うつ病で休職した時の過ごし方「当事者はどう療養すれば良いのか?」
うつ病の休職中は、どのように療養すれば良いのでしょうか?
ずっと仕事漬けだった人からすると、毎日の過ごし方に悩むこともありますよね。会社や家族・パートナーには休職する申し訳なさがありますし、ゆっくり休む気持ちにもなりづらいでしょう。しっかり休息できないと、仕事復帰までに時間がかかりやすいので注意が必要です。。
僕は、うつ病になって2年が経ちますが、現在はwebライターとして働いています。仕事復帰するまでには主治医と相談したり、患者・支援者向けの本を参考にしたりして、療養期間を過ごしてきました。
そこで今回は、自分の経験を踏まえながら、うつ病で休職した時の過ごし方について紹介します。
目次
うつ病で休職しても、ゆっくり休めない
「うつ病になったら、休息が大切」と言われても、当事者のなかには、療養に専念できない人もいるでしょう。というのも、うつ病の人はまじめな性格が多く、休職をすることでまわりの人に迷惑をかけている罪悪感を持ちやすいからです。
さらに、専門家からは、うつ病になりやすい人が休息を軽視する傾向にあることも指摘されています。
うつ病になりやすい人は、「仕事」の面を重視し、「睡眠」「食事」「休息」といった面を軽視しがちです。
このように、まじめに仕事をがんばってきたからこそ、うつ病で休職をしても、なかなか療養に専念しづらいのでしょう。
休職中の過ごし方
では、うつ病の休職中は、どのように過ごせば良いのでしょうか?ここからは、休職中の過ごし方について見ていきましょう。
もっとも大切なことは「休息」
防衛医科大学校教授で、精神科医の野村 総一郎医師によると、すべてのうつ病患者に欠かせないことは「休息」だと言います。
うつ病の患者さんの場合は必ずしも何もできないわけではありませんが、普段通りに活動することができません。そのため、仕事あるいは家事の効率も上がりません。その結果、「こんなこともできないのか」「自分はダメだ」などというように、自分で自分を追い込んでしまいます。そして、ますます心の苦しみが強くなってしまうのです。このようなことがないよう、可能な限り休養をとってエネルギーの温存に努めていただかなくてはなりません。
休職をしている当事者からすると、会社や家族・パートナーに気を遣ってしまいがちですが、からだを回復させるためには休息が欠かせないのだそう。
ですから、休職中だからこそ、「いまはからだを休めることに専念する時期」といったように、気持ちを割りきって療養することが大切です。
家事は家族やパートナーに任せる
からだをしっかり休めるには、身のまわりのことを家族やパートナーに任せたいものです。うつ病になると、やる気が湧かなかったり疲れやすかったりするので、家事をするのもとても負担に感じます。
僕の場合は、自分が使った食器の後片付けなど、ちょっとした家事をおこなうにもやる気も湧きませんでした。そのため、休職をはじめた頃は、「寝ること」「食べること」以外は、妻にやってもらっていました。
やる気が出ないのに無理して家事をおこなうと、すぐに疲労が蓄積して、翌日のうつ状態が強くなるということも多いです。任せられるところは家族やパートナーに頼んで、できるだけゆっくり過ごしたいものです。
一人暮らしなら、実家に戻るのもあり
そうは言っても、一人暮らしをしている場合は、家族やパートナーに家事をやってもらうことができません。一人暮らしでは、体調が悪くても買い物や食事の準備を自分でおこなう必要があるので、無理して家事をしなければならない日も多くなるでしょう。
最近では、一人暮らし向けの「配食」「家事代行」サービスもありますが、うつ状態の時には、他人と顔を合わせるのも億劫です。ですから、一人暮らしをしている方は、家事ができるやる気や体力が回復してくるまで、実家に戻ることも考えておきたいです。
実家に戻って両親や兄弟姉妹の協力が得られると、からだにかかる負担もずいぶんと少なくなるでしょう。
家庭によって受けられるサポートは違ってきますが、療養に専念するためには、できるだけまわりの人に頼ることも重要です。
回復期の過ごし方
うつ病は体調が良くなったり悪くなったりをくり返して、回復するのが特徴です。回復の過程をあらわすと、次の図のようになります。
【うつ病の回復過程】
一連の過程のなかでも、回復期は、やる気が湧いたり身のまわりのことができるようになったりする一方で、生活リズムが乱れがちです。というのも、急性期には、睡眠不足から昼夜逆転の生活になることが多いからです。
社会復帰を目指すためには、回復期に生活リズムを整えて、体調を改善することが大切です。
生活リズムを整える
生活リズムを整えることには、次のようなメリットがあります。
規則正しい生活は、自律神経のリズムを安定させ、ストレスに対する「耐性」を高めてくれます。「耐性」とは「抵抗力」のことです。
生活リズムが整うだけでも、やる気が湧いたり、落ち込みにくくなったり、疲れやすくなったりするのです。実際に僕の場合も、昼間に活動をして夜はしっかり眠れるようになってから、家事や仕事がおこないやすくなった実感がありました。
ところが、うつ病の回復期は、生活リズムを整えることに苦労しやすい時期でもあります。なぜなら、回復期は「日内変動(1日のなかで体調が変動しやすいこと)」や「日差変動(その日ごとに体調が変動しやすいこと)」により、体調の変動も大きいからです。
毎日の体調の変動が大きいと、「本当に回復するのか?」不安になることがあるかもしれませんが、規則正しい生活をしていると体調も安定しやすいです。
回復期は体調が変動しやすいことを踏まえながら、一定のペースで毎日を過ごせるように、徐々に生活リズムを整えるようにしましょう。
好きなこと・やりたいことをやる
うつ病の回復期は、まだまだエネルギーが不足しており、何をするにも疲れやすいです。人によっては、自宅のまわりを散歩したり、家事をおこなったりするだけでも、ぐったりしてしまうかもしれません。
体調が変動しやすく、思ったように動くことができないのも、回復期の特徴です。誰でも、「早くうつ病を治したい!」と気持ちが焦るので、より闘病をがんばろうとするでしょう。
ところが、病気を治すには、むしろ闘病をがんばらないほうが良いとも言われます。精神科医の樺沢 紫苑医師は、著書の「頑張らなければ、病気は治る」のなかで、次のような考えを述べています。
病気を治そうと頑張る。しかし、なかなか治らない。その苦しい現実が大きなストレスとなって患者さんにのしかかります。24時間365日、病気のことが頭から離れない。病気に抗う(あらがう)、病気と闘うことで、ストレスは何倍にも膨れ上がり、それこそが病気が治らない最大の原因となる。
言い換えると、必死に治そうとがんばるよりも、好きなことややりたことに集中して、うつ病のことを考えない時間をつくることも大切なのでしょう。
僕は、回復期には、このブログを書くことに多くの時間を使っていました。僕の場合は、パソコンで文章を書いている時がもっとも集中しやすく、うつ病のつらさを忘れることができたからです。
もちろん、病気を忘れられる活動は、人によって違うでしょう。外で誰かと一緒におこなう活動のほうが合っている人もいれば、自宅でひとり黙々とおこなう活動が良い人もいます。
いずれにしても、自分の興味がある活動をおこなって、病気を忘れられる時間をつくることが肝心です。
仕事復帰する前の過ごし方
休職の後半では、仕事復帰に向けた準備が必要です。うつ病で休職をすると、働く感覚や自信を失っていることも多いですから、何も準備せずに仕事復帰をすると、ストレスから再発しかねません。
そこで、最後に仕事復帰に必要な準備について紹介します。
仕事や通勤のシミュレーションをする
働く感覚や自信を取り戻すには、仕事や通勤のシミュレーションが大切です。図書館などを利用して勤務時間を過ごす「模擬出勤」や出勤経路を往復する「通勤訓練」は、復職のための準備として推奨されています。
僕は、webライターとして仕事復帰したいと考えていたので、午前中を中心にカフェでブログを書いたり、調べ物をしたりしながら、働くリズムをつくっていきました。
サラリーマンの方であれば、書類の作成や電車通勤などの練習をしておくと、復職するイメージがしやすいでしょう。
考え方や生き方を見直してみる
また、うつ病を再発しないためにも、これまでの考え方や生き方を見直す作業も大切です。うつ病の発症には、ストレスが深く関わっていると言いますが、自分にとって何がストレスになるか知っておけると、再発を防ぎやすいでしょう。
うつ病の発症前後を振り返ってみると、ストレスを感じやすかった考え方やネガティブな気分に陥りやすかった状況などに気づくものです。
例えば、僕の場合は、「業務を完璧にこなそうとするプレッシャー」や「他人に評価をされる緊張感」などによってストレスを感じやすく、落ち込んだり不安な気持ちになったりすることがよくありました。
だから、仕事復帰をする時には、「業務を完璧にこなそうとしない」「他人の評価を気にしない」ことを意識しながら、働いていこうという心構えをしたんです。
仕事のストレスで、再び体調を崩さないようにするためには、仕事復帰をする前に自分の苦手な状況や環境を知っておきましょう。
まとめ
うつ病の休職と一口に言っても、人によって形は色々です。
どのように療養していくのか?具体的な過ごし方は、主治医ともよく相談しながら考えたいものです。
うつ病から仕事復帰した体験談として、紹介した内容が療養の参考になれば幸いです。
それと、うつ病の回復期には波があり、体調の変動にも悩まされやすいです。以下の記事では、体調の変動が大きい時期の過ごし方について紹介しているので、よかったら参考にしてみてください。