「患者のための最新医学 うつ病」をレビュー!東邦大医師に学ぶうつ病の基本とは?
うつ病の診断を受けても、自分の状態は理解しにくいもの。
病気の名前くらいしかイメージできなければ、不安な気持ちになることもありますよね。
精神科を受診すると、主治医から憂うつ感や不安を軽くする薬を処方してもらえますが、からだの状態について納得したり、イメージできたりする説明が受けられないこともあるでしょう。
うつ病というだけでも不安なのに、自分の状態が理解できなければ、なおらさ不安な気持ちが強くなります。
僕は、うつ病の診断を受けたあとに、病気につい色々な論文や本を読んできました。
主治医を信頼していなかったわけではないのですが、治療を医師任せにするのではなく、自分が置かれている状況を理解しておきたかったのです。
最近では、うつ病の患者向けに、わかりやすく病気や療養について書かれた本があります。
そこで、色々あった本の中で、読みやすく、うつ病について理解しやすかった本を紹介します。
うつ病について基本的な内容が理解できる一冊を読んでおくと、自分のからだの状態が理解しやすいので、療養中の不安な気持ちが少なくなると思いますよ。
目次
患者のための最新医学 うつ病
僕がおすすめする本は、心療内科を専門とする坪井 康次(つぼい こうじ)医師が書かれた「うつ病 こんな症状があったら要注意 患者のための最新医学」です。
本のタイトルは、「こんな症状があったら要注意」と書いてありますが、実際に本を読んでみると、うつ病の診断を受けた方が、うつ病の症状や回復する過程、治療の方法(薬や精神療法の種類)などが理解できる構成です。
うつ病 こんな症状があったら要注意 /高橋書店/坪井康次 | ||||
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監修:坪井 康次(東邦大学 医学部 名誉教授)
発行:2017年 7月 20日
価格:1296円(送料込み)
ページ数:189ページ
はじめに、大まかに本の内容がイメージしやすいよう、各章の見出しを書き出してみました。
第 1 章 うつ病の症状についてよく知ろう
第 2 章 うつ病とはどんな病気?
第 3 章 うつ病はどうして起こる?
第 4 章 うつ病になってしまったら?
第 5 章 うつ病はどう治す?
第 6 章 再発予防と社会復帰
それぞれの章は、大見出し ⇒ 本文の要約 ⇒ 小見出し ⇒ 本文の順番で書かれています。
「患者のための最新医学 うつ病」の最も良いところは、うつ病の基本的な知識について、読みやすく、簡潔にまとめられているところです。
うつ病になると集中力がなくなって、文字を読んだり、同じ作業を続けたりしにくくなることもよくあります。
そのため、読みにくいというだけで、頭に本の内容が入ってこないため、途中で読むことをあきらめてしまうこともあります。
この本は、インターネットのニュースやブログなどを読めるだけの集中力があれば、テンポ良く内容を読み進められ、うつ病についての理解がしやすかったですよ。
うつ病について理解すると気持ちが楽になる
厚生労働省の調査によると、うつ病や躁うつ病など、気分障害に分類される病気を持つ人は、2008年の時点で100万人を超えています。
テレビやインターネットのニュースでも、うつ病の患者が増加していることは報道されています。
うつ病の報道を見ると、意欲が落ちるなどの症状について説明しているので、なんとなくうつ病を知ったようではいたけれど、病気になってみると、思っていた以上に知らないことが多かったのではないでしょうか?
実は、僕も、うつ病になって主治医の話を聞いたり、本を読んだりするまで、「うつ病は、意欲が低下する病気」という認識くらいしかありませんでした。
だから、うつ病になってから、考えがまとまりにくくなったり、集中力がなくなったり、お腹の調子を崩しやすくなったりなど。色々なからだの不調が起こっても、どうしてそういった症状が起きるのか理解できず、原因不明の体調不良に、不安な気持ちになるしかなかったのです。
ところが、うつ病についての理解を深めていくと、うつ病が色々なからだの不調を引き起こす原因になっていることがわかり、不安な気持ちが軽くなったのです。
もちろん、すべてのからだの不調が、必ずしもうつ病が原因とは言いきれませんが、原因に察しがつくだけでも安心感が得られるかもしれません。
学習できた3つのこと
僕は、うつ病の診断を受けて2ヶ月後くらいに、「患者のための最新医学 うつ病」を購入しました。
うつ病になった直後は、文章を読むことも億劫に感じていたのですけれど、うつ病の回復期に入ったからか、「本を読みたい」「自分の病気について知りたい」という意欲が湧いてきたので、この本を購入することにしてみたのです。
この本をおすすめしたいポイントとして、学習できた3つの事柄をまとめてみました。
1. うつ病の症状は、意欲の低下だけではなかった
2. うつ病は、身体的な症状にも悩まされる病気だった
3. うつ病の症状は、良くなったり悪くなったりする
1.うつ病の症状は、意欲の低下だけではなかった
うつ病と聞くと、物事をする気力が湧かなくなったり、興味や関心がなくなったりなど、感情や意欲の問題を引き起こす病気という印象がありますよね。
ところが、僕の場合は、うつ病を患ってからというものの、頭で考えがまとまらい「思考の問題」であったり、物忘れが増える「記憶の問題」であったり、感情や意欲面以外での問題にも悩まされるようになりました。
そのため、例えば、書類を作ったり、家事をおこなったり、創作的な活動ができなくなってしまったのです。
ところが、坪井医師の本を読んでみたことで、うつ病からくる不安感やネガティブな思考回路は、注意力や集中力を低下させ、思考や記憶を鈍らせることもあると知ることができたのです。
うつ病の症状は、本を読んだだけでは改善することはできませんが、仕事や家事など、自分ができなくなってしまった原因がうつ病の症状からきていることが理解できると、自分自身を責めなくて気持ちを楽に保ちやすいです。
特に、できなくなってしまった物事について、自分にばかり原因を求めやすい方は、否定的な考えで落ち込まないためにも本書が参考にあるでしょう。
2.うつ病は、身体的な症状にも困らされる病気だった
僕は、現在、33歳です。30代にもなると、日常生活に加齢の影響を感じる部分も多くなりますが、うつ病になってからは、特に、身体的な症状で悩まされることが増えました。
例えば、胃の不快感などの消化器系の異常、頻尿・残尿感などの泌尿器系の異常、夜間や早朝に目が覚める中途覚醒や早期覚醒などといった睡眠の異常などです。
うつ病の本を読んでみてわかったことは、うつ病では、「自律神経の働きが悪くなる」ことから、身体的な症状も出やすいということでした。
精神科医に相談すれば、身体的な症状に対する薬を出してもらえます。
僕も、胃の不快感がある時には、胃薬を出してもらいました。
でも、消化器、泌尿器、睡眠など、問題が増えるほど、処方される薬だけが増えていくだけなんです。
からだに起こっている問題が、自律神経の乱れに原因があったとしたら、薬を増やしても根本的な改善ができませんよね?
僕は、精神科医が、症状に合わせて薬を処方することを否定したいわけではありません。
ただ、自分でうつ病の身体的な症状を理解できれば、精神科医に薬を処方してもらうのではなく、生活のスタイルを変えてみる相談をしたり、他科を受診するか否かの相談をしたりすることがしやすくなると思うんです。
3.うつ病は、症状が良くなったり悪くなったりする
うつ病は、右肩上がりに、直線的に回復していくのではなく、良くなったり悪くなったりをくり返しながら回復していく病気です。
特に、うつ病の回復期なると、症状の変動が顕著になります。
うつ状態が回復している時でこそ頭もからだも快活に働きますが、うつ状態がぶり返している時期は、回復している実感が湧かないことがあるかもしれません。
うつ状態がぶり返してくると、「このまま一生治らずに、つらく苦しい状態が続くんのではないか?」といったように、絶望的な気持ちになりやすいです。
もしかしたら、今、まさにそういう状態かもしれません。
ただ、うつ状態がぶり返してきたからといって、すぐに精神科を受診できないこともあります。
あるいは、受診しても、自分が自覚している調子の悪さを精神科医に上手く伝えられないこともあるでしょう。
そういった時にうつ病の本があると、自分の状態や気持ちを代弁してくれる場合があります。
また、自分が言い表しにくいつらさも、本を見ると言葉が載っていますし、本を通して自分の状態が理解できる安心感もありました。
うつ病の本としておすすめできないポイント
どんなに良い本でも、参考にする時には必ずデメリットがあるもの。
うつ病の回復期は、まだまだ頭が働きにくいので、見聞きする情報に敏感であったり、情報を上手く理解しにくかったりする場合もあります。
この本を参考にするデメリットは、うつ病についての標準的な内容が網羅されていることです。
標準的な内容が網羅されていることがデメリットとはどういうことか疑問に思われたでしょうが、「標準的」というのは、誰にでも当てはまる内容ではありません。
うつ病は、まだ原因がはっきりした病気ではありませんし、患者によって症状はさまざまです。精神科医は、その患者ごとに治療内容を変えていると言います。
ですから、この本で、「標準的」な内容を知ることで、自分の主治医がその内容とは違った治療をおこなっていると、主治医に不信感を抱かないとも限りません。
例えば、この本には、「医師のほうからいろいろ質問してこない場合には、転医を考えたほうが良い」といった内容が出てくるのですが、僕の主治医は、あまり自分から質問や会話をしてきません。
でも、普段から会話をする機会が少ない僕にとっては、自分の気持ちを聞いてくれる主治医の関わり方が心地良く感じられます。
つまり、本の内容だけでうつ病の治療を考えてしまうと、「ちょっと、私の主治医は大丈夫なの?」と思いかねません。
だから、本の内容が全てだと思わずに、読み進めていけるとよいと思います。
自分の病気やからだについて理解できる
これまでのメリットやデメリットを踏まえると、この本は、次のような方におすすめです。
【こんな方におすすめ!】
① うつ病について知りたい方
② 身体的な不調にも悩んでいる方
③ うつ病の標準的な回復経過や治療について知りたい方
④ 「本に載っている情報が全て!」とは考えない方
うつ病の回復期は、人によってさまざまな症状が現れます。
本を読んだり、文字を理解したりすることがつらい場合もあるかもしれません。
ひとつ言えることは、ここまで、ブログを読み進めてこられた方であれば、十分に、読める構成の本です。
うつ病の症状により、色々なからだの不調に悩まされていれば、不安な気持ちは強くなるばかりです。
しかし、自分の病気やからだについて少しでも理解できると、不安感も少なくなるかもしれません。
うつ病の回復期の時間を使って、自分の病気やからだを理解することからはじめてみてはいかがでしょうか?