【書評】『「敏感」にもほどがある』HSPの筆者が体験した日常のHSPあるあるとは?
他人に気をつかいすぎて、疲れしてしまう。
ちょっとしたことにも動揺しやすい。
そんな自分の神経質な性格に、生きづらさを感じることがあるかもしれません。
外からの刺激を受けやすく、色々なことに気づきやすい人は、日常生活でもストレスを感じる機会が多いでしょう。
実は、世の中には、そういった「敏感すぎる人」が想像以上に多くいるそうなのです。
心理学では、敏感すぎる気質の人をHSPと呼びます。
僕は、自分も敏感すぎるタイプなのかどうか知りたく、HSPについて書かれた『「敏感」にもほどがある』を読んでみました。
この本は、イラストともに敏感さで悩まされる筆者のエピソードが紹介されており、共感できるエピソードも多かったです。
敏感すぎる資質で、理不尽な思いをすることが多い方にとっては、同じような体験をしている方の様子がわかることで、気持ちが軽くなると思います。
「敏感」にもほどがあるとは?
『「敏感」にもほどがある』は、物事に敏感すぎる人が、日常生活で体験しやすいエピソードを紹介しながら、HSPについて紹介した本です。
HSPとは、Highly Sensitive Personの略で、物事に「敏感すぎる気質を持った人」を指します。
心理学者の研究では、5人に1はHSPと言われています。
筆者は、HSPの啓蒙活動をおこなっている高橋 敦(たかはし あつし)さんです。
高橋さん自身もHSPであることによって、職場や家庭などで多くの悩みを抱えてきたとのこと。
HSPの人は、あらゆることに敏感なため、日常生活のさまざまな刺激に影響を受けやすく、ストレスを感じやすかったり、心の悩みを抱えやすかったりすること傾向があります。
筆者の高橋さんも、そういった敏感さで悩むことが多かったため、HSPの方のストレスや悩みを軽くしたいという思いから、『「敏感」にもほどがある』を執筆したそうです。
『「敏感」にもほどがある』の中で紹介しているエピソードは、どれも「あるある」と共感できるものばかりで、自分も敏感すぎるタイプの人間であることに気づけました。
HSPについてコミカルなイラスト付きで紹介されているので、とってもわかりやすく、読みやすい内容となっています。
生きづらいのは敏感すぎるからかも
『「敏感」にもほどがある』では、HSPのチェックリストが紹介されていたので、以下にその内容を引用してみました。
敏感すぎて悩んでいる方には、当てはまる項目が多いと思うのですが、いかがでしょうか?
あなたもHSP(超敏感気質)かも?次の質問に、感じたままで、はい・いいえのどちらかをお選びください。
1. 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ
2. 他人の感情や体調に左右される
3. 体の不調(痛みや不快感)にとても敏感である
4. 人に会ったあと、疲れてひとりになりたいと思う
5. カフェインに敏感に反応する
6. 服の肌触りや着心地が気になる
7. いつのまにか空想にふけってしまう癖がある
8. 他人の会話に無意識に注意が向いてしまう
9. 宗教的なものスピリチュアルなものに関心がある
10. 芸術や音楽などクリエイティブなことが好きだ
11. ウソをつくとひどく良心がとがめる
12. ちょっとしたことでも、びっくりしやすい
13. いろんな事を同時にするのが苦手であり、混乱してしまう
14. 言葉にならない他人の気持ちによく気がつく
15. 物を忘れたり、ミスをしないように気をつける
16. 何かに気を取られてミスをすることが多い
17. ことばのニュアンスが気になってしまう
18. 刺激が多いとイライラすることがある
19. 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
20. 引っ越し、模様替えなど生活の大きな変化が負担である
21. グループにいると自分らしくいられない
22. 人目がとても気になる
23. 競争させられることがきらいだ
24. 理由もなく気分が良かったり、悪かったりする
25. 子どものころ、周囲の大人や子どもから、内向的であったり、内気と思われていた
(引用 高橋敦:「敏感」にもほどがある.きこ書房)
以上の質問のうち、12個以上の項目があてはまった人は、HSP(敏感気質)の可能性があるそうです。
また、「はい」が少なくても、あてはまった項目の度合いがとても強ければ、HSP(敏感気質)かもしれないんだとか。
ちなみに、僕は23項目が当てはまりました。
HSPは、病気ではないので、敏感気質であること自体に問題はありません。
ただ、あなたが日常生活でストレスをためやすかったり、悩みやすかったりする原因は、もしかしたら自分の敏感すぎる気質が影響しているのかもしれませんね。
生きづらさに共感!気持ちが楽になる
まわりに同じような敏感タイプがいないと、生きづらさを感じているのが自分だけのような気がして、孤独を感じる時もあるでしょう。
「神経質なのは自分だけ」「自分だけがちょっと変わっている…」みたいな。
僕が『「敏感」にもほどがある』を読んで良かったと思うことは、敏感だからこそ共感できるエピソードがたくさん知れて、気持ちがホッと楽になったことです。
高橋さんの言葉やイラストを見ると、敏感さに悩んでいるのは、自分だけではなかったということに気づけ、とても安心感がありました。
雰囲気や内容がわかると、本のイメージもしやすいと思うので、多くのエピソードのうち、僕がもっとも共感しやすかった3つのエピソードについて、本文を引用しながら紹介します。
① 人といるだけで疲れてしまう
会社にいても…人ごみでも
友達や家族といても…疲れてしまいます
結局ひとりが落ち着きます。
( 引用 高橋 敦(2017):「敏感」にもほどがある.きこ書房 )
僕は、妻と娘の3人暮らしをしています。娘が小学2年生であることもあって、休日には家族で動物園や水族館、テーマパーク、ショッピングモールなどの行楽地へ遊びにいくことがあるのですが…。人ごみはどうにも苦手で。
人ごみにいると、頭がくらくらしたり、すぐに疲れてしまったりするので、家族と遊びに出かけても外出先で一人になりたくなるこも多いんです。
一人になってカフェでお茶をしたり、車の中で昼寝をしたりしないと、休日は1日もたないですし、気持ちが落ち着きません。
以前は、家族と遊びにきているのに一人になりたいだなんて、家族に申し訳ないと思うこともよくありました。
夫や父親と言えば、アットホームなイメージで、家族とずっと一緒にいることが理想と考えていたんです。
ですが、世の中には「敏感すぎる資質を持つ人」がいると知れてからは、家族に気をつかいすぎず、自分のペースで遊びや日常生活を楽しもうと考えられるようになりました。
当たり前のことだったのかもしれませんが、どんなに親しい人であっても、刺激の受け取り方やストレスの感じ方は違うということに気づけました。
② 他人の体調や感情が気になる
自分という境界が薄いらしく
人の影響をすぐに受けたり
人に流されたり
捕まったりしやすい。
( 引用 高橋 敦(2017):「敏感」にもほどがある.きこ書房 )
僕には、昔から人の顔色によって、気分が変わりやすいという傾向がありました。
例えば、以前は会社でサラリーマンをしていたのですが、会社で働いていた頃は、イライラしている同僚を見ると自分が怒らせてしまったように感じ、つらい気持ちになっていました。
また、同僚から職場についての悪口を聞かされると、職場の雰囲気の悪さが自分に責任があるように感じてしまうこともあり、落ち込んだ気分になることもあったんです。
高橋さんが言うように、「自分という境界が薄い」かどうかはわかりませんが、以前の僕は、他人の体調と気分によって、自分の気分もジェットコースターのように変動していました。
それで、他人といると気分が変動して疲れるので一人でいることを好むようになったのですが、一人でいると、まわりの人からは「人と関わったほうがいい」とか、「コミュニケーションをとるべきだ」とかいうアドバイスをもらうことが多くって。
一時期は、他人との関わりが少ない自分を責める時もありました。
でも、他人の体調や気分に影響されやすい理由が、敏感すぎる資質によるものだと考えられてからは、一人を好んで生活することにも自信が持てるようになったんです。
他人の体調や気分に変動されることなく、自分のペースで生活しようと考えられるようになると、人間関係でストレスを感じることも減り、とても生活がしやすいですよ。
③ 先のことをクヨクヨ考える
何かをやろうと思っても…
結果や先の展開や失敗した時、
または成功した時のことまで
あれこれあれこれ思い悩んでしまいます。
( 引用 高橋 敦(2017):「敏感」にもほどがある.きこ書房 )
「そうやってクヨクヨするの、やめたら?」。これは、僕が子どもの頃からまわりの人によく言われていた言葉です。
もちろん自分ではクヨクヨなんてしたくないのですが、何か起こるたびに、頭の中に色々な考えが浮かんできて、黙り込んでしまうことが多く、その様子が他人からはクヨクヨしているように見えたようです。
やっかいなことに、僕にはクヨクヨするだけではなく、怒られたことや悲しかったことを引きずる癖もあったんですよね。
敏感すぎる人は感受性が高く、たくさんの刺激を受け取ってしまうから頭の中がごちゃごちゃしやすく、情報をうまく処理できなくなることが多いのだとか。
そこで、本の中では、頭の中を整理する方法として、敏感になった感受性を抑えるための「注意の輪」という方法が紹介されていました。
この方法は、自分を中心に注意の範囲を狭めていき、最終的に自分自身に注意を集めていくようにする方法です。
自分が舞台の上に立ち、スポットライトを浴びているようなイメージでおこなうと良いそうです。
実際におこなってみると、頭の中のごちゃごちゃする感じがおさまって、頭が冴えるとともに気持ちが落ち着くように感じました。
「マインドフルネス」にも近いイメージなのかもしれません。
人がいたり、テレビの音が聞こえたりしているとおこないにくかったので、静かな場所で横になるか、座るかして、目をつぶりながらおこなってみると取り組みやすかったですよ。
敏感すぎる人には居場所が必要
『「敏感」にもほどがある』を読んで、僕がもっとも重要だと感じたことは、気持ちを楽に生きていくには、自分の居場所をうまくつくっていく必要があるということです。
僕は、現在フリーランスとして自宅で仕事をしています。
サラリーマン時代に比べると、会社で色々な人とコミュニケーションしなくなったことで、ずいぶんと楽に仕事ができるようになりました。
感受性が高く、色々な刺激に敏感すぎるタイプだからこそ、刺激が少ない環境で仕事をしたり、自分の敏感さに理解ある人と生活したりなど、自分に合った刺激量を調節した居場所が必要だと思います。
他人から「神経質だね」「考えすぎだよ」と言われても、それは自分にもともと備わっている資質ですし、無理に変えようとするよりも、その敏感さに支障がなかったり、うまく活かせたりする環境を探したほうが、敏感すぎる人も生きやすくなるでしょう。
仕事や家庭、友人関係でも、まわりに影響されすぎない居心地のいい場所を探していきたいですね。
この本を読んで、僕は、そんなことを思いました。