なぜうつ病になると頭が回らないのか?気になる原因と対処法を紹介
うつ病では、「頭が回らない」ことがよくあります。
頭が回らないと考えたり決断したりしづらくなるので、何をするにも不自由ですよね。
実は、僕自身も「頭が回らない」ことに悩まされてきました。
どうして頭が回りにくくなるのか?
その原因を理解してからは、気持ちを楽に保ちながら生活できるようになったものです。
そこで、うつ病になると頭が回りにくくなる原因に触れながら、対処法について紹介します。
目次
うつ病で起こる3つの精神症状
そもそも、うつ病になると、どのような症状が見られるのでしょうか?
東邦大学の名誉教授で精神科医の坪井 康次医師によると、うつ病では、主に次のような精神症状が見られると言います。
① 「感情面」の症状
② 「意欲・行動面」の症状
③ 「思考面」の症状
もちろん、、人によって、どのような症状があらわれるかは変わってきますが、このような精神症状によって「頭が回りにくい」状況が引き起こされているのです。
頭が回らなくなる原因とは?
精神症状のなかでも、頭の回りにくさに影響しやすいものは、「意欲・行動面」と「思考面」の症状です。
これらの症状によって、どうして頭が回らなくなるのか見ていきましょう。
考えることが面倒になる
うつ病の「意欲・行動面」の症状は、行動を起こしたり決断したりすることを難しくさせます。
これが進むと、物事を考えること自体も面倒になるのです。
物事に対する意欲が低下して、行動力や決断力がなくなった状態は、専門用語で「精神運動抑制」と言うのだそう。
「精神運動抑制」の状態になると、本や書類を読んでも内容が理解できなくなったり、物事をテキパキとこなせなくなったりして、「頭が回りにくい」と感じられます。
考えがまとまらなくなる
「思考面」の症状があると、頭がボーッとしたり、新しいアイディアが浮かばなくなったり、同じことばかり考えたりするようになり、「頭がまわりにくい」と感じます。
考えがまとまらなくなった状態は、専門的に「思考制止(しこうせいし)」あるいは「思考抑制(しこうよくせい)」と呼ばれます。
いずれにしても、うつ病による精神症状が見られるようになると、頭がまわりにくくなり、色々な物事ができなくなったり時間がかかるようになったりするのです。
頭のまわりにくさは良くなっていくのか?
前出の坪井医師によれば、うつ病は適切な治療を受ければ治ると言います。
うつ病は早期に発見して適切に治療すれば、十分に治すことができる病気です。そのためには、患者さん本人や周囲の人が早く気づいて、専門家による適切な治療を受けることが大切です。
「頭が回らない」状態が、うつ病の症状から引き起こされているとすれば、からだの回復とともに頭のまわりにくさも良くなっていくのでしょう。
ただし、頭のまわりにくさは、長い期間に渡って残るということも。
日本うつ病学会が作成している「うつ病治療ガイドライン」には、次のような研究報告が紹介されています。
うつ病患者では、抑うつエピソード中はもちろん、 抑うつ症状が寛解した状態においても、注意・遂行機 能の低下など、一定の認知機能障害が残存しうること が報告されている。 したがって、集中困難・うっかりミス・忘れやすさが 見られやすい。
(引用 日本うつ病学会治療ガイドライン)
実際に僕自身も、うつ病を発症してから1年半ほど頭のまわりにくさを感じ続け、仕事や家事に取り組みにくかったり時間がかかったりすることが多くありました。
うつ病の回復にかかる期間は、人によって変わってきます。
当事者の立場からすると、回復に希望を持ちながら、焦らず療養を続けることが必要なのかもしれませんね。
頭が回らない時の対処法
「頭が回らない」と、何をするにも時間がかかったり、そもそも取り組めなかったりして困ることが多いです。
思ったように物事ができないと、うまくできない自分に自己嫌悪や罪悪感などを感じて、さらなる気持ちの落ち込みにつながるかもしれません。
そこで、「頭が回らない」時に行動を起こしやすくなる対処法を紹介していきましょう。
やることをメモにする
「頭が回らない」時は、頭のなかで色々な情報が処理しづらいもの。
そのため、考えれば考えるほど、何をやったら良いのか、何からはじめらた良いのかわからなくなるのです。
そこで、「やるべきこと」「やりたいこと」をメモにして自分の課題を限定すると、行動をおこしやすくなるでしょう。
「やるべきこと」「やりたいこと」をメモにする時のポイントは、次の2つです。
・課題は、3~5つくらいにする
・メモした課題に優先順位をつける
もしたくさんの課題をメモしたり、順番をつけなかったりすると、メモを見ながら何をして良いのか迷ってしまうかもしれません。
行動を起こしやすくするには、メモの内容を少なくして課題に番号を振ってみましょう。
最初におこなう「動き」を決める
「頭が回らない」時には、やる気がわかずに行動を起こせないこともあるでしょう。
モチベーションがあがらないと、「やるべきこと」「やりたいこと」を決めても、行動に移せないこともよくあります。
こういった場合、行動を起こしやすくするポイントは、最初におこなう「動き」を決めることです。
実は、やる気やモチベーションというものは、自然と待っていれば湧くものではなく、行動を起こすからこそからだの中から湧いてくるのです。
そのため、物事をおこなうモチベーションをあげるには、何かしらの行動を起こすことが必要になります。
例えば、療養中の体力づくりのために、散歩に出かけようと考えたとしましょう。
しかしながら、うつ病の人の場合、「散歩に行こう」と考えるだけでは、行動を起こすことが面倒に感じ、なかなかベッドやソファから立ち上がれません。
このようなケースでは、「散歩に行こう」と考える前に、「玄関のドアを開ける」「靴を履く」「ソファから立ち上がる」など、散歩をするための最初の「動き」を決めてみると、その動きをきっかけにして目的の行動を起こしやすくなるでしょう。
目をつぶって休む
「頭が回らない」時には、どのように頑張っても行動できない場合もあります。
というのも、うつ病になると、精神的・肉体的エネルギーが少なくなりますし、エネルギーの消耗も激しいからです。
すぐに疲れてしまうからだは、健常な頃に比べると頻回な休息が必要です。
頭に疲れを感じた時には、目をつぶって休むことをおすすめします。
「目はむき出しの脳」とも言われますが、色々な視覚情報を遮断して脳を休ませると、頭のなかで物事を考える余裕がつくりやすいでしょう。
まとめ
「頭が回らない」と色々な行動を起こしづらくなるので、それがまた自己嫌悪や罪悪感を感じさせて、気持ちの落ち込みにつながるかもしれません。
ちょっとした工夫をするだけでも、自分の「やるべきこと」「やりたいこと」がおこないやすくなるでしょう。
ただし、精神的・肉体的に疲れやすくなるうつ病では、無理をすると症状を悪化させる可能性もありますし、注意が必要です。
自分の頭に負担をかけすぎないように、うまく工夫して療養したいものです。