謝り癖がある人の心理とは?いつも「すみません」と言ってしまう口癖の直し方
悪くもないのに謝ってしまう…
謝り癖があると、いつも他人に気を遣っているようで疲れてしまいますよね。
何かにつけて「すみません」「申し訳ありません」「ごめんなさい」と言ってしまう自分に、嫌気がさすこともあるでしょう。
とはいえ、身にしみついた口癖は、どう直していいかわからないものです。
ここでは、つい謝ってしまう心理を説明するとともに謝り癖の直し方についてお伝えします。
目次
謝り癖がある人の心理
東北大学の名誉教授であり、社会心理学者の大渕 憲一氏は、「謝罪」という行為を次のように表現しています。
謝罪とは、責任を自ら認めるというリスクをおかしながら、これによって罰や不利益を回避しようとするアクロバティクな試みなのです。
(引用 大渕 憲一(2010):謝罪の研究: 釈明の心理とはたらき.東北大学出版会)
謝り癖がある人は、どのような罰や不利益を回避しようとしているのでしょうか?
他人を不快な気持ちにさせたくない
人間関係でトラブルが起こった時、自分か他人のどちらかが折れなければ、口論や喧嘩に発展しかねません。
こうした衝突を避けるために「とりあえず謝罪」してしまうのが謝り癖のある人です。
謝罪したということは、自分の否を認めたことになります。
となれば、他人としては問題の責任を追及されないので、不快感を抱かずに済みますよね。
このように、謝り癖がある人は、他人を不快な気持ちにさせないために、何かにつけて謝罪してしまうのです。
自分を守りたい
謝罪すれば、他人を怒らせたり相手の怒りを早くおさめたりできます。
他人を怒らせると、文句や嫌みを言われたり否定的な言葉をかけられたりするリスクがあいます。
そういう状況に陥ったら、気持ちが落ち込んでしまうかもしれません。
言い換えれば、他人を怒らせさえしなければ、自分が傷つかなくて済むものです。
謝り癖がある人は、他人よりも下手にまわることで、自分を守ろうとするところがあります。
自分に自信がない
謝り癖がある人は、自分に自信がありません。
自信がないため、人間関係でトラブルがあるといつも自分のほうが悪いような気がしてしまい、責任をとろうとしがちです。
心理学では、このような思考回路を「個人化」と言います。
【個人化】
何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合にも自分のせいにしてしまう(引用 デイビッド・D・バーンズ(2013):いやな気分よ さようなら コンパクト版.星和書店)
謝り癖がある人は、トラブルの原因が自分にあると考えがちなので、つい謝罪してしまうのです。
謝り癖は、自己評価を下げる
謝罪とは、自分の罪や過ちを他人にわびること。
ですから、「すみません」と謝ってばかりいれば、他人に迷惑をかけたり悪いことをしたりしてしまったという気持ちにかられやすいものです。
また、いつも自分が下手にまわっていると、自己評価が下がってしまいます。
自分に責任がない謝罪であればなおさら。
謝罪すれば他人との衝突を避けられますが、失うものもあるのです。
罪や過ちを犯したなら謝罪するべきですが、「すみません」が癖になっているのなら、自己評価を下げないために謝り癖を直しましょう。
謝り癖の直し方
では、謝り癖を直すにはどのようにすれば良いのでしょうか?
ここからは、謝り癖の直し方を紹介します。
「すみません」を「ありがとう」に
まずは、「すみません」を「ありがとう」に変えましょう。
謝り癖がある人は、日常のあらゆる場面で謝罪の言葉を使っています。
例えば、仕事で同僚にサポートしてもらった時、家族に家事をやってもらった時、道をゆずってもらえた時、物をとってもらった時など。
助けてもらったり親切にされたりするたびに、相手に「すみません」と言ってしまう人も少なくないはず。
しかしながら、「すみません」などの謝罪の言葉は、罪悪感や自責といった感情が連想させるため、口に出すと自分の気持ちもネガティブになりがちです。
このように、ネガティブな表現を使うことによりネガティブな気持ちになることを「プライミング効果(感情プライミング)」と言います。
【感情プライミング】
ポジティブ感情を喚起すればポジティブな事象の記憶想起やポジティブな判断が促進され、ネガティブな感情を喚起すると、ネガティブな事象の記憶想起やネガティブな判断が促進されるとするもの
(引用 北村 英哉(2013): 特集:高次認知過程における意識的,無意識的処理 社会的プライミング研究の歴史と現況-特性プライミング,目標プライミング,評価プライミング,感情プライミング,マインドセット・プライミングの研究動向-.認知科学,20(3), 297-298)
要するに、「謝罪」というネガティブな表現を使うほど、自分自身に対する印象もネガティブなものになってしまうのです。
逆に、「感謝」というポジティブな表現を使えば、自分自身に対する印象もポジティブなものにすることができます。
ですから、どちらかを選べる場面なら、「すみません」ではなく「ありがとう」を使いましょう。
自分自身に対する印象をポジティブなものに変えれば、「とりあえず謝罪する」以外の方法で、人間関係のトラブルを解決できるようになります。
謝罪の言葉を言い換える
日常生活では、社交辞令で謝罪の言葉を使わなければならない時も多いですよね。
クライアントや上司に依頼したり、同僚に助けてもらったりした時には、「申し訳ありません」「すみません」という言葉を使いがちです。
このような場合には、次のように別の表現に言い換えてみましょう。
■クライアントや上司に依頼する時
お忙しいなか「申し訳ありません」が、ご対応いただけますでしょうか?
→お忙しいなか「恐れ入ります」が、ご対応いただけますでしょうか?
■同僚に助けてもらった時
資料の作成を手伝ってもらい、「すみません」
→資料の作成を手伝ってもらい、「助かりました」
相手としては、悪いことをしたのではないのなら、あなたに謝ってほしいわけではありません。
となれば、言葉を言い換えたほうがお互いに気分も良くなるはずです。
クッション言葉として、「すみません」といった謝罪の言葉を口に出したくなった時は、別の表現に言い換えてみるのも、謝り癖を直す良い方法です。
(参考 谷口 高士(1991):認知における気分一致効果と気分状態依存効果.心理学評論,34(3),319-344)
言葉を変えると、気持ちも変わる
自分が悪くないのに謝罪してばかりいれば、罪悪感や自責感にかられたり、自己評価が下がったりします。
これらの問題を改善するには、言葉を変えてみましょう。
ポジティブな表現や言葉を使えば、自分の気持ちもポジティブになるものです。
自信を持って生活できるようになるために、「謝り癖」を直してみてはいかがでしょうか。