰しましたが、在宅ワークをする上で次の8つの点に注意をしました。サラリーマンとして仕事復帰する場合と共通することも多いと思いますので、一緒に注意点を確認していきましょう。
頭を使わない仕事から始める
仕事ができるようになったからと言って、うつ病が完治したわけではありません。落ち込んだり、やる気が湧かなかったりする症状が軽減していたとしても、仕事をしてみると「集中力が続かない」という問題に悩まされがちです。
例えば、書類を作成する時には、文章がまとまらない・資料が読み込めないといった状態になり仕事の効率が上がらないということも。
僕の場合も、集中力が続かず仕事の効率が上がらなかった時には、早く成果を上げようと空回りしてしまうことがありました。
集中力が続かない時期は、複雑な内容の仕事になるほど取り組みにくいです。一方で、データを打ち込んだり、軽作業と言われたり作業は、比較的頭を使わないので集中力が続かなくても取り組みやすかったです。
なので、仕事復帰した直後には、まずは頭を使わない単純な仕事からはじめることをおすすめします。
1度にたくさんの仕事をしない
うつ病の発症前後に「うっかりミス」が増えたという場合には、病気によって注意力や記憶力も低下している可能性があります。実は、うつ病では抑うつ症状が寛解したあとにも注意散漫や物忘れの症状が見られると言われています(参考:日本うつ病学会治療ガイドライン )。
そうなると、しっかり仕事をおこなったつもりでもデータの入力漏れが多かったり、納期を勘違いしたりするということも起こります。
僕は、書類の入力漏れが多かった時に、クライアントから「しっかりやってください!」と叱責されたこともありました。
注意しておきたいことは、上司や同僚・クライアントにはうつ病の知識がありません。当然、どのようなことがおこないにくくなっているのか知らないので、「うつ病だから色々配慮してもらえるはず」と過度な期待をしていると、痛い目を見ることに。
ですから、なるべく一度にたくさんの仕事をおこなわないようにスケジュール調整をし、丁寧に仕事ができるよう時間と気持ちに余裕を作るようにしましょう。
そうそう。タスクリストを作成したり、メモを使ったりすると「うっかりミス」も減り、仕事がしやすくなりますよ。
できる仕事から取り組む
仕事復帰をしてみると、働く意欲がいまひとつ湧かない日も多いです。患者向けの書籍を読むと、「働く意欲が回復したら仕事復帰を考える」とも書いてありますが、実際にはいつも意欲的に仕事ができるわけではありません。
“あれもこれもやりたくない”といった日もあるでしょう。
ただし、働き始めると、療養の日々とは違って自分の都合に合わせて休めないもの。意欲が低い状況のなかでも、何とかごまかしながら仕事のノルマをこなしていく必要があります。
こういった意欲が低いなかで仕事をしていくポイントは、できる仕事から取り組むことです。
実は、「意欲」とは待っていれば自然と湧いてくるものではなく、行動を起こすことで体のなかに湧き上がってくるのです。「意欲」が湧くメカニズムは、精神科医の樺沢医師の説明がわかりやすかったので、以下に著書の内容を紹介します。
脳には「側坐核」という部位があります。脳のほぼ真ん中に左右対称に存在する、リンゴの種ほどの小さな部位です。この側坐核の神経細胞が活動すればやる気がでます。ただし、側坐核の神経細胞は、ある程度の「刺激」がきたときだけ活動を始めます。ずっと待ち続けていたら、いつまでも刺激が得られないのです。
樺沢紫苑(2016):脳を最適化すれば能力は2倍になる.文響社
つまり人間の脳は、何かしらの行動がきっかけとなって意欲が湧く仕組みになっているので、待っているだけではなかなか仕事をする気持ちにはなれません。
ですから、行動するきっかけをつくるためにも、意欲の低い時にはとりあえずできる仕事から取り組むことが肝心です。
仕事の結果より過程を評価する
仕事復帰をしても、はじめのうちは思ったような結果が出せないでしょう。ここまで説明したように、集中力や注意力・記憶力・意欲が落ちているので、仕事の効率が上がらないのはごく自然なことです。
それらに加えて、働く感覚も忘れているので、慣れるまでは仕事をするだけでも精一杯かもしれません。
ところが、うつ病になるようなまじめで責任感の強いタイプは、復帰直後からしっかりと仕事の結果を出そうと頑張りがちです。
その結果どういうことが起きるかというと、次の悪循環に陥ります。
「仕事を頑張る」→「効率良く仕事ができない」→「ミスが増える」→「落ち込む」→「自信をなくす」→「効率良く仕事ができない」
うつ病の症状が残っていたり、仕事に不慣れであったりする時期に結果を出そうとすると、かえって働く自信を失ってしまうことにも繋がりかねません。
そのため、仕事復帰をする時には、頑張ろうとするよりも働き慣れることを目標にすると良いでしょう。
自分と他人の仕事ぶりを比べない
同じように、自分と同僚や友達の仕事ぶりを比べるのもおすすめしません。なぜなら、たいていの場合、他人のほうがうまく仕事ができているように思えるからです。
・同僚がクライアントと上手にコミュニケーションをとっている様子
・いきいきと働けている友達の近況
こういったものを見ると、頭のなかに自己否定的な考えが浮かび、気持ちが落ち込むだけ。何のメリットもないでしょう。
僕の場合は、仕事に軌道がのるまでは、同業者の売り上げ状況や知り合いが働いている様子をできるだけ見ないようにしていました。
特に、SNSのタイムラインを眺めていると、「○○万円売り上げた」「今日は△△ができた」といった情報も見聞きできてしまうので、落ち込みにくくするためには、自己否定的になりやすい情報を積極的に遮断する努力も大切です。
長時間働かない
サラリーマンの場合には自分で自由に労働時間を決められませんが、できるだけ長時間の業務は避けたいです。仕事復帰した直後は疲れが溜まりやすく、かつ溜まった疲れがからだから抜けづらいでしょう。
うつ病を治療しながら働きはじめると、①仕事に慣れること②まわりの期待に応えること③再発に注意することなど、注意を払わなければいかないことが多いです。
気を遣うことがたくさんあるからでしょうかね、ただ仕事をするだけでもどっと疲れが溜まってしまいます。
僕は、「在宅ワーク」という形で仕事復帰をしたので、労働時間を自分自身で調整することができました。だから、最初は1~2時間に1回休憩をとり、長時間労働ができるだけの力がついてきたら3~4時間の長時間労働をおこなっていくようにしたんです。
働いている職場の方針や雰囲気にもよりますが、心身の負担を軽減するためにも、可能であれば短時間労働での仕事復帰を上司に相談してみてはいかがでしょうか?
睡眠時間を削らない
疲れに関連することで注意したいもうひとつのことは、仕事が生活の中心になってしまい睡眠時間を削ることです。睡眠を十分にとらないと疲れやすくなったり、落ち込みやすくなったりするので体調を崩す可能性が高くなります。
うつ病になりやすいタイプの人の生活習慣については、精神科医の坪井康次医師が的確な指摘をされているので、自分の戒め(いましめ)として参考に読んでみてください。
私たちの生活は、主に「睡眠」「食事」「休息」「運動」「仕事(勉強)の5つの要素から成り立っています。この5つのバランスがとれていれば、仮にストレスがかかっても、うまく対応することがえきます。この中でも「睡眠」「食事」「休息」がとりわけ重要です。ところが、うつ病になりやすい人は、「仕事」の面を重視し、「睡眠」「食事」「休息」といった面を軽視しがちです。 ~中略~ 「寝る間も惜しんで仕事をする」ことを美徳とする考え方を改めない限り、せっかくうつ病がよくなっても再発してしまう危険性があります。
坪井 康次(2017):患者のための最新医学 うつ病.高橋書店
仕事復帰した直後は、再燃・再発しないように注意深く生活するので、睡眠時間を削る可能性は低いかもしれません。しかしながら、仕事に慣れ、業務量を増やしすぎたり残業をしすぎたりしてくると睡眠時間を削ってしまうということも。
療養中に整えた生活リズムをできるだけ崩さないように、長く健康的に働いていける生き方をしたいものです。
自己判断で通院をやめない
それから、「もう大丈夫」と思って通院を勝手に辞めてしまうのも、仕事復帰をした方によく見られる傾向です。
完治していない状態で通院や服薬をやめることで、うつ病を再発してしまうことも多いと言います。
僕は、精神科の主治医から次のような話を聞かされました。
“20~30代の若い人。特に男性は自己判断で勝手に通院をやめてしまうことが多いですね”
働き盛りの人は仕事が忙しかったり、私生活が楽しかったりすると治療の必要性を感じづらくなるのかもしれません。
もしも仕事復帰をして通院しづらくなる時には、自宅や会社近くの病院に受診先を変更したり、通院頻度を主治医と相談したりしてみると良いでしょう。
まとめ
僕の場合は、次の8つの点に注意しながら仕事復帰の心構えをしました。
① 頭を使わない仕事から始める
② 1度にたくさんの仕事をしない
③ できる仕事から取り組む
④ 仕事の結果より過程を評価する
⑤ 自分と他人の仕事ぶりを比べない
⑥ 長時間働かない
⑦ 睡眠時間を削らない
⑧ 自己判断で通院をやめない
療養期間が長くなるほど、仕事復帰に対する恐怖心が強くなるものです。
実際に働いてみないとわからないことのほうが多いので、どれだけ準備をしても
恐怖心はなくならないかもしれませんが、心構えをしているだけでも自信を持って仕事を再開しやすいです。
紹介させていただいた内容を参考にしながら、これからの働き方について自分なりの準備をしてみてはいかがでしょうか?