「うつ病の家族との接し方」当事者が傷つく言葉、救われる言葉とは?
家族がうつ病になったら、どうしたら良いのでしょうか?
家族として、本人との接し方や言葉のかけ方に悩むこともあるでしょう。
僕は、自分自身もうつ病を患い、3年間の療養生活を経て仕事復帰しました。
そのなかで、家族の存在は安心感を与えてくれる一方で、些細な言動で気持ちが追いつめられることもあったんです。
家族とはいえ、相手の気持ちを理解していないと、本人を傷つける言動をしてしまいかねません。
ここでは、うつ病で療養した経験を踏まえ、家族の接し方や言葉のかけ方についてお伝えします。
目次
うつ病の家族との接し方
うつ病の家族との接し方には、主に3つのポイントがあります。
本人の気持ちを尊重すること
うつ病になると、ネガティブな発言が多くなります。
例えば、「死にたい」「つらい」といった言葉は、うつ状態の時によく聞かれる言葉です。
家族としては、本人にはできるだけポジティブな気持ちでいてもらいたいでしょう。
ですから、ネガティブな発言を聞くと励ましたり、慰めたりしたくなるものです。
しかしながら、うつ病の人からすると、「励まし」や「慰め」は、家族に迷惑をかけているような気分が強まり、かえって落ち込みます。
家族が接する時は、ネガティブな発言を否定しないことが大切です。
過干渉しないこと
うつ病の人は、心身のエネルギーが消耗しています。
本人は、頭のなかでどうにか「頑張ろう!」としているのですが、どうしても行動に移すことができません。
このような行動力がなくなってしまう状態を、専門的には「精神運動抑制」と言います。
うつ病になると、「心のエネルギーが枯渇」してしまうため、意欲が低下して、行動力や決断力などもにぶくなります。このような状態を、医学的には「精神運動抑制」と呼びます。
(引用 坪井 康一(2017):患者のための最新医学 うつ病.高橋書店)
面倒見の良い家族ほど、外に連れ出して気分転換を促そうとしますが、これは本人のエネルギーをさらに消耗させるだけです。
うつ病は、薬を飲み十分に休息することで、テレビを見たり散歩をしたりといった活動が自然にできるようになる病気です。
家族が本人の生活に干渉しないほうがゆっくり休息することができるので、積極的に関わるよりもそっと見守りましょう。
普段と変わらない生活をすること
「うつ病になった」と聞いて、本人に気を遣った態度をとる家族もいるでしょう。
例えば、自分の趣味をやめたり遊びに行く予定をキャンセルしたりといったように。
本人の元気がないうちは、家族として、楽しみを自粛すべきと思うものなのかもしれません。
しかしながら、これは、本人がゆっくり療養するために逆効果です。
というのも、本人としては、気を遣うほど「家族から楽しみを奪ってしまった」ように感じ、罪悪感を抱くからです。
うつ病になってつらい生活を送っていたとしても、家族には少しでも笑顔で楽しい生活をしたほしいと思うもの。
また、家族の立場からしても、普段と変わらない生活を送れたほうがストレスも少なく長期的にサポートしていきやすいです。
ですから、「家族がうつ病になったから」と特別に考えるのではなく、なるべく普段と変わらない自然な生活を過ごしましょう。
うつ病の人が傷つく言葉
では、家族として、具体的にどのような言葉かけを避けるべきなのでしょうか?
ここからは、本人の気持ちを傷つけないように家族が避けるべき言葉のかけ方を紹介します。
みんなつらいんだよ、もっとつらい人もいる
ベッドに寝ていたり、自宅でゴロゴロしていたり。
うつ病の人は、家族からすれば、病気を理由に怠けているように見えがちです。
しかしながら、この認識は間違いです。
「怠けているように見える」だけで、本人なりに、仕事や将来の生活について悩んでいるもの。
悩んでいるけれど、行動を起こすだけの意欲が気力が湧かない…
だから、結果的に、寝たりごろごろしたりしかできないのです。
一般の社会人と比較しいて「みんなつらいんだよ」「もっとつらい人もいる」と言ったところで、本人としては、頑張れない自分がみじめに思えたり、ダメな人間に感じられたりするので、気持ちの落ち込みを強めるだけです。
私も大変なんだから
うつ病の人を支えていくには、仕事や家事の負担を家族が抱え込まなければなりません。
ですから、家族は疲れやストレスから「私も大変なんだから」と自分の状況について不満を言いたくなる時もあるでしょう。
ところが、本人にとってはこの言葉が結構なダメージになります。
自宅療養中は、生活全般を家族に支えてもらっています。
本人としては、普段から自分の存在が「家族の重荷」と思っているところが…。
軽い愚痴のレベルであっても、「私も大変」といったニュアンスの言葉は避けましょう。
また、家族として、本人を支えるのに負担を感じているのなら、行政や民間のサービスを活用し、自分の悩みを打ち明けるのも負担を軽くするひとつの方法です。
話してくれないとわからない
うつ病になると、口数が減ります。
これは、自分の気持ちを話すのが億劫になったり、考えがまとまらなくなったりするからです。
前者は「精神運動抑制」、後者は「思考制止」という症状の影響です。
これらの症状があるので、本人は、家族とコミュニケーションをとる必要性を感じているのですが、どうしても話をする気持ちにはなれないのです。
このような状態にあるにも関わらず、「家族から「話してくれないとわからない」と言われると、本人としては自分の状況を理解してもらえていないように思い、孤独感を強めます。
まだ体調悪いの?
うつ病は、風邪や骨折などに比べると回復までに時間がかかる病気であり、体調が良くなったり悪くなったりをくり返しながら、少しずつ快方に向かっていきます。
この体調の変動は、「揺り戻し(ゆりもどし)」と言い、うつ病の回復過程には必ず見られる現象です。
揺り戻し現象があるので、本人が療養に専念したり早い完治を願ったりしても、回復にはどうしても時間がかかってしまのです。
完治には早い方で3~6ヵ月、人によっては数年から数十年かかることもあると言います。
本人は、順調に回復しない状況に不安や焦りを感じがちです。
それに加えて、家族に「まだ体調悪いの?」と言われると、いつまでも調子が戻らず迷惑をかけている自分が情けなく感じられ、気持ちが落ち込んでしまいます。
どうするつもりなの?
将来に関する言葉かけも、うつ病の人の気持ちを追い込みます。
特に仕事や収入に関する話題は避けましょう。
これは、うつ病になると「貧困妄想」が現われるからです。
「貧困妄想」とは、実際よりも自分の生活が貧しく思える症状を言います。
「貧困妄想」がある人は、家庭の貯金や収入の状況に関わらず、いますぐに破産したり生活ができなくなったりするような思考に陥ります。
こうなると、本人の頭のなかは経済的な不安でいっぱいです。
また「貧困妄想」に加えて、療養中は収入や貯金が減少するので、現実的にも生活が貧しくなります。
ですから、将来に関する話題を出されると、生活の困窮感や仕事復帰への焦燥感が強まり、本人の気持ちがいよいよ追いつめられてしまうのです。
うつ病の人が救われる言葉
傷つく言葉がある一方で、家族から言われると本人が救われる言葉もあります。
つづいては、うつ病の人が救われる言葉を紹介します。
そうなんだ
「つらい」「働きたくない」など。
ネガティブな発言には、「そうなんだ」「そっか」といったように、本人の気持ちを尊重する言葉をかけましょう。
うつ病の人がネガティブな発言をする時は、激励やアドバイスを求めているわけではありません。
本人が求めているのは、まわりの人に自分の気持ちをありのまま受け入れてもらえる安心感です。
ネガティブな発言が聞かれた時は、家族として何かしてあげようとするのではなく、本人の気持ちをただ受け入れてあげましょう。
生きていて欲しい
「生きていて欲しい」という言葉は、自殺を防止する上で重要です。
うつ病になると、ふとした瞬間に“死にたい”“死のう”と思うようになります。
例えば、道路を走る車を見れば飛び込もうと思ったり、駅で電車を待っている時にはプラットフォームから飛び降りようと考えたりします。
そういった魔が差した時に何が自殺を躊躇させる要因になるかというと、家族との約束です。
頭のなかに自殺願望が湧いてきても、家族の顔や言葉を思い出すことでもう少しだけ生きてみようと思えるものです。
また、うつ病の人は仕事や家事ができない自分を「家族のお荷物」と考えがちなため、家族の気持ちを伝えてもらえれば自分が生きる意味を見出すことができます。
いずれにしても、家族は、本人を必要としている気持ちをはっきり伝えるようにしましょう。
ゆっくりでいいんじゃない?
うつ病で休職・離職中の人は、仕事復帰を焦りがちです。
できるだけ早く体調を戻したいという思いから家事をやりすぎたり、仕事に向けたリハビリをしすぎたりすることもよくあります。
しかしながら本人が完治を強く願っても、すぐに回復しないのがうつ病です。
焦って無理をしすぎれば、その反動でうつ状態がぶり返し、2・3日寝込むことがほとんど。
本人としては、自分の思い通りにはいかないことが多いため、心が折れたり、自信を失ったりして、気持ちが焦ります。
このような状況に陥っている時、家族からの「(仕事復帰は)ゆっくりでいいんじゃない?」の一言があれば、本人としては安心し、平静を取り戻せるものです。
体調が思ったように回復しなくても、家族が寄り添ってサポートしてくれていることが実感できれば。落ち着いて療養に専念できるでしょう。
家族が相談できる場所
うつ病は回復・完治に時間がかかるので、長い療養期間は家族にとっても大きな負担になります。
家族とは言え、愚痴や不満をため込みながら本人の生活をサポートし続けるのは難しいでしょう。
そこで、最後に家族が悩みを相談できる場所をお伝えしましょう。
働く人の「こころの耳電話相談」
働く人の「こころの耳電話相談」は、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が運営する相談サービスです。
こちらのサービスは、精神的な不調で悩む人の家族や上司・同僚からの相談を受け付けています。
以下は、サービスの詳細です。
相談可能な時間帯:月・火曜日 17~22時 土・土曜日 10~16時 1回の相談時間 :最長20分間まで 相談対応 :所定のトレーニングを受けた産業カウンセラーほか 注意点 :匿名利用可。診断や治療方法の提示など、医療行為に該当する相談やアドバイスは一切不可 |
精神保健福祉センター
精神保健福祉センターはこころの健康問題の相談窓口で、各都道府県に設置されています。
センターには医療従事者などの専門職がおり、うつ病の家族についての匿名で相談することができます。
受付時間や電話番号は都道府県によって変わってくるので、相談を希望する方は、まずはお住まいがある自治体の精神保健福祉センターに問い合わせてみましょう。
精神科・心療内科
精神科や心療内科のなかには、家族のみの受診に対応する病院・診療所があります。
本人が受診を拒否する場合には、家族のみで医療機関に相談するのもひとつの方法です。
ただし、家族のみの受診は「自費診療」扱いとなり、保険が適用されないため窓口負担が高額になります。
そのため、精神科や心療内科の医師に相談する時は、本人と一緒に受診することをおすすめします。
精神科・心療内科の初診料の目安 | ||
自費診療 | 4,000~15,000円(各医療機関が自由に設定) | |
保険診療 | 1,000~2,000円 |
家族にこそ、気持ちの余裕が必要
ここまで、うつ病の家族との接し方や言葉のかけ方について説明しました。
家族の接し方は、①本人の気持ちを尊重すること ② 過干渉しないこと ③普段と変わらない生活をすることが基本です。
本人の気持ちを追い込んだり、落ち込ませたりしないためには、家族が否定的な言葉、安易な慰め・励まし、将来的な話を避けることが大切です。
一方で、共感的な言葉のかけ方は本人の安心感につながるので、はっきりと伝えるようにしましょう。
また、うつ病の人へのサポートは長期的になる可能性が高いので、家族も自分自身の疲れやストレスに注意しながらまわりの人に相談することも重要です。
できるだけ本人の気持ちを尊重し、家族自身も気持ちの余裕を保ちながらサポートしていきましょう。