「やむを得ず主夫になる」うつ病をきっかけに主夫になった元サラリーマンの生き方とは?
体調を崩して仕事ができなくなると、主夫という生き方も考えたくなるもの。
最近では、家事や育児をおこなう男性も多いですし、主夫として生きる人も増えています。
ところが、自分のまわりを見渡してみると、世間で言われているほど主夫をしている男性は少ないのが現状です。
そのため、主夫になったきっかけや主夫の生活の様子を知りたいと思っても、相談をしたり具体的なアドバイスをもらったりすることはできないでしょう。
実は僕も主夫として生活をするようになり、1年半ほどが経ちました。
それまではずっとサラリーマンをしていたので、最初は主夫の生活に抵抗があり、身近に同じような生活をしている人がいなかったことから、心細い気持ちでした。
実際の経験談を知れば、主夫という生き方を選ぶ不安も減るのではないでしょうか?
そこで、自分と同じように「主夫」になろうと考えている人の参考に、主夫になったきっかけや生活の様子を紹介します。
仕事ができずに人生を諦めかけていたとしても、主夫という新しい生き方を選ぶことで、自分の人生にやりがいや楽しみを見いだせるかもしれません。
やむを得ず主夫になる
僕が主夫になったきっかけは、うつ病を患ったことにあります。
当時サラリーマンとして会社勤めをしていた僕は、職場の人間関係によるストレスからうつ病になりました。
精神科でうつ病の診断を受けた後に3ヵ月間の休職をしたんですが、体調は戻らず、復職後1ヵ月が経過する前に会社を退職したんです。
「うつ病になった原因は職場の人間関係のストレスにある」
そう考えていたので、会社を退職さえすれば体調は戻ると思っていました。
ところが、会社を退職して3ヵ月が過ぎても体調は回復しなかったんです。
会社を退職してストレスがなくなることと、うつ病が治るということは別の問題だったのかもしれませんね。
会社を退職してからも、体調が悪い日には、ベッドからほとんど起き上がれなかったこともよくありました。
それでも、体調が良い日にはパソコンを使った簡単な作業ができたので、自宅で療養しながら、インターネットを利用してwebライターの仕事をはじめました。
ちょっとでも「家計の足し」になればとも思ったんです。
でも、仕事を再開してみると、夜に眠れなくなったり仕事の不安で頭が働かなくなったりする日が増えました。
「クライアントに怒られたらどうしよう…」
「自分は無能なライターだと思われているかもしれない…」
もともと職場の人間関係によるストレスでうつ病になったので、そういった他人からの批判や指摘を受ける状況に、プレッシャーを感じすぎてしまっていたのでしょう。
うつ病になってからの僕は、他人の顔色を考えすぎるあまり、まともに仕事ができなくなっていました。
そこで、しばらくは仕事のことを考えるのはやめて、主夫に専念しようと考えるようになったんです。
インターネットの主夫に関する記事を読んでいると、「仕事よりも家事や育児のほうが向いている」と考えて主夫になる人も多いようですが、僕の場合は「やむを得ず」主夫になるような感じでした。
これは個人的な印象ですが、主夫になった人の中には、うつ病などの病気がきっかけだったという人も多いのではないでしょうか?
もちろん、やむを得ず主夫になったからと言って、僕は主夫(主婦)業を甘くみているわけではありません。
むしろ主夫をやってみてからは、仕事とは違った大変さがたくさんあることに気づきました。
僕が言いたいことは、主夫は会社で働けなくなった男性が選べる数少ない生存戦略のひとつだということです。
もし職業人として生きることができずに人生を諦めかけているのだとしたら、主夫という生き方を選んでみるのも良いかもしれませんね。
主夫になる時に邪魔する価値観
主夫になることを考えたとしても、「まさか自分が主夫だなんて…」と思う気持ちもあるでしょう。
というのも、ほとんどの男性は大人になったら働いて、お金を稼いで、家族を養うものと言われ続けて育ってきましたから。
やむを得ず主夫を選ぼうとする人がもっとも悩ましいところは、男性や夫、父親に対する自分の価値観を変える必要があることです。
こういった価値観が根強いほど、自分が主夫になることへの抵抗を感じるでしょう。
当初は、僕も主夫を名乗ることに抵抗がありました。
仕事をせず、妻に養われ、子どもに働く姿を見せられない。
こんな夫や父親でいいのか?
という自分の生き方への迷いがあったのかもしれません。
だって、子どもの頃から想像していた自分の生き方とは、ずいぶんと違った人生になっていましたから。
ところが、主夫の生活をするようになって1年ほどが経過すると、徐々に仕事や夫、父親に対する自分の価値観が変わってきたことに気づきました。
・会社で働けないなら自宅で働けばいい
・自分は家事を通して家族を支える
・我が家では、父親が中心となって家事と育児をおこなう
こうした価値観の変化によって、主夫としての生き方がずいぶんと楽に感じられるようになったんです。
働き方、家族の支え方、父親のあり方。
これらは、世間体などを気にして「こうあるべき」と決めつけるものではなく、本来それぞれの家族や家庭の形を作っていくものではないでしょうか?
主夫の生き方を選びきれない理由は、自分が成長する中で培ってきた価値観が邪魔をしているのでしょう。いままでの生き方を変えて違う道を進んでいく時には、自分や自分の家庭の価値観を新たに作っていくことが重要です。
「専業主夫」になる
働くことができない時には、まずは仕事から離れて「専業主夫」として生活してみると良いでしょう。
専業主夫であれば、家事や育児をおこなうことが自分の役割になるので、少なくとも仕事や仕事上の人間関係によるストレスはなくなります。
専業主夫は、仕事がきっかけで体調を崩した人にとっては、心身を療養させやすい生き方です。
もちろん、仕事に比べて家事や育児が楽ということではありません。会社での仕事と比べてみると、家事や育児には主に次のような大変さがあります。
・家事や育児には終わりがない
・家族のペースやタイミングに合わせて動かなければならない
・子どもの機嫌を伺わなければいけない
家事をする状況や子どもの年齢によっては、仕事をしているほうが楽に感じられることもあるでしょう。
いまの僕の生活を例にすると、上司に怒られるよりも妻に嫌われるほうが死活問題ですし、自分の部下に仕事をするよう促すよりも子どもに宿題をさせるほうがよっぽど難しく感じます。
いくら大好きな家族でも、家族に合わせて柔軟に生活しなければならないという点で、専業主夫は大変です。
一方で、専業主夫になる最大のメリットは、仕事で感じていたストレスがなくなることです。
毎朝つらい思いをして会社に行かなくていいですし、苦手な人間関係にストレスを感じる必要もありません。
上司や同僚、お客さんの顔色を気にせずに生活できる環境は、精神が病んだ状態にはとても向いています。
色々なプレッシャーを感じながら仕事をすることはできないけれど、家庭で自分や家族のためならがんばれるのであれば、まずは「専業主夫」をしてみると良いでしょう。
「兼業主夫」という生き方もある
体調が回復してきたら、家事や育児をしながら働くこともできるようになります。
現在僕は、家事や育児の合間にwebライターなどの仕事をしているのですが、自分の「兼業主夫」としての代表的な1日を簡単に書いてみました。
6:00 | 起床、朝食の準備 |
6:30~7:30 | 朝食、子どもを小学校に送り出す準備 |
7:30~9:00 | 片づけ、掃除、洗濯 |
9:00~10:00 | 休憩 |
10:00~12:00 | 自宅で仕事 |
12:00~13:00 | 昼食 |
13:00~14:30 | 仕事 |
14:30~17:00 | 買い物、子どもと過ごす(宿題、遊ぶなど) |
17:00~18:00 | 夕食の準備 |
18:00~19:00 | 夕食 |
19:00~20:00 | 休憩 |
20:00~21:00 | お風呂、子どもを寝かせる準備 |
21:00~23:00 | 自由時間(仕事、趣味など) |
23:00 | 就寝 |
「兼業主夫」は、仕事と家事や育児のバランスが重要です。
夫婦の考え方にもよりますが、家事や育児の負担は自宅に長くいるほうが多くなります。
そのため、自分が疲れている時や仕事が忙しい時にも家事や育児をおこなわなければならない「兼業主夫」は、ついついオーバーワークになりがちです。
以前は僕も休憩や自由時間を省き、仕事と家事や育児ばかりをおこなっていたら、見事にからだを壊しました。
「燃え尽き症候群」とでも言いましょうか、ある日を境に全く何もやる気が起きなくなってしまったのです。
からだを休ませたり、気晴らしをしたりする時間を全く作らなかったことで、自分の中のエネルギーが枯渇してしまったような感じです。
そして、こういった自分のからだを壊した経験を通して、「兼業主夫」になる時のポイントに気づきました。
・はじめから仕事をたくさんやらない
・疲れきる前に家族にも頼る
・仕事も家事や育児も、手を抜けるところは積極的に抜く
・休憩や自由時間を大事にする
家族のために仕事をしてきた人は、まじめながんばり屋が多いです。
ですから、仕事ができるようになってきたら、仕事も家事も育児も全力でがんばりたがりますが、そもそも仕事をがんばりすぎて体調を崩したことを忘れてはいけません。
「兼業主夫」という生き方を選ぶ時には、仕事の達成感や充実感も感じながら、自分のからだを無理させないように、家事や育児とのバランスをとっていけると良いでしょう。
主夫は何人くらいいるのか?
ここまで、主夫になったきっかけや主夫としての生き方について解説してきましたが、それではどれくらいの男性が主夫をしているのでしょうか?
人数が少なくても、具体的な割合を知るだけで主夫を選択する不安も減るでしょう。
2017年に総務省統計局は、「就業構造基本調査」の中で、年齢や性別ごとにどのような就業形態で生活しているか調査をおこないました。
この調査結果によると、主夫(「専業主夫」「兼業主夫」)をしている男性は全体の約10%(1割)でした。
日本人男性の約1割しか主夫がいないので、自分の身近に「主夫をしている」と宣言している人がいないのも無理がありません。
男性の家事や育児参加、働き改革などが盛んに言われていますが、まだまだ日本では女性ばかりが家事や育児をおこなっている現状です。
一方で、主夫になりたいと思っている男性は増えてきているようです。
2018年に、楽天グループの結婚相手紹介サービス「楽天オーネット」が新成人を対象におこなった恋愛・結婚に関する意識調査では、「専業主夫になりたい?」という質問に対して、15.7%の男性が専業主夫になりたいと回答しました。
また、2018年~2019年にかけて放映されていた日曜定番の子ども向けアニメ「HUGっと!プリキュア」では、プリキュアのメンバーの1人である「薬師寺さあや(キュアアンジュ)」のお父さんは、専業主夫でした。
新成人を対象にした意識調査や子ども向けのアニメの傾向からしても、いまは男性が主夫として生きることを選びはじめた転換期なのかもしれません。
まだまだ、「えっ…主夫?そっ…そうなんだ…。」と不思議がられるような時代ですが、自分の子どもが大人になる頃は、主夫のいる社会が日常になっているかもしれませんね。
いまの自分にできる生き方を選ぶ
男性に生まれてきたことにより、会社で働くことが絶対的な生き方に思えることもあったでしょう。
でもその考え方は、価値観が多様化した現代社会では、生き方のひとつに過ぎません。
体調を崩して会社で働けない状態になったのなら、いままでとは違った生き方を考える必要もあるでしょう。
もしかしたら主夫としての生き方のほうが合っているかもしれませんし、将来的にはまた仕事をする生活に戻っていくかもしれません。
もちろん、先のことは誰にもわかりません。
将来を考えすぎると身動きもとれなくなりますし、肝心なことは、いまの自分ができる生き方を選ぶことです。
働くことはできなくても主夫業ができるのであれば、一度は仕事から離れた人生について考えてみてはいかがでしょうか。
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