「ほっしーのうつマッピング」をレビュー!うつ病当事者が試した療養に良かったこととは?
「本当に休息だけしていれば良いのか?」思ったよりもうつ病が回復しないと、療養生活にもどかしさを感じます。
主治医の指示通りに薬を服用し自宅で療養していてもやる気や集中力、自信など、「社会生活に必要な能力」が戻ってこないように感じることがあるかもしれません。
からだのためにも何かしたいと思うのは、うつ病当事者としては当たり前の感情でしょう。
とは言っても、自分ひとりでは何をおこなっていいか悩むもの。うつ病では、身近に相談できる人がいないのも困りますよね。
先日、僕はほっしーさんが執筆された「うつマッピング」の本を読みました。
この本は、うつ病当事者であるほっしーさんが療養生活の中で試した全34個の活動について効果を検証し、それぞれを難易度別に分類した療養生活のバイブル的一冊です。
うつ病の当事者は、療養生活でどのようなことをしているのか?ここでは本の内容を紹介しながら、僕が共感できたことや感想を書いていきます。
目次
メンタル系 人気 Youtuberが執筆!
著者のほっしーさんは、メンタル(心)をハック(分析・改善)するメンタルハッカーとして、うつ病の療養や生きやすくなる考え方などについて情報発信しています。
もともとはツイッターや自身が運営するブログ「ほっしーのメンタルハック」を中心に情報発信をされていましたが、現在ではYoutubeでの動画配信もおこない、登録者約1,4000人の「ほっしーのメンタルハックちゃんねる」も運営するメンタル系Youtuberでもあります。
ほっしーさんとは何度かツイッターでやり取りしたことがあるのですが、個人的には優しい雰囲気の人柄という印象です。
例えば、メッセージの返信で緊張感をやわらげるような顔文字を使ったり、他人の生活に過干渉しない関わり方をされたりするなど。
メンタルが病んだ経験があるこその優しさを漂わせています。
ちなみに落ち着きのある「声」をされているので、本やブログなどの活字が読みづらい時期ほど、視聴しやすいYoutubeのチャンネルがおすすめです。
うつマッピングとは?
それで「うつマッピング」とは、ほっしーさんが発案された療養生活で経験した活動の効果と難易度を検証した図表のことです。
ほっしーさんは、うつ病を発病してから自分のからだを回復させるために、全34個の活動を実施してきました。
それらの活動の効果と難易度を検証し、他のうつ病当事者の方にも共有したいという思いから、「うつマッピング」を作成したのだそう。
ほっしーさんが作成した「うつマッピング」は、後々一冊の本にまとめられたわけですが、本を出版したはじまりはあるツイートからでした。
うつを治すために、いろんなことを試してきたのでマッピングしてみた。 pic.twitter.com/UecVW3hGBz
— ほっしー@メンタルハッカー (@HossyMentalHack) April 16, 2018
書籍が出版された当時は、ツイッターのタイムラインを見ると、「買った」「読んでみた」「自分もマッピングしてみた」といった多くのツイートが投稿されていたことを覚えています。
この「うつマッピング」の画期的なところは、うつ病当事者が「自分でおこなった活動」の効果と難易度を検証したところです。
精神科医や臨床心理士など、専門家が執筆された当事者向けの本は数多くあります。
ただ専門家が執筆された本は、科学的な根拠に基づいた治療方法などが紹介されている一方で、うつ病当事者が抱える悩みを汲み取れていなかったり療養生活のアドバイスが少なかったりと、当事者が療養生活で感じる不安や悩みを解決する内容にはなっていないことがほとんど。
ほっしーさんの著書には、うつ病当事者としての心境が書かれており、療養生活で役立つ具体的なアイディアもたくさん紹介されています。
だからこの本を当事者が参考にすれば、ひとりで抱えている不安や悩みを解消し、自分で自分のからだを療養するための具体的な活動をおこなっていくができるようになるでしょう。
さて、うつ病当事者としては、具体的にどのようなところが参考になったのか?
ここからは、僕が本を読んでみて共感できたことや感想について書いていきます。
当事者なりに努力が必要
「薬を飲んでいれば、うつは治る」 よく言われる言葉です。
私もこの言葉を信じてじっとしていました。たしかに、少しは良くなりました。 ~中略~ ですが、家族と会話することや、外に出て買い物に行くこと、ましてや会社に復職することなんて、とうてい考えられなかったのです。
「薬でよくなることは事実だけど、ちょびっと良くなった程度だな…」 これが私の正直な感想でした。
(引用 ほっしー(2018):うつを治す努力をしてきたので、効果と難易度でマッピングしてみた.ディスカバー・トゥエンティワン)
これは、僕もまったく同じことを思いました。精神科医が書いた当事者向けの本を読むと、「薬を飲んで休息していれば良くなる」と書いてありますけれど、本当にそうなのでしょうか?
僕の場合も、抗うつ薬や抗不安薬を服用して療養していたのですが、少なくとも仕事復帰や社会生活を送れる気持ちにはなれませんでした。
たしかに薬を服用したおかげで、憂うつ感や不安感といったうつ病の主症状は軽くはなりました。
ですがやる気や集中力、自信など、仕事や社会生活を送る上で必要な能力は、自分で色々な活動をおこなう中で戻ってきたように感じています。
僕には、精神科医の「治った」と当事者の「治った」にはギャップがあるように思えてなりません。
それぞれの精神科医の考え方ややり方にもよるのでしょうが、もしも精神科医の「治った」が憂うつ感や不安感などの軽減だけにあるのなら、当事者としては仕事や社会生活を送れるようになるための自分なりの努力が必要になると思うのです。
「うつマッピング」がツイッターで20,000回以上のリツイートをされ大きな反響を呼んだのも、そういった当事者の疑問を自分で検証し、世の中に発信したことにあるからなのではないでしょうか。
ツイッターが解消するうつ病の孤独感
現実社会にはほとんど存在していない(ように見える)「うつ病仲間」が、そこにはたくさんいるのです。
つらくてつらくて心が追い込まれている状況の人には、同じような経験をしている人がいるだけでも、心が救われるというものです。
(引用 ほっしー(2018):うつを治す努力をしてきたので、効果と難易度でマッピングしてみた.ディスカバー・トゥエンティワン)
もしもあなたがツイッターを活用していないなら、うつ病の療養のためにツイッターを使うことを僕はおすすめしたいです。
厚生労働省によると、うつ病の患者は2008年には約104万人なったと報告されています。
ところが実際にうつ病になってみると、自分の身近には同じような症状で苦しむ当事者がいないことに気づいたでしょう。
でもそれは当然かも。
というのも仕事や社会生活を送れるレベルまで回復した当事者は、人前でなら症状がわからないことも多いですし、まわりに気づかれたり迷惑をかけたりしないように、自分で何とか健康を装っているものです。
だからうつ病になると、当事者は自分ひとりで不安や悩みを抱えるようになり、孤独感に駆られやすいのでしょう。
うつ病になると、病気の影響で言葉数が少なくなります。
ただでさえ言葉数が少ない中で誰かに相談してみた時に、もしも「誰にでもそんな悩みはある」などと言われてしまう可能性を考えると、気軽に家族や友人、同僚などにも相談できません。
実際にそんなことを言われてしまった時には、すでに折れている心がくだけるでしょう。
そういった意味では、ツイッターは瞬時に同じ不安や悩みを抱えた人と情報交換でき、つらい気持ちを共感できる便利なツールです。
ツイッターの良いところは、自分から何かを発信しなくても「また眠れなかった」「焦らずゆっくりやっていきたい」といった同じような境遇にある人のツイートを見るだけでも安心感を感じられます。
リアルの関係だけにこだわる時代ではないですし、孤独感が強い時には、ツイッターを利用してつらい気持ちを解消してみるのも良いと思うんですよね。
ただほっしーさんが言うには、ツイッターにもデメリットがあるのだそう。
自分よりフォロワー数の多い人間を見るとみじめな気分になる
(引用 ほっしー(2018):うつを治す努力をしてきたので、効果と難易度でマッピングしてみた.ディスカバー・トゥエンティワン)
どうやら「人間には数字に説得力を感じる癖がある」ようで、フォロワー数が多い人を見ると自分だけが取り残された感覚を持ってしまうこともあるのだと言います。
ツイッターに関わらずうつ病の時は、自分と他人を比較すると気持ちがつらくなることのほうが多いです。
ビジネスでツイッターを使うわけではないのだから、数字で自分と他人を比べないように注意したいものですね。
「エッセンシャル思考」で考え方をシンプル化
不安な気持ちが強くて視野が狭くなると、本当にそれが起こりそうな気がしてきますが、実際にはほとんど起こりません。
(引用 ほっしー(2018):うつを治す努力をしてきたので、効果と難易度でマッピングしてみた.ディスカバー・トゥエンティワン)
限られた時間とエネルギーを効果的に配分して、「より少なく、しかしより良く」を追求しようという考え方を「エッセンシャル思考」というそうです。
ほっしーさんは、うつ病になるとバッテリーが消耗したスマートフォンのように充電したり使用したりできるエネルギーが少なくなるから、効果的なエネルギーの使い方が必要と言います。
うつ病では、憂うつや不安な気持ちになることを自分から考えがちです。
特に調子が悪くてからだが動かしにくい時ほど、ネガティブな思考に悩まされやすいでしょう。少ないエネルギーをネガティブな思考に使っているので、なかなかポジティブなことにも思考がまわりません。
僕はうつ病の療養生活では、自分が心地良く感じるポジティブなことに意識を向けることが必要だと考えています。
というのも、蓄積したストレスでうつ病を発病したのだとしたら、そのストレスを解消するためにも「自分が心地良く感じる時間」が大事になると思うからです。
つまり、限られた時間やエネルギーをできるだけ「自分が心地良く感じる時間」に使うことが重要だと思うんです。
「自分が心地良く感じる時間」が多くなるほど、ポジティブな思考にもなりやすいでしょう。
例えば、朝から散歩ができた日を想像してみてください。
きっと午前中から動けた自分に心地よさを感じ、ちょっと家の中を掃除してみたいと思えたり、スーパーにでも買い物に行ってみたり。
ひとつのポジティブに感じた物事がおこなえるから、もっと色々なことに挑戦したいという気持ちにもなるのではないでしょうか?
・やりたくないことはやらない
・やりたいこと、できることをやる
この本を読んで、うつ病の療養では、そうやって自分にかかるストレスを減らしながら、自分が心地良く感じるサイクルに思考を持っていくことが重要だと思いました。
療養生活の支えと参考に
うつ病について精神科医や家族に相談できないと、孤独感から不安を感じやすいです。
また薬や休息以外にも「自分で何かをやってみたい」と感じはじめたら、仕事や社会復帰のために色々と挑戦する時期になってきたのかもしれません。
もちろん、うつ病当事者の経験した内容だからといって、自分にも全く同じことが当てはまるとは考えないほうが良いでしょう。
「うつ病」と一口に言っても、症状・回復状況・性格・経験・家庭環境・生活環境などは違います。
ですから、「当事者と同じ経験をすれば自分のうつ病も回復する」とは考えないように注意することも必要です。
でも、もしあなたがうつ病になった不安や悩みを自分ひとりで抱えていたり、療養中の過ごし方に迷っていたりしたら、この本はうつ病当事者の体験談として、療養生活の支えや参考になるでしょう。