うつを理解してもらえない…当事者ができる家族やパートナーとの向き合い方とは?
家族やパートナーには、うつを理解してもらいたいものです。
大切な人につらい現状を理解してもらえるだけでも、気持ちが楽になりますよね。
でも、家族やパートナーによっては、うつをほとんど理解してくれないことも。
当事者のなかには、まわりの人の理解が得られないことから孤独を感じたり、サポートがもらえなかったりして、悩んでいる人も多いでしょう。
僕は、うつを発症して2年になりますが、これまで家族に現状を理解してもらえず、つらい気持ちになることがよくありました。
そこで今回は、うつを理解してもらえない理由を説明しながら、つらい気持ちを解消する方法について紹介します。
目次
うつを理解してもらえない理由
当事者としてはつらい状態にも関わらず、なぜ、家族やパートナーにはうつを理解してもらえないのでしょうか?
その理由は、主に次の2つです。
異常が目に見えにくい
うつによるからだの異常は、目に見えにくいのが特徴です。
例えば、骨折をした時には、レントゲン写真や松葉杖・包帯など、健常な頃にはなかった異常が目に見えます。
あるいは、胃潰瘍や肺炎などの内臓の病気であれば、検査データを通してからだの中の異常が見てとれます。
他の病気やケガではわかりやすいからだの異常が、うつの場合は目に見えにくくなるので、当事者が陥っているつらい状況がまわりの人には理解しづらいのです。
「憂うつな気分」と「うつ病」を区別できない
家族やパートナーは精神病の専門家ではないので、「憂うつな気分」と「うつ病」の区別がつきません。
病気とはいかないまでも、誰もがストレスを感じたりつらい体験をしたりすれば、「憂うつな気分」になります。
そのため、家族やパートナーからすると、体調が悪くて寝込んでいる様子を見ても、一時的な「憂うつな気分」に陥っているようにしか見えないこともあるのです。
経験したことがない
また、経験したことがないと、うつの当事者がどのようなつらさを抱えているかわからないものです。
例えば、気分の落ち込みややる気が湧かなくなるだけではなく、考えがまとまらずに思ったことが言えなかったり、集中力が続かず簡単な仕事でミスが増えたりするなど。
うつを経験したからこそわかる問題は多いです。
言い換えると、うつを経験したことがない家族やパートナーには、当事者がどのようことで悩みやすいのかが理解できません。
理解してもらうためにできること
うつを理解してもらえない時には、当事者は、家族やパートナーにうまく自分の現状を伝えていくことが大切です。
つらい現状を知ってもらえないと、悩みを聞いてもらったり、必要なサポートを受けたりできないということにもなりかねません。
ここからは、うつを理解してもらうために、当事者ができることを紹介しましょう。
自分のタイミングで気持ちを伝える
うつで悩んでいる方のなかには、「家族やパートナーなら、何も言わなくても自分の気持ちを理解してくれる」と考えている人もいるでしょう。
ところが、これは大きな間違いです。
なぜなら、うつを発症した人は、表情や口数が極端に少なくなりますし、寝込んだり部屋にこもったりしがちなので、家族やパートナーからすると、当事者が何を考えているのかわからなくなるからです。
実は、うつの患者・支援者向けの本では、家族やパートナーの役割が次のように説明されています。
うつ病の患者さんには、基本的に「受け身」で接してあげることが大切です。もしも患者さんが重い口を開いて、自分から話そうとしたときには、じっくり話を聞いてあげましょう。何か聞きたいことがあっても、うつ病の患者さんは会話そのものを苦痛に感じている場合もあるので、なるべく本人の話を聞くだけにしましょう。
このように、うつの専門家も、精神的な負担がかからないようにするには、当事者のタイミングで話はじめることをすすめています。
もちろん、家族やパートナーとのコミュニケーションを義務的に感じる必要はありませんが、「考えていること」「悩んでいること」「くだらないこと」など、自分のタイミングで話ができると、まわりの人に気持ちを理解してもらいやすいでしょう。
サポートが欲しい内容や理由を伝える
「うつの回復には、家族やパートナーのサポートも重要」と言われますが、実際には、家族やパートナーは当事者の状況がよくわからないことも多いです。
そのため、当事者が困っている時でも、どこに、どのようなサポートを必要としているのかイメージできません。
そこで、何か困っていることがある時には、家族やパートナーにサポートが欲しい内容を具体的に伝えると良いでしょう。
具体的なサポート内容がわかれば、家族やパートナーは協力しやすくなりますし、当事者としてはからだの負担も減らせます。
この時、サポートが必要な理由も一緒に伝えると、家族やパートナーの協力がより得られやすくなるかもしれません。
例えば、
「今日は疲労感が強いから、家事は全部やってもらっていい?」
「気分がそわそわして落ち着かないから、部屋に一人でいるね。」
「からだが重いから、ベッドで寝てる。」
など
サポートを頼む時に理由も伝えて、体調について知ってもらうことで、自分の状態やつらい気持ちを理解してもらいやすくなるでしょう。
伝えたいことをメモしておく
うつになると、家族やパートナーと話をする機会があっても、「うまく言葉が出てこない」こともよくあります。
これは、うつの精神症状に影響するものです。うつでは、言葉を考えたり話したりすることを億劫に感じる症状がでます。
さらに、頭の中で物事を考えたり言葉をまとめたりすることもしづらくなります。
このような精神症状があると、「肝心な時に伝えたい言葉や考えが話せなくなる」という問題も出てきます。
このような問題を解決するには、家族やパートナーと話をする時に備えて、普段から思いついたことをメモしておくことがポイントです。
メモを見ながら話ができると、気持ちを整理しやすくなったり、自分の考えを思い出しやすくなったりしますよ。
ラインやメールを使う
顔を合わせて話をする機会がつくりにくい場合は、ラインやメールを使っても良いかもしれません。
うつでは、話しをしたい気持ちになるタイミングがとても少なくなるので、コミュニケーションの手段にこだわっていると、いつまで経っても自分の気持ちを伝えられません。
ラインやメールを使えば、話しをしたいタイミングで気持ちを伝えることができます。
特に、普段から恥ずかしくて伝えづらい「感謝の気持ち」は、ラインやメールを使ったほうが素直に伝えやすいでしょう。
理解されない時に、楽になる考え方
家族やパートナーと話をしても、気持ちが理解されないこともあります。
そうかと言って、自分の気持ちに共感するすることを無理強いはできません。
理解されないことでつらい気持ちになった時には、次のように考えてみると、現状を楽に考えやすくなるでしょう。
理解できないこともある
病気に関わらず、大切な家族やパートナーだからと言って、何でもかんでもお互いを理解できるものでもありません。
特に、自分が経験したことがないと、悩みやつらさをイメージすることが難しいです。
例えば、僕は、妻や娘と一緒に暮らしをしており、2人のことをとても大切に思っているのですが、妻が出産した時の陣痛のつらさが全くわかりません。
理由は簡単で、子どもを産んだ経験がない人には、陣痛をイメージすることはできても、当事者が感じた本当のつらさは実感できないからです。
誰でも経験したことがなければ、当事者が感じる本当のつらさは理解できません。
言い換えると、「経験がなければ、理解できないこともある」と考えてみると、家族やパートナーが置かれている立場もわかるので、気持ちを割りきりやすいでしょう。
先入観を捨てる
「家族だから、理解するべき」
「パートナーなら、わかって当たり前」
家族やパートナーに対する先入観があるほど、理解されない時にはつらい気持ちになりやすいです。
先入観があると、相手が期待通りの言動をしてくれなかった時に裏切らたような気持ちになって、落ち込んだり怒りがこみ上げたりするからです。
こうした先入観は、家族やパートナーばかりはでなく、当事者自身を苦しめることにもつながります。
というのも、うつの当事者になると、「家族なのに、自分は何の役にも立てない」「パートナーなのに、記念日に何にもしてやれない」など、思うように家族サービスや仕事ができない自分に、嫌悪感や罪悪感を持ちやすくなるからです。
「家族やパートナーは違う人間で、自分とは異なった考えや人生経験をしている」
このように考えてみると、家族やパートナーに、自分の気持ちを伝える必要性にも気づけますし、理解してもらえない時にも気持ちを楽に保ちやすいでしょう。