抗うつ薬を変更する方法とは?精神科で変更した当事者の体験談を紹介
「抗うつ薬」と一口に言っても、現在は色々な種類があるので、なかには自分のからだに合わない薬もあるでしょう。
ただ、当事者の立場からすると、抗うつ薬の変更について主治医へ相談しづらいものです。
専門家に意見するように感じられるから、薬の変更の相談をためらってしまうということもありますよね。
僕は、うつ病になって約2年が経つのですが、主治医と相談しながらこれまでに何度か抗うつ薬を変更してきました。
そこで今回は、自分の経験を踏まえながら、抗うつ薬を変更する時の注意や主治医への相談のポイントについて紹介します。
目次
抗うつ薬の変更を考えるタイミング
そもそも、抗うつ薬は、どのようなタイミングで変更するものなのでしょうか?
東邦大学の名誉教授で、心療内科医の坪井 康次医師によると、抗うつ薬は「症状が改善しない」または「副作用がひどい」時に変更を考えると言います。
症状が改善しない場合には、同じ薬を増量して経過を見るか、あるいは薬の種類を変更して効果を検証しながら治療していきます。
副作用がひどくてがまんができないときは、遠慮せずに主治医に相談して、薬の量を減らすか、あるいは薬の種類をかえる、副作用をやわらげる薬を加える、などの対策を考えてもらいましょう。
(引用 坪井 康次(2017):患者のための最新医学 うつ病.高橋書店)
僕の場合は、抗うつ薬の副作用が強かったことから、薬の変更をしました。
もともとは「ミルナシプラン」という薬を服用していたのですが、副作用として排尿の困難さが強くあらわれたため、主治医に相談したところ、「レクサプロ」という抗うつ薬にに処方を変更してもらったんです。
このように、服用している抗うつ薬で症状が改善しなかったり、副作用がつらかったりした場合には、まずは主治医に相談するようにしてみましょう。
抗うつ薬の変更方法は、2種類ある
抗うつ薬を変更するには、服用している薬を「一気に変更する」方法と、「段階的に変更する」方法の2種類があります。
一気に変更する
服用している抗うつ薬を止めて、まったく別の種類の抗うつ薬に変更する方法です。
段階的に変更する
服用している抗うつ薬の量を半分にして、減らした分を別の種類の抗うつ薬に変更する方法です。
段階的に変更する方法では、次のようなスケジュールで抗うつ薬を変更していきます。
変更前 | 抗うつ薬 A | 抗うつ薬 A |
変更中 | 抗うつ薬 A | 抗うつ薬 B |
変更後 | 抗うつ薬 B | 抗うつ薬 B |
抗うつ薬を段階的に変更する方法は、一気に変更する方法に比べると、からだが新しい薬に慣れていきやすく、離脱症状の影響も少ないのだそう。
そのため、抗うつ薬の変更を不安に感じる方は、主治医と相談しながら、薬を段階的に変更していくと良いかもしれません。
抗うつ薬を変更する時に注意すること
では、抗うつ薬を変更する時には、どのような点に注意をしておけば良いのでしょうか?
ここからは、抗うつ薬の変更前に、当事者が注意しておくべき点について見ていきましょう。
離脱症状
服用している抗うつ薬が変わると、「離脱症状」があらわれる場合があります。
離脱症状とは、抗うつ薬を減らしたり、変更したりする時に見られるからだの反応のことです。
人によって、からだの反応の仕方は違いますが、一般的には、次のような離脱症状があらわれる可能性があります。
① 吐き気やおう吐、食欲不振といった消化器症状
② 発汗や火照り、いつもより暑く感じるといった自律神経系の変化
③ 寝にくくなったり悪夢を見たりする
④ めまいやくらくら感、ふらつき
⑤ 手の震えや脚のムズムズ、話しにくい等の動作の異常
⑥ 気分の変動、焦燥不安感、イライラ、困惑などの精神症状
⑦ 電気ショックを受けたような異常感覚や耳鳴り、音への敏感さなど感覚の変化
⑧ 疲労感、全身倦怠感、筋肉痛、頭痛といったインフルエンザのような症状(引用 地域精神保健福祉機構・コンボホームページ)
離脱症状は、抗うつ薬を変更した時にあらわれる一時的な症状です。
仮に離脱症状があらわれたとしても、「おさまるまで待つ」か「変更前の抗うつ薬を再開する」などによって対応できるので、過剰に心配することはないんだそう(参考 松崎朝樹(筑波大学附属病院 精神神経科 講師):抗うつ薬の離脱症状[本格]SSRIを急に止めたとき.YouTube)。
僕の場合も、抗うつ薬の変更をはじめてから1~1週半ほど、強い無気力感・不安感・倦怠感などに悩まされましたが、2週間が経つ頃には離脱症状がなくなりました。
離脱症状は、実際に抗うつ薬を変更してみないとあらわれるかどうかわかりません。
ですが、事前に「離脱症状があらわれる」可能性を頭に入れておくと、いざ調子を崩しても状況がすぐに理解できるので安心です。
スケジュールに余裕を持つ
離脱症状は、抗うつ薬を変更した1~3日後から1週間くらいの期間にあらわれやすいと言われています。
離脱症状の種類にもよりますが、気分の変動や焦燥感・不安感などの精神症状が強くなると、身のまわりのことをおこいづらくなることも。
そのため、抗うつ薬を変更する時には、仕事や遊び、特別なイベントなどの予定を組まないことをおすすめします。
もし外せない予定を組んでしまっていると、つらい離脱症状があるにも関わらず、無理をして外出しなければなりません。
体調を崩したとしてもゆっくり休みやすいように、抗うつ薬を変更する時は、スケジュールに余裕を持てると良いでしょう。
主治医に相談するには?
抗うつ薬を変更するとは言っても、自分からは主治医に相談しづらいこともあるかもしれません。
薬の変更を相談するということは、当事者の立場からすると、主治医の治療方針を否定してしまうようにも感じられるものです。
誰でも、主治医と良い関係を保ちながら治療を続けていきたいですから、自分から相談する勇気が出ないこともあるでしょう。
ところが、実は専門家の医師であっても、抗うつ薬が合う・合わないかは、服用してみないとわからないことも多いのだそう。
僕が通院している精神科の医師も、抗うつ薬の変更を相談した時には「試してみないと、わからない。」と言っていました。
うつ病の自覚症状や抗うつ薬の効果・副作用は、当事者にしか実感することができません。
だから、主治医の立場からしても「当事者の訴え」をもっとも重要視しているはず。
そう考えると、抗うつ薬の変更を主治医に相談しやすいのではないでしょうか?
家族やパートナーへの相談も大切
また、家族やパートナーと一緒に生活している場合は、抗うつ薬の変更や離脱症状があらわれる可能性を相談しておきましょう。
というのも、離脱症状の程度によっては、まわりの人のサポートが必要になるからです。
また、何も知らされていない家族やパートナーは、体調不良の様子を見て「うつ病が悪化した」と心配するかもしれません。
抗うつ薬の変更を過剰に心配する必要はありませんが、一時的に体調が悪化する可能性もあります。
少しでもつらい状況を回避できるように、主治医や家族・パートナーと相談しながら抗うつ薬を変更すると良いでしょう。