認知行動療法ノートの書き方は、気持ちを吐き出すことから始めてみよ!
認知行動療法を行うと、うつうつした気分や不安に陥りやすい考え方を変えることができます。
専門家に頼らず、「自分でもできる」という取り組みやすさも、認知行動療法の魅力のひとつです。
しかしながら、自分で挑戦しようとしても、どのようにおこなって良いか悩むもの。
はじめ方がわからず、難しく感じられることもあるでしょう。
僕は、うつ病の当事者であり、認知行動療法の本を何冊も読んできました。
多くの本を読み、認知行動療法を実践する中で気づいたことは、認知行動療法は、自分の考えや気持ちをノートに書きはじめることから始められるということです。
というのも、認知行動療法のポイントは「自分の気持ちを振り返りながら、考え方の癖に気づくこと」だからです。
形にこだわり過ぎるよりも、まずはやってみることのほうが重要です。
また日常的に文章を書き慣れていないと、ノートに何を書いて良いのか悩み、手が止まっては長く続けられないといことにもなりかねません。
この記事では、うつ病の当事者として、認知行動療法に取り組んで気づいたことやノートを使った実践例について紹介します。
どういった形で自分の考え方の癖に気づけば良いのか、実際におこなってみた方法を見ていきましょう。
目次
認知行動療法のポイントは、自分の考え方の癖に気づくこと
認知行動療法では、自分の考え方の癖に気づくことが重要です。
専門書を読むと、「考え方の癖」「思考パターン」「認知の歪み」というような表現をされています。
これらは、要するに「人にはそれぞれ考え方の傾向がある」ということです。
例えば、仕事のミスを上司に指摘された時には、「良いアドバイスをもらえた」と気分が良くなる人もいれば、「とんでもないことをしてしまった」と落ち込んだ気分になる人もいるでしょう。
このように、人それぞれ物事の「考え方」は違うものなのです。
そして、認知行動療法は、落ち込んだ気分の時に、自分が陥りやすい考え方の傾向を知ることから始まります。
なぜなら、気分の落ち込みは、マイナスの考え方から来ているからです(参考:デイビッド・D・バーンズ.いやな気分よ さようなら コンパクト版 星和書店)
認知行動療法は、気分の落ち込みやネガティブな感情を否定するものではありません。
認知行動療法の目的は、起こっている物事を正確に考えられるようになって、落ち込みやすくなるような自分の考え方に気づくことです。
それができるのであれば、認知行動療法のやり方にこだわりすぎる必要はありません。
そのため、認知行動療法に取り組む時は、あまり型にはめすぎず、気持ちが落ち込んだ時に頭で考えていたことをまずはノートに書いてみましょう。
認知行動療法を自分で行う時に、知っておいたほうが良いこと
ノートに気持ちを書くと、自分が落ち込む時の考え方の癖に気づけますが、認知行動療法として行う前には、以下の2つの言葉を知っておく必要があります。
① 自動思考
② 認知の歪み
専門家が使う言葉なので、少し難しい用語に聞こえるかもしれません。
しかし、知っておくと自分の気持ちを振り返りやすくなったり、考え方を整理しやすくなったりするので、この2つの言葉について紹介します。
自動思考
自動思考は、何か物事が起こった時に、頭のなかに無意識に浮かぶ考えです。
先ほどの例で言えば、上司にミスを指摘された部下の「良いアドバイスをもらえた」や「とんでもないことをしてしまった」という考えです。
気分の良し悪しは、この自動思考によって決まってきます。
認知の歪み
心理学では、目の前の物事を捉えることを「認知」と言います。
そして、人は、物事を事実とは違った形で認知してしまうことがあるのです。
この状況を「認知の歪み」と言います。
認知行動療法の専門家のなかには、わかりやすく「考え方の癖」といった表現をする方もいます。
例えば、上司が部下の成長を思って仕事のミスを指摘したとしましょう。
この時、部下が「上司は自分を成長させたいんだ」と考えれば事実を正確に捉えていますが、「上司は自分のことが嫌いなんだ」と考えれば事実を誤った形で捉えてしまっています。
認知行動療法では、落ち込む出来事があった時に、自分の頭のなかに浮かんだ「自動思考」に気づき、事実を正確に捉えて「認知の歪み」を修正する作業をおこなっていきます。
ノートに自分の気持ちを書く実践例
例として考えるのは、仲の良い2人の同僚が自分のほうを見ながら話す姿を見て、悪口を言われたように感じつらい気持ちになってしまった、という状況です。
まずは、頭のなかに浮かんだ考え(自動思考)をノートに書き出します。
例:仲が良かったはずなのに悪口を言われてしまったようで、つらい… |
この場合、下線部の「悪口を言われてしまったようで」が頭に浮かんだ自動思考です。
次は、この自動思考が思い込みなのか、事実なのかをノートに書きます。
例:2人は自分のほうを見て話していただけ。もともと仲が良くしていたことを考えると、悪口を言っていたわけではないのかも。 |
下線部を見ると、つらい気持ちになった原因の「悪口」は、自分の思い込みであったことがわかります。
「悪口を言われたように感じた」は、自分の都合の悪いほうに物事を捉えてしまっている認知の歪みの状態です。
こうして認知の歪みに気づくことができたら、最後に、自分の気持ちがつらくならないように、新たな考えや行動をノートに書きましょう。
例:悪口を言われたとは限らないから、いままで通り、2人とは自然に接しよう。自分のほうを向いて2人で話していることがあったら、今度は、自分も会話に参加してみよう。 |
以上のように、頭のなかに浮かんだ「自動思考」をノートに書き出し、それが思い込みであることを確認し、それから新たな考えや行動を考えて自分の気持ちを立て直すのが、ノートを使った認知行動療法の一連の流れです。
この方法は、慣れるまでくり返し練習する必要があります。
しかしながら、慣れてくると、ノートを使わずとも頭のなかだけで気持ちを立て直す作業ができるようになりますよ。
ノートに自分の気持ちを書き続けて気づいた「認知の歪み」
僕は、気持ちが落ち込んだり、不安や焦りを感じたりした時に、ノートに自分の気持ちを書くようにしています。
さまざまな場面で、何度もノートを書いていると、自分が陥りやすい認知の歪みに気づけるようになりました。
僕には、以下のような傾向があります。
・ 失敗をすると、すべてがダメだったように考える
・ 手の抜きどころがわからず、何でも0か100かでに考える
・ 自分の価値観を他人にも押しつける
・ 必要のない責任まで背負うとする
・ 他人に指摘されると、人格を否定されたように捉える
・ 他人は褒めても、自分のことは褒めない
まとめてみると、僕の場合は、自分で自分を痛めつけたり、追い込んだりするような考えをする傾向があったようです。
もしかしたら、うつ病になった背景にも、こういったストレスを抱えやすい考え方が影響していたのかもしれません。
また、自分が陥りやすい認知の歪みに気づけるようになってからは、気持ちが落ち込んだ時に、自分を否定するような偏った物事の考え方をしていないか、自問できるようになりました。
以前までは、落ち込む一方だったのですが、現在では、ほとんどの場合、自分の力で落ち込んだ状態から立ち直れることができるようになりました。
認知行動療法のノートの書き方は、「自分仕様」がおすすめ
この記事でもっとも伝えたいことは、気楽に続けられる方法が、自分に合っているということです。
形にとらわれすぎると、肝心な「認知の歪みに気づく」ことができなくなるかもしれません。
まずは、細かい使い方にこだわりすぎず、ノートに自分の気持ちを吐き出すことからはじめてみてはいかがでしょうか?
以下の記事には、認知行動療法のひとつ「トリプルカラム法」について、まとめています。
さらに、ステップアップした方法を知りたい方は、こちらも参考にしてください。