気持ちを整理するには?心理学のノウハウを使って自分の気持ちを整理する方法を紹介
自分に都合の悪いことが起こるたび、落ち込んだり、イライラしたり…。
ストレスを感じやすい人は、悩みがつきないものです。
気持ちの整理が苦手で、落ち込みや怒りといったネガティブな気分から立ち直れない、という人もいるでしょう。
気持ちを整理するには、どのようにすれば良いのでしょうか?
ここでは、心理学のノウハウを使って自分の気持ちを整理する方法について、お伝えします。
目次
気持ちを整理できない原因
気持ちを整理できない原因は、思い込みと事実の区別ができないからです。
落ち込みやイライラ・モヤモヤなど、自分を悩ます気持ちは何であれ。
人がネガティブな気分になっている時は、必ず頭のなかでその原因となる考えが浮かんでいます。
心理学では、この頭のなかに無意識に浮かんでくる考えを「自動思考」と言います。
自動思考とは、さまざまな場面、状況で、パッと瞬時にわき起こる思考やイメージのことです
(引用 福井 至・貝谷 久宣(2012):図解 やさしくわかる認知行動療法.ナツメ社)
例えば、あいさつしたにも関わらず、同僚が返事をしなかったとします。
気持ちの整理ができない時というのは、この状況を同僚に「無視された」とか「嫌われている」と思い込みがちです。
実際には、同僚は、時間に追われていたり体調が悪かったりしてあなたに返事をする心の余裕がなかった、ということもありますよね。
このように、人には、「自動思考」により、事実と違った形で物事を捉えてしまう性質があります。
厄介なことに、渦中にいる時ほど、「自動思考」が事実を反映しているものか、単なる思い込みなのか判断がつきません。
そのため、放っておくと、次から次へ自分に都合の悪い考えばかりが頭に浮かび、気持ちの整理ができなくなってしまうのです。
「自動思考」に気づけば、気持ちを整理しやすくなる
「自動思考」というのは、自分で意識しなければ気づくことができません。
なぜなら、大人が無意識に箸を使えるのと同じように、自動思考は、無意識に頭のなかに浮かんでくるものだからです。
気持ちを整理するには、自動思考に気づくことが大切です。
自分が何を考えているかわかれば、落ち込みやイライラ・モヤモヤといったネガティブな気分の原因を分析でき、気持ちを整理しやすくなります。
実は、人がネガティブな気分になった時の自動思考は、パターンが決まっています。
アメリカの精神科医であるデイビッド・D・バーンズ医師は、ネガティブな気分の時に浮かぶ自動思考を次のように分類しています。
1.全か無か思考 | ものごとを白か黒のどちらかで考える思考法。少しでもミスがあれば、完全な失敗と考えてしまう |
2.一般化のしすぎ | たった1つの良くない出来事があると、世の中すべてこれだ、と考える |
3.心のフィルター | たった1つの良くないことにこだわって、そればかりくよくよ考え、現実を見る目が暗くなってしまう。ちょうどたった一滴のインクがコップ全体の水を黒くしてしまうように |
4.マイナス化思考 | なぜか良い出来事を無視してしまうので、日々の生活がすべてマイナスのものになってしまう |
5.結論の飛躍 | 根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう a.心の読みすぎ:ある人があなたに悪く反応したと早合点してしまう b.先読みの誤り:事態は確実に悪くなる、と決めつける |
6.拡大解釈(破滅化)と過小評価 | 自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する。逆に他人の成功を過大に評価し、他人の欠点を見逃す。双眼鏡のトリックとも言う |
7.感情的決めつけ | 自分の憂うつな感情は現実をリアルに反映している、と考える。「こう感じるんだから、それは本当のことだ」 |
8.すべき思考 | 何かやろうとする時に「~すべき」「~すべきでない」と考える。あたかもそうしないと罰でも受けるかのように感じ、罪の意識をもちやすい。他人にこれを向けると、怒りや葛藤を感じる |
9.レッテル貼り | 極端な形の「一般化のしすぎ」である。ミスを犯した時に、どうミスを犯したかを考える代わりに自分にレッテルを貼ってしまう。「自分は落伍者だ」他人が自分の神経を逆なでした時には「あのろくでなし!」というふうに相手にレッテルを貼ってしまう。そのレッテルは感情的で偏見に満ちている |
10.個人化 | 何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合に自分のせいにしてしまう |
(引用 デイビッド・D・バーンズ(2013):いやな気分よ さようなら コンパクト版.星和書店)
以上のように、ネガティブな気分の時に浮かぶ自動思考には、パターンがあります。
先ほどの例で、あいさつしたはずの同僚が返事をせずに「無視された」と思い込んでしまったように。
ネガティブな気分になった時は、頭のなかに浮かんだ自動思考に気づければ、なぜ自分がそうした心の状態に陥っているのか、分析して気持ちを整理しやすくなるのです。
自分の気持ちを整理する3つのステップ
ここまでに、自分の気持ちを整理できない原因は、思い込みと事実の区別ができなくなってしまっており、その状態を改善するには頭のなかに無意識に浮かぶ「自動思考」に気づく必要があると説明しました。
それでは、実際に、自分の気持ちを整理するにはどのようにすれば良いのでしょうか?
ここからは、気持ちを整理する方法について、3つのステップを解説します。
ステップ1:自分の気持ちを紙に書く
まずは、自分の気持ちを紙(メモ帳やノートなど)に書きましょう。
気持ちを整理できないという時は、落ち込みやイライラ・モヤモヤで満たされているので、頭のなかだけでは情報を処理しにくいものです。
いま何を考えているのかを文字にしたほうが、頭のなかに浮かんでいる自動思考に気づけ、気持ちを整理しやすくなります。
自分の気持ちを紙に書く時は、感情的な言葉を使わずに、考えを視覚化することがポイントです。
例えば、以下のように、自分の考えを視覚化しましょう。
① 大事な仕事でミスしてしまった。自分はなんてダメな人間なんだ ② 同僚は無駄話ばかりしている。仕事中なんだからもっと真面目に働くべきだ ③ 最近、ついてないな。私の人生なんて何ひとつ良いことがない |
このように、頭のなかの考えを視覚化できれば、自分をネガティブな気分にさせている自動思考に気づけるのです。
ステップ2:自動思考を明らかにする
次は、紙に書いた自分の考えが「自動思考」のどれに当てはまるのか、先ほど示した自動思考の表と照らし合わせましょう。
今回の例を自動思考の表に照らし合わせてみると、①は「全か無か思考」、②は「すべき思考」、③は「マイナス化思考」になります。
① 大事な仕事でミスしてしまった。自分はなんてダメな人間なんだ(→全か無か思考) ② 同僚は無駄話ばかりしている。仕事中なんだからもっと真面目に働くべきだ(→すべき思考) ③ 最近、ついてないな。私の人生なんて何ひとつ良いことがない(→マイナス化思考) |
①は、ひとつの失敗がきっかけで自分を全く価値のない人間と思い込んでいる状態です。
②は、他人の言動に対して「すべき」と自分の価値観を押しつけている状態です。
③は、ついていない出来事が続いたことで日々の生活で起きた良い出来事を無視している状態です。
このように、自分の気持ちを紙に書き出し、どのような自動思考に陥っているか明らかにすることで、自分をネガティブな気分にさせている「大もとの考え」にたどりつけるのです。
ステップ3:新たな考えや行動を決める
ここまでくれば、ネガティブな気分をどう処理すれば良いか、新たな考えや行動が見え始めているはずです。
最後は、自分の新たな考えや行動を紙に書きましょう。
新たな考えや行動を紙に書く時のポイントは、「自分を守ってあげるような内容にする」ことです。
そうすることで、落ち込みやイライラ・モヤモヤといったネガティブな気分に押しつぶされず、自分の気持ちを整理することができます。
以下が、具体例です。
① 大事な仕事でミスしてしまった。自分はなんてダメな人間なんだ(→全か無か思考) ⇒仕事でミスしたからといった、それで「ダメな人間」ということにはならない。たしかに大事な仕事だったかもしれないが、自分は、普段の業務を丁寧におこない、上司や同僚から褒められることもある。次はミスしないように、準備や確認に注意しよう。 ② 同僚は無駄話ばかりしている。仕事中なんだからもっと真面目に働くべきだ(→すべき思考) ③ 最近ついてないな。私の人生なんて何ひとつ良いことがない(→マイナス化思考) |
頭のなかにある考えを明らかにして、自分の気持ちを整理する
今回紹介した気持ちを整理する方法は、気持ちを紙に書いたり、自動思考に照らし合わせたりする工程があるため、慣れるまで自分なりに試行錯誤が必要です。
しかしながら、やり方に慣れれば、落ち込みやイライラ・モヤモヤする出来事があった際に、頭のなかだけで気持ちを整理できるようになります。
「自分にもできそう」と思えたのであれば、ぜひ、自分の気持ちを紙に書くことからはじめてみてはいかがでしょうか。